産婦人科の進歩
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58 巻, 2 号
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研究
原著
  • ─ 前向き無作為比較試験による臨床効果の検討 ─
    後山 尚久, 佐久間 航, 野坂 桜
    2006 年 58 巻 2 号 p. 112-119
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
     最近のストレス社会で複雑な病態を呈する疾患の治療に「補完医療」が注目され始めている.われわれは更年期不定愁訴を有する女性を対象に,本炭素繊維をフェルト状の不織布としたオルガヘキサ01を寝具として用いた際の症状改善効果について検討し,補完医療の一環として本炭素繊維の臨床応用への可能性について考察した.閉経女性104例(54.3±6.5歳)を対象とし,無作為に2群に分け,植物性炭素繊維寝具(52例)および通常寝具(52例)で7日間就寝してもらった.通常寝具の製作,供給ルートはオルガヘキサ01と同じであり,両者は外見上区別できない.主観的な症状の強さを初診時および7日後の来院時にvisual analog scale(VAS)で評価し,客観的ストレス指標として,唾液中クロモグラニンA濃度を測定した.VAS初期値から30%以上の低下を「自覚症状改善あり」と判定した.
     本炭素繊維の使用は更年期不定愁訴例の約7割において,症状が緩和された.とくに不眠は82.9%,冷えは82.4%に改善が認められた(コントロール群に比べ有意;それぞれP=0.0031,P=0.0018).VASスコアはコントロール群(56.1±12.8%)に比べ炭素繊維群(36.4±15.9%)では低下が大きく(P<0.0001),唾液中クロモグラニンA濃度においても7日後に両群に有意な差が認められた(炭素繊維群:1.72±2.58pmol/ml vs.コントロール群:2.76±1.95pmol/ml;P=0.018).本炭素繊維は不定愁訴を示す更年期女性の交感神経─副腎形の過剰活動を抑制することにより,症状の改善と健康感の回復をもたらす臨床的意義を有する可能性が示唆された.〔産婦の進歩58(2):111-119,2006(平成18年5月)〕
臨床研究
  • 鈴木 史明, 庄野 明子, 富山 俊彦, 小野 雅昭, 谷口 武, 谷口 定之
    2006 年 58 巻 2 号 p. 120-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
     妊婦の妊娠直前BMIを考慮した運動指導の報告は少ない.やせ群(BMI<18.0),適正群(18.0≦BMI<24.0),肥満群(BMI≧24.0)別に運動習慣を調査した.初産婦の運動習慣を有する率は68.2%,経産婦は38.5%である(p<0.01).経産婦の運動習慣は主婦で40.7%にあり,有職者で24.5%にある(p<0.01).どの群でも約9割でウォーキングを選択している.ウォーキングはすべての群にもっとも受け入れられる運動である.1日の運動時間は1時間未満の妊婦がもっとも多く,肥満群では2時間以上の運動をしている妊婦がいなかった.肥満群では「運動が苦手」という妊婦が多い.肥満妊婦には短い時間の運動が適している.初産婦では「一緒にする仲間がいない」妊婦が多い.運動阻害要因として,経産婦,仕事,肥満,情報不足が考えられる.このことから,時間がなくても,いつでも,どこでも可能なウォーキングが推奨される.単なるウォーキングよりもスイミングやジョギングでは消費エネルギーが多い.そこでわれわれは速歩きであるマタニティパワーウォーキングを推奨している.妊娠中に運動しなかった妊婦のうち71.0%が運動したいと考え,肥満群では初産婦が全員運動したいと考えていた.これらの妊婦に対して適切な情報を提供していかねばならない.妊娠中は他の時期に比べて運動習慣を有しやすい.妊婦の運動習慣を有する率を高めることによって,生活習慣病の予防につながると考えられる.〔産婦の進歩58(2):120-129,2006(平成18年5月)〕
  • 松本 安代, 山辺 晋吾, 浅原 彩子, 横田 光, 萬代 喜代美, 出田 和久
    2006 年 58 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
     2004年5月~2005年4月に茶屋町レディースクリニックで低用量ピルを処方された患者1088人を対象に,低用量ピル内服の目的,服用の契機を調査した.対象患者の年齢は27.5±5.8(Mean±SD)歳で,その内訳は避妊目的が372人(34.2%),副効用目的が600人(55.1%),その両者目的が116人(10.7%)であった.副効用のなかでは月経痛(54.9%),月経不順(42.3%)の改善目的が多く,PMS(19.4%),にきび(16.3%)の順であった.30歳未満では避妊目的がもっとも多く,30歳以上では副効用が主な目的であった.低用量ピル内服の契機はインターネット情報が614人(56.4%),医師の勧めが236人(21.7%),家族・友人の勧めが138人(12.7%),新聞・雑誌情報が86人(7.9%)であった.当調査の結果から副効用を目的とする低用量ピル内服者が多く,インターネットが重要な情報源となっていることがわかった.〔産婦の進歩58(2):130-135,2006(平成18年5月)〕
  • 渡辺 浩彦, 田村 出, 石川 弘伸, 木下 勝治, 田中 亜理佐, 假野 隆司, 吉川 枝里, 猪子 英俊, 森 崇英
    2006 年 58 巻 2 号 p. 136-146
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
     原因不明反復・習慣流産患者18組の夫婦36名と流早産歴のない正常分娩夫婦ならびに新生児20組60名のHLA-G,HLA-Eの遺伝子多型を解析した.その結果,HLA-G遺伝子アリル多型頻度に関しては,両群ともHLA-G*010401が圧倒的に高く,*010102,*010101,*010108の4種が主要なものであった.正常対照群にのみ観察されたHLA-Gアリルは*0105N,*010105,*0106の3種で,このうち危険因子と指摘されている*0105Nの検出頻度は2.4%と僅少であった.逆に流産群にのみ発現していたアリルはHLA-G*0103の1種のみで,これも危険因子と報告されているが,頻度は1.3%ときわめて低かった.HLA-E遺伝子アリルについては,両群ともHLA-E*010301,*010302,*0101の3種のみ検出された.また,HLA-GとHLA-E遺伝子アリルの夫婦間シェアリング数が増えるにしたがって遮断抗体活性が暫減する傾向が窺われた.HLAクラス1b抗原の免疫特性と発現部位から,妊娠時の寛容誘導に重要な役割が想定されるので,今後同種免疫性流産の発生機序の解明と診断基準の設定に,積極的な研究の展開が望まれる.〔産婦の進歩58(2):136-146,2006(平成18年5月)〕
症例報告
  • 飛彈 修二, 宮本 愛子, 多田 博文, 園田 隆
    2006 年 58 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
     子宮平滑筋肉腫は,現在標準治療の確立していない予後不良の婦人科疾患である.進行した子宮平滑筋肉腫や再発症例においては効果的な化学療法を実施する必要がある.今回,われわれは,53歳の3回経産婦において,開腹手術後の補助化学療法としてDTX/GEM併用療法を3コース施行したが無効であったIIIa期の有茎性漿膜下筋腫から発生した子宮平滑筋肉腫の1症例で,IFM/ADM/CBDCA併用療法が著効した症例を経験した.子宮平滑筋肉腫の症例において,再発後の化学療法でCRを示す症例は少ないので若干の文献的考察を加えて報告する.〔産婦の進歩58(2):147-151,2006(平成18年5月)〕
  • 飛彈 修二, 宮本 愛子, 多田 博文
    2006 年 58 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/22
    ジャーナル 認証あり
    原発性卵管癌は婦人科悪性腫瘍においてまれな疾患であり,卵管采部が閉鎖していないと容易に腹腔内に播種状転移し,進行して発見されることがある.高齢者の進行原発性卵管癌において,術後の寛解導入化学療法のPaclitaxel(TXL),Carboplatin(CBDCA)療法を施行し,著効したので報告する.症例は,76歳の1回経産婦で平成○年2月初めに腹部膨満感があり,その後大量の腹水貯留が生じた.1ヵ月後に大量腹水の精査のために入院した.腹部CT検査にて,多数の結節を認める原発不明の癌性腹膜炎で卵巣癌やserous surface papillary carcinoma(SSPC)が疑われた.腹水細胞診を行い腺癌と診断された.入院後3週間して開腹手術を施行し,摘出標本の病理組織診断により類内膜腺癌(G2~G3)でFIGO分類IIIcの卵管癌と診断された.術後に寛解導入化学療法としてTJ療法を5コース施行した.TJ療法を3コース終了後に高値を示していた腫瘍マーカーは正常化し,CT所見でも残存腫瘍は消失した.現在,術後2年10ヵ月経過するも再発所見は認められていない.〔産婦の進歩58(2):152-156,2006(平成18年5月)〕
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