産婦人科の進歩
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26 巻, 2 号
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  • 井上 武文
    1974 年 26 巻 2 号 p. 135-170
    発行日: 1974/03/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    Clomiphene citrateは一般に内因性estrogen分泌の認められる症例に有効とされている. そこで著者は排卵障害を主訴とする患者の中で, 内因性estrogenの認められる第I度無月経症, 無排卵周期症の患者を対象として本剤を投与し, 排卵誘発率, 妊娠率とともに, 本剤の腟スメアにおよぼす影響ならびに腟スメアestrogen効果像と排卵誘発率の関係を検索した.
    対象とした患者77名に266周期投与し, その排卵誘発率は73名(94.8%), 179周期(67.5%)で, 妊娠率は40例(51.9%)であった. 対象例を腟スメアにおけるestrogen活性度からみると, 高estrogen型, 中等度estrogen型, 低estrogen型と分類可能であり, 高estrogen活性型では全例排卵誘発に成功したが, 低estrogen活性型の11例47周期では7例(63.6%), 18周期(38.3%)にすぎなかった.
    clomiphene投与により全例に腟スメアのK. P. I., E. I., M. I. の低下がみられた. 投与前に低estrogen活性型のものでは, 投与中に多くは細胞崩壊像が認められ, なお排卵が誘発されない症例ではそれ以上の増量投与によっても排卵の可能性は無かった. 一方高estrogen活性型で排卵不成功な場合, 50mg×5day, 150mg×5day投与では細胞崩壊はほとんどなく, 増量投与の可能性を示唆し200mg×5dayと増量する事により排卵誘発される事が判明した.
    estrogen活性の全く認められない, 卵巣性無月経患者の萎縮型腟スメアに対しては, 200mg×5day投与により弱いestrogen作用を示したが, 外因性estrogen投与により著明なestrogen効果を示した同一患者の腟スメアに対しては著明なK. P. I., E. I. の低下を来たし, antiestrogenic作用を示した.
    以上の結果内分泌細胞診からみると, clomipheneの持つantiestrogenic作用が排卵誘発機序に関与していると推察され, 腟細胞診はclomiphene投与時の排卵予知判定には用いられがたいが, 投与量, 治療の限界を知る有用な方法と考えられた.
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