妊娠30週に急性膵炎を発症した症例を経験した.患者は31歳の経産婦で,妊娠30週に突然の悪心,嘔吐,上腹部痛を訴え,緊急入院となった.血液検査では,高脂血症,アミラーゼ高値を示していた.腹部CT検査により,腫大した不均一の膵と多量の腹水を認めた.これらの特徴的な所見から,重症急性膵炎と診断した.抗酵素剤と多量の輸液療法による保存療法を12時間施行したが,全身状態は改善しなかった.そこで,緊急手術として帝王切開術,胆嚢摘出術,腹腔洗浄ドレナージ術を施行した.術後,患者の状態は,しだいに快方に向かった.新生児は特発性呼吸窮迫症候群と診断されたものの,肺サーファクタントの投与により経過は順調となった.妊娠中の急性膵炎の診断は超音波診断法,CTスキャンを用いて早急に行わなければならないことと,もし重症であるならば妊娠終了を含めた観血的療法も考慮する必要があることを提言したい.〔産婦の進歩48(6);611~615,1996(平成8年11月)〕
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