産婦人科の進歩
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57 巻, 2 号
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研究
原著
  • ─1988年からの15年間における母児体重の変遷からの再評価─
    上田 康夫, 丸尾 原義, 足高 善彦, 本田 由佳, 深山 知子
    2005 年 57 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/30
    ジャーナル 認証あり
    【研究目的】1988年以降15年間における本院での母体体重,出生体重の変遷を調査することにより,母体体重増加基準に関する現行日産婦基準の再評価を行った.
    【研究方法】1988年1月から2002年12月の間に兵庫県立柏原病院で管理した妊婦3310例を対象とした.これらの妊婦を非妊時Body Mass Index(BMI)によってやせ(BMI<18),標準(18-24),肥満(>24)の3つの体型群に分類し母体体重増加量別に低出生体重児(<2.5kg),巨大児(≧4kg),Light for dates(LFD),Heavy for dates(HFD)および妊娠中毒症(高血圧主徴のみで浮腫,蛋白尿を除外)の発生率を検討するとともに,各体型群での至適体重増加量を考案した.さらに現行の至適増加基準と今回得られた基準の両者を用いて全妊婦を増加過剰,至適,過少の3群に分け,年代別の各群への分布を検討した.
    【結果】全体型妊婦での母体体重増加量は1988年の12.0±3.7kg(mean±SD)から2002年の10.0±3.9kgに,一方出生体重も3114±414gから3040±384gに減少し,この傾向はとくに肥満群で著明で,同群での低出生体重児発症も増加した.母体至適体重増加量の検討では,対照とした標準群中7~10kgの母体体重増加群に比べ,やせ群中10kg未満の母体体重増加群での出生体重は減少し,逆に>14kg群ではHFD,妊娠中毒症が増加した.標準群では<7kg群でLFD,低出生体重児が有意に多かったが,13kg以上の群では逆に巨大児,HFDの発症が有意に高く妊娠中毒症の発症率も体重増加につれて増加した.肥満群では>7kg群でHFDと巨大児の発症率が有意に高かった.以上の結果より,やせ群10~14kg,標準群7~13kg,肥満群<7kgという新しい基準域が求められた.現行日産婦体重増加基準による分布において各群とも至適域に入る妊婦は少なく,やせ群では体重増加過少,標準・肥満群では体重増加過剰が多数を占めた.
    【考察】1988年以来15年間に母体体重増加量と出生体重はともに明らかな減少傾向を示したものの,現行日産婦基準からは標準,肥満群におけるいっそうの体重抑制の必要性が示唆された.しかし,現行基準における至適域の決定には妊娠中毒症─妊娠浮腫の関与が大きく,結果として妊娠浮腫による体重増加過剰例の存在が各群至適域の上限値を引き下げていた可能性がある.今後本邦での妊娠中毒症分類の変更に応じた新しい至適体重増加基準が広く議論されることが期待される.〔産婦の進歩57(2):121-130,2005(平成17年5月)〕
総説
  • ─古方派漢方の歴史と更年期医療への応用─
    後山 尚久
    2005 年 57 巻 2 号 p. 131-150
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/30
    ジャーナル 認証あり
     紀元6世紀に中国から輸入された“漢方医学”は,日本国内で独自の発展を遂げ,現在は新しい形で医療界に受け入れられようとしている.西洋医学では説明がつかない,あるいは治療法が確立していない病態や疾患に対し,また近年増加しているストレス関連疾患の治療において,「もうひとつの道」としての漢方医学が今,世界的に注目されている.
     漢方医学は,疾患の多様性と個々の患者の個別性に対応できる医学体系であり,「証」による治療を基本とする(随証療法).これにより全人的な医療が可能となり,とくに女性医療のなかでは,更年期不定愁訴に広く応用されている.
     わが国の女性は,ストレス包囲環境に置かれる状況を生じやすく,気血水平衡の喪失,七情損傷からの五臓障害を引き起こしやすいとされる.これにより発現する多くの不定愁訴は,西洋医学的にとらえられる異常所見からは,いかなる診断基準も満たさないが,漢方医学的にはその独特の診断方法を駆使することにより,さまざまな病態が見いだされ,異常点を説明できる.その病態説明は治療に直結しており,そのため漢方医学は古くから治療学中心の医学体系であるといわれてきた.
     西洋医学と漢方医学はけっして対極ではない.いずれも病気を駆逐し,患者の苦しみを和らげることが最終目標である.わが国においては,これら2つの医療体系が融合しながら新しい医療の流れを形成することが“患者中心医療”の実践には望ましいことであろう.
     医学は科学の1分野であり,漢方医学もまた科学である.しかし,3000年以上の歴史をもつといわれる東洋医学の科学としての分析はようやく始まったばかりである.更年期女性の不定愁訴の改善に対する漢方薬の作用機序の研究も緒に着いたところと言わざるを得ないが,今後の多軸的なベクトルでの臨床研究や複雑系医学の分析手法を用いた研究により,漢方医療の有効性の解明が期待される.
    〔産婦の進歩57(2):131-150,2005(平成17年5月)〕
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