当科では1998年4月にIVF-ETプログラムにおいて採卵日をあらかじめ設定する採卵日固定法(固定法)を導入した.同法は採卵日を月~ 水曜日に固定し,採卵から胚移植までを金曜日までに終了させることにより,週末の採卵・胚移植を避け,患者ならびにIVF-ETに携わるスタッフの負担の軽減を図ることを目的として開発された卵巣刺激法である.本研究では,卵巣刺激開始後の卵胞発育にあわせて採卵日を決定する従来法と,固定法との問で,キャンセル率,受精率,臨床妊娠率などについて比較検討を行った.従来法は1996年1月~1997年12月にIVF-ETを施行した30症例,52周期を対象とし,固定法は1998年4月~1999年6月に施行した22症例,31周期を対象とした.卵巣刺激法は,従来法ではshort protocol下に月経周期3日目からhMG(FSH)を投与し,secondleading follicleの長径と短径の合計が35mmを超えた時点でhCG5000単位の投与を行った.固定法ではlongProtoco1下に予定した採卵日の11日前よりFSH2251Uを4日間,ついでhMG 150IUを5日間投与し,刺激9日目にhCG5000単位を投与した.従来法および固定法において,それぞれキャンセル率は21.1%,19.4%であった.臨床妊娠率は13.9%,39.1%であり固定法のほうが有意に高率であった.また固定法では88.0%が予定採卵日に採卵ができた.流産率,多胎妊娠率,OHSS発症率などの合併症には差を認めなかった.固定法は当科における従来法と比較して有意に高い妊娠率を得ることができ,また採卵日があらかじめ設定できるため患者ならびにIVF-ETに携わるスタッフの負担の軽減を図ることが可能であり,有用な卵巣刺激方法であると考えられた.〔産婦の進歩52(2);115~119,2000(平成12年3月)〕
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