産業衛生学雑誌
Online ISSN : 1349-533X
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63 巻, 3 号
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Issue Information
原著
  • 大賀 佳子, 千葉 敦子
    原稿種別: 原著
    2021 年 63 巻 3 号 p. 75-85
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/09/18
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    目的:ストレスの低減や職場の活性化に寄与する要因としてユーモアに注目が集まっているが,ユーモア表出の対象を同僚に限定し,ストレス反応や同僚からのサポートとの関連を検討した研究は少ない.本研究の目的は,看護職が同僚に対して表出するユーモアを調査し,心身のストレス反応及び同僚からのサポートとの関連を検討することである.対象と方法:東北地方A市の8つの病院で働く看護職765名を対象とし,自己記入式質問紙調査を実施した.心身のストレス反応と同僚からのサポートは職業性ストレス簡易調査票の結果を使用した.ユーモア表出は,ブラックジョークのような“攻撃的ユーモア表出”,だじゃれや言葉遊びのような“遊戯的ユーモア表出”,自虐ネタのような“自虐的ユーモア表出”の3つのタイプを測定する15項目のユーモア表出尺度(塚脇ら2009a)を使用した.ユーモア表出の傾向と心身のストレス反応及び同僚からのサポートとの関連をみるために統計解析を行った.結果:回答は672部(回収率87.8%)得られ,記入に不備のあったものを除いた623名(有効回答率81.4%)を解析対象とした.看護職が同僚に対して表出するユーモアは,自虐ネタのような自虐的ユーモア表出が最も多かった.各ユーモア表出に影響を与える属性要因を検討した結果,攻撃的ユーモアは性別,職位の有無,夜勤の有無,自虐的ユーモアは性別,職位の有無,遊戯的ユーモアでは性別,年齢階級に有意な関連が認められた.同僚からのサポートに影響する要因は,年齢階級,自虐的ユーモア表出,活気,イライラ,身体愁訴と有意な関連が見られた.考察と結論:看護職は同僚とのコミュニケーションに,自己や他者を支援する効果のある自虐的ユーモアを最も使用し,男性は女性よりもさまざまな種類のユーモアを活用していた.役職についている者は,軽い皮肉のような攻撃的ユーモアや自分の失敗を笑うような自虐的ユーモアをより使用する傾向が見られた.また,年齢を重ねることで,雰囲気を明るくするだじゃれのような遊戯的ユーモアの使用が増加する可能性が伺えた.自己の欠点や失敗をユーモアとして話したり生き生きと働くことは,同僚からのサポートを増加させる一方,イライラや心身の不調を抱えて働くことは,同僚からのサポートを減少させる可能性が示唆された.

  • 永原 真奈見, 樋口 善之, 赤津 順一, 谷 直道, 山本 良子, 太田 雅規
    原稿種別: 原著
    2021 年 63 巻 3 号 p. 86-94
    発行日: 2021/05/20
    公開日: 2021/05/25
    [早期公開] 公開日: 2020/09/18
    ジャーナル フリー HTML

    目的:男性勤労者を対象とした特定保健指導において,6か月時で3%減量を目標とする意義と,3か月時評価への応用可能性について明らかにすることを目的とした.方法:2008年~2017年に,一般財団法人日本予防医学協会によって実施された特定健康診査を受診し,初めて特定保健指導を受けて最後まで終了した40~64歳の男性勤労者5,031名を解析対象とした.保健指導開始時(初回面談時)と終了時(6か月後)の体重変化率により3%減量達成群,3%未満減量群,非減量群の3群に分け,各群の3か月及び6か月時の体重や腹囲,血圧の申告値を比較した.また,次年度の特定健康診査結果の得られた2,889名を対象に,体重,腹囲,血圧,中性脂肪,High Density Lipoprotein-Cholesterol(HDL-C),空腹時血糖(以下,血糖とする)の初年度からの改善状況,及び次年度のメタボリックシンドローム(以下,MetSとする)罹患率・脱却率を3群別に比較し,実測値においても申告値と同様の改善効果が得られるかについて検証した.さらに,保健指導開始6か月時に3%減量に到達するための3か月時の減量目標を算出し,その目標値に基づいて次年度におけるMetS罹患率・脱却率を検証した.結果:3%減量達成群,3%未満減量群,非減量群の構成割合は26.8%,40.9%,32.3%であった.6か月時における腹囲や血圧の改善量は,減量の達成度に応じて大きくなっていた.次年度の体重,腹囲,血圧,中性脂肪,HDL-C,血糖は,初年度と比較して,3%減量達成群では全項目において有意な改善が認められたのに対し,3%未満減量群では血糖に有意な改善がみられず,非減量群では拡張期血圧と中性脂肪を除いて改善は認められなかった.次年度のMetS罹患率は,3%減量達成群が7.6%と最も低く,MetS脱却率は70.7%と最も高かった.また,6か月時に3%減量に到達するための3か月時の減量目標は2.0%で,2.0%減量達成群は未達成群と比べてMetS罹患率・脱却率において有意な改善が認められた.結論:特定保健指導において,6か月時で3%減量を目標とすることの意義が明らかとなり,3か月時における減量目標を2.0%とする応用可能性が示唆された.

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