マウス初期胚・マクロファージ共培養系ならびに胞胚移植系を用い,共培養が移植後の胚発生効率に及ぼす影響を検討した.また,培養によって得た移植胚の超微形態学的変化をin vivo胚と比較し検討した.過排卵処理により得られたマウス前核期胚を,2種の基本培養液;0.3%BSA+BWWおよび0.3%BSA+α-MEM(control群),ならびにそれぞれの基本培養液+モルモット腹腔マクロファージ(co-culture群)の4条件下にてそれぞれ培養を行った.control群における胞胚率は32 .0%(40/125;BWW)および48.1%(26/54;α-MEM)であったのに対してco-culture群ではそれぞれ77.8%(123/158),85.2%(52/61)と有意に改善された.しかし,引き続いて偽妊娠マウスに移植を行ってもco-culture群(3.7%,2/54;BWW.,33.3%,11/33;α-MEM)は,control群(3.7%,2/54;BWW,27.2%,9/33;α-MEM)に比して有意な着床率の改善を示さず,さらに,in vivo胚の高い着床率(52.8%,75/142)にははるかに及ばなかった.見かけの発生効率の改善と,これに伴わない低い着床効率のギャップの原因を検索するため行った透過型電子顕微鏡による胚の超微形態学的検討では,胚発育促進効果が認められた共培養胚においても,また基本培養胚においても,invivo胚と比しミトコンドリアは高率に変性所見(クリスタの崩壊,ミエリン形成)を呈しており,さらにそのelectron dense matrixが高度に淡明化していることから,ミトコンドリアの機能的障害の存在を示唆する所見が得られた.以上のことから,胚発育促進効果をもたらす共培養系を導入しても,着床率の改善には至らなかった一因として,ミトコンドリアの変性・機能障害の関与が推察される実験的根拠が得られた.〔産婦の進歩51(6);551~561,1999(平成11年11月)〕
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