産婦人科の進歩
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34 巻, 1 号
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  • 奥平 吉雄, 松井 義明, 沢田 益臣, 大鶴 栄史
    1982 年 34 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1982/01/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    4例の卵巣原発clear cell carcinomaについて電顕観察を行ない, 正常分泌期内膜(10例), Arias-stella typeの内膜(8例)および子宮内膜腺癌(20例)の微細構造上の特徴と比較検討を試みた. hobnail cellをも含めて細胞質構造の特徴は, 層状に配列した特徴ある粗面小胞体の存在とともに多量のグリコーゲン顆粒, 脂肪顆粒, ライソゾーム顆粒の存在である。これらの所見は, 分泌期内膜, Arias-stellaの内膜と共通性を示すものであるが, 内膜腺癌ではこのような状況はみられなかった. しかしながら大量のgestagcn療法を行なった分化型子宮内膜癌には類似の細胞質構造がみとめられ, また4例中2例に骨盤内子宮内膜症の合併をみた. 以上の事実は卵巣のclear cell carcinomaはendometriomataに属することを示唆する所見であり, 組織起源としての類中腎説に対し否定的な見解を提示するものと考えられるので, 本腫瘍の組織発生について文献を参考に考察を試みた.
  • 伊能 健一郎, 杉本 幸美, 香山 浩二, 礒島 晋三
    1982 年 34 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1982/01/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌の術後再発による膀胱浸潤のため大量の膀胱出血を来たした1症例と, 子宮頸癌末期で病巣部より大量性器出血を来たし, 経腟的に止血不可能であった2症例に内腸骨動脈の塞栓術transcathater thcrapeutic embolizationを行い, 著明な止血効果をみた症例を経験したので報告する. また後者の症例の頑固な癌性疼痛に対して, 塞栓術と同時にNitrogcn Mustardの内腸骨動脈注入を行い, 著明な鎮痛効果をみた.
  • 新谷 一郎, 津久井 伸一, 佐々木 正道
    1982 年 34 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1982/01/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    IV期2例・III期4例の子宮頸癌患者に腹膜外式リンパ廓清後, 卵巣動静脈・内腸骨動脈分岐部, 内腸骨動脈の子宮・膀胱・腟・外陰の各動脈を除く枝および内腸骨静脈の子宮静脈流入部より中枢側を結紮し, 内腸骨動脈の結紮部より末期にマイトマイシンC40~60mgを注入してプーリングさせ, その後1ヵ月毎に骨盤血管造影を行い主として中仙骨動脈より副血行路が形成される数ヵ月後にTelecobalt6400~7000R追加した.
    この方法では側・後腹膜外腔に硬い瘢痕癒着を形成するため腫瘍縮小率での効果判定が不可能なため, コルポスコープ診下に細胞診, 組織診を最初の二ヵ月は一週毎に, その後は一ヵ月毎に反復して経過をみると共に生存年数で予後を判定した. 細胞診, 組織診では経膣的に採取可能な範囲で3~5週後には悪性はみられなくなったが, IV期の1例は4ヵ月後に, 他のIV期1例とIII期の2例は9ヵ月後に再び悪性を認めた. 後者の1例は再発後広汎全別の目的で再開腹し癒着強度のため単純全別にとどまったが, この化学療法で治癒せず残存した癌組織が副血行形成につれ増殖を再開するものと思われ, IV期の2例はこの方法で侵達し得ない部位では侵潤が既存するために, III期の2例は濃度依存性の抗癌剤であるMMCの量不足が原因と考えられた.
    副障害については全例に強度の脱毛, 白血球減少・水腎症をみ, 1例に腹膜外膿瘍を形成し, 両側に腎水腫を来したIV期の2例は共に腎不全で2年以内に死亡したが, III期の3例は再発なく6年3ヵ月, 4年, 2年4ヵ月生存し, 1例は再発後Telecobaltの追加で1年3ヵ月生存している.
  • -15年間の症例の総括-
    斎田 あけみ, 丸尾 猛, 足高 善彦, 東條 伸平
    1982 年 34 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1982/01/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    子宮内膜clear cell carcinomaは卵巣および子宮頸部, 膣のclear cell carcinomaに較べて稀であり, 殊に子宮内膜癌の少ない我国においてその報告は極めて少ない. 症例は62才女子で性器出血を主訴として受診し膣スメアおよび生検によりclear cell carcinomaと診断し広汎性子宮全摘を行なった. 摘出標本から子宮内膜原発であることが確認されたが術後1年3ヵ月で再発のため死亡した. その膣スメアおよび腹水に出現した腫瘍細胞は大型で, 淡明な細胞質を持ち平面な配列を示した. 組織学的にも腫瘍細胞は淡明な細胞質を持ち, 不整な大小腺管を形成しつつ著しい浸潤性格を示した.
  • 竹村 正, 武田 守弘, 西浦 治彦, 栗山 大作, 礒島 晋三, 土屋 邦男
    1982 年 34 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1982/01/01
    公開日: 2011/10/11
    ジャーナル フリー
    神戸大学産科婦人科学教室で過去15年間に取り扱った絨毛性疾患215例を, 破奇(115例), 区分不明(81例), 絨毛癌(29例)に分け病態と治療成績を比較検討した. 破奇では95%が奇胎を先行妊娠とし, 93%が先行妊娠より3ケ月以内に診断されているのに対し, 絨毛癌では先行妊娠の48%は非奇胎であり, 先行妊娠より診断までの期間も59%は1年以上を経過していた. 治療成績においても, 破奇では広範な子宮外浸潤により大出血を来しDICにより死亡した1例を除く99.1%が緩解を得たのに対し, 絨毛癌では52%の緩解率に留っており, 両者間に大きな差が認められた.
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