最近のストレス社会で複雑な病態を呈する疾患の治療に「補完医療」が注目され始めている.われわれは更年期不定愁訴を有する女性を対象に,本炭素繊維をフェルト状の不織布としたオルガヘキサ01を寝具として用いた際の症状改善効果について検討し,補完医療の一環として本炭素繊維の臨床応用への可能性について考察した.閉経女性104例(54.3±6.5歳)を対象とし,無作為に2群に分け,植物性炭素繊維寝具(52例)および通常寝具(52例)で7日間就寝してもらった.通常寝具の製作,供給ルートはオルガヘキサ01と同じであり,両者は外見上区別できない.主観的な症状の強さを初診時および7日後の来院時にvisual analog scale(VAS)で評価し,客観的ストレス指標として,唾液中クロモグラニンA濃度を測定した.VAS初期値から30%以上の低下を「自覚症状改善あり」と判定した.
本炭素繊維の使用は更年期不定愁訴例の約7割において,症状が緩和された.とくに不眠は82.9%,冷えは82.4%に改善が認められた(コントロール群に比べ有意;それぞれP=0.0031,P=0.0018).VASスコアはコントロール群(56.1±12.8%)に比べ炭素繊維群(36.4±15.9%)では低下が大きく(P<0.0001),唾液中クロモグラニンA濃度においても7日後に両群に有意な差が認められた(炭素繊維群:1.72±2.58pmol/ml vs.コントロール群:2.76±1.95pmol/ml;P=0.018).本炭素繊維は不定愁訴を示す更年期女性の交感神経─副腎形の過剰活動を抑制することにより,症状の改善と健康感の回復をもたらす臨床的意義を有する可能性が示唆された.〔産婦の進歩58(2):111-119,2006(平成18年5月)〕
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