産業衛生学雑誌
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調査報告
  • 黒木 仁美, 森口 次郎, 内田 陽之, 大橋 史子, 五十嵐 千代, 小田切 優子, 島津 明人, 堤 明純, 錦戸 典子, 原谷 隆史, ...
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 62 巻 6 号 p. 249-260
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2020/11/25
    [早期公開] 公開日: 2020/05/27
    ジャーナル フリー HTML

    目的:近年,事業場における職場環境改善活動を通じた職業性ストレス対策が従業員のストレス軽減に効果的であることが先行研究にて示されている.しかし,国内において10人未満の小規模事業場における職場環境改善活動によるストレス対策の手法や効果についての報告は少ない.本調査では,小規模事業場の継続的な職場環境改善活動がもたらす効果と有効な手法や支援方法についてモデル事業を通して検証を行った.対象と方法:2014年10月から2016年12月の約2年間を通して従業員8名の某事業場に所属する同一5名の従業員に対し1年ごとに参加型職場環境改善ワークショップによる介入を行った.また効果評価を1年目及び2年目のワークショップの事前,3ヵ月後,12ヵ月後に新職業性ストレス簡易調査票(80項目版)により行った.さらに1年目及び2年目のワークショップ終了後1~2ヵ月時にファシリテーターによるフォローアップ訪問を実施した.またフォローアップ,3ヵ月後調査,12ヵ月後調査時に職場環境改善活動の満足度及び課題に関する従業員の意見について活動の推進担当者を通してインタビュー調査を実施した.新職業性ストレス簡易調査票で集計された結果は1年目,2年目の各年の尺度得点の変化及び2年間を通した尺度得点の変化についてFriedman検定にて解析し,Steel-Dwass法による多重比較検定と効果量の算出を行った.なお,解析対象となる標本数が少数であるため,有意水準を0.100未満と設定した.結果:職場環境改善活動は,1年目が「道具置き場の整理」をテーマとし,工具掛けの作成が実施された.2年目では「スキルアップ・資格取得の支援」をテーマとし,空き棚を本棚に作り変えて資格関係のテキスト類を設置した.1年目,2年目ともに活動は全員参加型で実行され,改善活動はワークショップ後1ヵ月以内に完了した.新職業性ストレス簡易調査票の尺度得点の変化については,1年目のデータ解析においてFriedman検定で有意差を認めたものは「役割葛藤」(p=.050),「仕事の資源(部署レベル)合計」(p=.036),「個人の尊重」(p=.050),「公正な人事評価」(p=.050),「ワーク・セルフ・バランス(ポジティブ)」(p=.050),「職場の一体感」(p=.068),「仕事満足度」(p=.061)で,多重比較検定では「役割葛藤」の3ヵ月後調査から12ヵ月後調査で有意な改善(p=.041)を認め「職場の一体感」の事前調査から3ヵ月後調査で有意な悪化(p=.079)を認めた.2年目のデータ解析においてFriedman検定で有意差を認めたものは「役割葛藤」(p=.058),「公正な人事評価」の(p=.097)であり,多重比較検定では,「役割葛藤」の事前調査から3ヵ月後調査において有意な悪化(p=.041)を認めた.継続した2年間のデータ解析においてはFriedman検定で「役割葛藤」(p=.057),「個人の尊重」(p=.092),「公正な人事評価」(p=.039)にて有意差を認めたが,多重比較検定ではいずれの尺度についても有意差は認めなかった.インタビュー調査では「全員参加による達成への満足感」など肯定的な意見があった一方で,「社員のやらされ感」及び「職場環境改善担当者の負担が大きい」の意見があげられた.考察と結論:従業員8名の小規模零細企業において2年間の職場環境改善活動の取り組みを完了でき,またスモール・ステップの成功を観察できた一方で,2年間の調査における職場ストレスの改善効果は限定的であり,一部の尺度で悪化がみられたことは小規模事業場における活動上での人的資源の不足及び不慣れな活動による負担感が職場環境改善活動の本来の目的である職業性ストレスの軽減効果に影響した可能性がある.よって小規模事業場への職場環境改善活動の導入時には,小規模事業場の実情や活動の副作用を考慮し負担感を軽減できるようツールや手法の改善が必要であると考えられた.

  • 須賀 万智, 山内 貴史, 柳澤 裕之
    原稿種別: 調査報告
    2020 年 62 巻 6 号 p. 261-270
    発行日: 2020/11/20
    公開日: 2020/11/25
    [早期公開] 公開日: 2020/05/13
    ジャーナル フリー HTML

    目的:治療と仕事の両立支援について,支援制度の認知と利用申出の意識を調べ,本制度の普及に向けた課題を明らかにする.方法:全国労働者12,000名を対象に,2020年1月にインターネット上でアンケート調査を実施した.調査項目は厚生労働省の両立支援の取り組みの認知,事業所内の相談窓口の認知,職場に病気を申し出ることに対する意識である.設問文と選択肢は前回2018年調査と同じものを用いた.結果:厚生労働省の両立支援の取り組みを知っている者は7%,事業所内に相談窓口があると答えた者は27%にとどまった.職場への申出はメリットの方が多いと思う者が15%に対し,デメリットの方が多いと思う者が31%と優位であった.多重ロジスティック回帰分析において,職場への申出の意識は厚生労働省の取り組みの認知,事業所内の相談窓口の認知,事業所内の産業医の認知と有意な関係を認めた.このほか,従業者300人未満の事業所,過去の就業制限の経験,職種のうち営業/接客,製造,運転/配達がデメリットの意識を高める因子として示された.結論:前回2018年調査から1年半を経ても,厚生労働省の両立支援の取り組みは労働者に十分認知されておらず,職場に病気を申し出て支援を請うことに抵抗感を持つ労働者の方が多いことが示された.本制度の普及のため,国および企業が啓発活動の更なる強化を図るとともに,事業所規模,雇用形態,職種の違いに配慮した支援制度のあり方を検討する必要がある.

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