過去10年間に,出生前に胎便性腹膜炎(Meconiumperitonitis,MP)と診断した4例を検討した.3例が生産に至り,そのうち1例は出生後消化管の通過障害を認めたために開腹術による腸管吻合術を必要としたが,残る2例は消化管の通過障害を認めず,外科的な処置を必要としなかった.MPの出生前診断において,超音波検査でMPに特徴的とされている胎児腹腔内の石灰化像,胎児腹水,消化管の拡張などの所見が認められれば,胎児腹水中の扁平上皮の検出による確定診断を行い,さらに羊水胎児造影を施行することによって,胎児消化管における通過障害の有無からobstructivetypeとnon-obstructivetypeとに分類することが,出生後の児の管理上有用であると考えられた.またMPの診断がついた時点で,TORCHをはじめとする各種ウイルスの胎内感染の有無その他の合併奇形の有無と染色体の分析が必要であり,さらに妊娠中の管理としては,児が胎外生活が可能になる時期までは,羊水や胎児腹水の吸引を施行することにより減圧を計り,適宜切迫早産や胎児心不全を予防し,適切な時期に分娩を予定することが肝要と思われた.〔産婦の進歩48(5);535~542,1996(平成8年9月)〕
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