本研究は性器外組織ことに肝・腎組織の酵素活性の性差と性ホルモンによる制御を検討するため, L-ornithine aminotransferase(E. C. 2.6. 1.13. )およびglycine amidino-transferase(E. C. 2.1. 4.1. )を対象として行なったものである, これらの酵素はいずれも腎組織において活性が高く, しかも腎においてのみ性ホルモンの投与によって活性が変動した. すなわち, 腎のornithine aminotransferase活性は雌1生に高く, estrogenの投与により活性は上昇し, testosteroneによって逆に低下した. これに反してglycine amidinotransferase活性は雄性に高く, testosteroneによって上昇を示し, estrogenによって低下した.
これらの性ホルモンの影響は, ホルモン投与後かなりの時間を経て発現するとともに, ホルモン投与中止後も制御効果は数日間持続した. しかしin vitroの反応系にホルモンを直接添加しても, 酵素活性の変動は全く認められなかった.
また, 雌性ラットの性中枢を男性型に変えたandrogen sterilized ratにおいては, estrogenの持続分泌により正常雌性ラットより高い腎ornithine aminotransferaseの活性上昇を認めた.
以上の成績から, 腎組織においては, 特定の酵素活性に雌雄差が存在し, それらは個体が産生分泌する性ホルモンによって制御されている可能性が強いと考えられる.
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