産婦人科の進歩
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62 巻, 4 号
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研究
原著
  • 西尾 美穂, 岡田 十三, 武居 和佳子, 酒本 あい, 吉見 佳奈, 市田 耕太郎, 安田 立子, 村越 誉, 本山 覚
    2010 年 62 巻 4 号 p. 321-326
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/24
    ジャーナル 認証あり
    産婦人科医師不足や閉科医療機関の増加に伴い,産婦人科救急患者の受け入れ困難が社会問題となっている.そこで産婦人科一次救急の現状を改善すべく,当院産婦人科救急外来を受診した症例について分析し検討を加えた.対象は2008年1月から12月までの1年間に千船病院産婦人科救急外来を受診した2913例である.22.9%(667)は当院受診歴のある再診例で,10.8%(314)は母体搬送を含む紹介例,残りの66.3%(1932)は紹介状のない全くの初診例であった.1920例が救急車での受診であり,入院を要したのは17.8%(519)であった.受診時刻別の分析では20時から0時までの症例数がとくに多く,0時を越えると受診症例数は減少したが,救急搬送数は時刻による変動は認められなかった.さらに紹介例,初診例に関し受診理由,入院,手術施行の有無などを詳細に分析した.受診理由として母体搬送では切迫早産が最も多く,母体搬送以外の紹介例では子宮外妊娠,卵巣腫瘍などが多かった.初診症例では切迫流産などの流産関連疾患,月経困難症,骨盤腹膜炎が多く認められた.産婦人科一次救急では約半数の症例が救急搬送であるが,多くは帰宅可能な軽症例で,かかりつけ医をもたずその場しのぎの受診となっている症例が多く認められた.一方で,緊急手術を要する症例や分娩まで医療機関にかからない未受診ハイリスク妊婦などの症例も少なからず存在した.これらのハイリスク症例や0時を越えても減らない救急搬送などが産婦人科業務をより過酷なものとし,産婦人科医師減少や周産期医療縮小へとつながる悪循環となっていることが推察された.救急車利用に対する患者教育とともにこれらの悪循環を断ち切ることが肝要であり,各因子の問題点を改善しつつ産婦人科救急における患者・医師双方に有益であるような新体勢を構築していくことが,今後重要と考えられた.〔産婦の進歩62(4):321-326,2010(平成22年11月)〕
症例報告
  • 鈴木 尚子, 種田 由紀, 江川 晴人
    2010 年 62 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/24
    ジャーナル 認証あり
    慢性の性器出血と明らかな前期破水のない羊水過少を伴うCAOSという病態が1998年にElliottらにより報告されており,同様の週数の他の早産症例と比較し周産期予後が悪いことが示唆されている.当院において妊娠初期からの慢性的な子宮出血を伴い,類似した臨床所見を呈する切迫早産症例を4症例経験した.症例はすべて初期から持続・反復する性器出血および羊水過少を認めた.全4例中2例はIUFD,新生児死亡という転帰をとった.そのうち1例は明らかな破水の所見なく妊娠中期より徐々に羊水過少となり妊娠25週でIUFDとなった.もう1例は妊娠22週より高位破水を認め,子宮内感染が増悪し,妊娠23週で経腟分娩となったが児は出生2時間後に死亡した.残る2例は妊娠25週で臨床的に感染症状が著明となったため帝王切開術を施行し,出生後の児は慢性肺疾患で治療に難渋したものの,現在までのところ明らかな後遺症なく経過している.当院で経験した症例からは,明らかな前期破水の有無にかかわらず初期から慢性的に出血が持続し,さらに羊水過少を発症していくものに関しては周産期リスクが高いことが示唆された.これらの症例に関しては,単なる切迫早産とは異なる慎重な管理が必要であると思われた.〔産婦の進歩62(4):327-332,2010(平成22年11月)〕
  • 横田 浩美, 濱田 新七, 佐竹 由美子, 高橋 顕雅, 宇田 さと子, 浦崎 晃司, 高橋 良樹
    2010 年 62 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/24
    ジャーナル 認証あり
    原発性卵巣癌肉腫はその発生頻度が子宮内膜での発生に比べて著しく低い疾患である.今回われわれは,pseudo-Meigs syndromeを発症した稀有な1例を経験したので報告する. 症例は76歳の女性で,腹部膨満感を主訴に近医を受診した.大量の腹水貯留のため当院を紹介された.CTおよびMRIで大量腹水を伴った骨盤内悪性腫瘍を疑う巨大腫瘤を認めた.血中LDHが1582 IU/l,CA125が410 U/mlと上昇していた.全身状態を改善するために腹水穿刺を行い,採取した腹水の4000mlを濾過濃縮再静注した.残り500mlで細胞診を行ったが,悪性腫瘍細胞は確認されなかった.しかし,臨床所見およびMRI,CTの所見より癌性腹膜炎の可能性が高いと考えられたため,カルボプラチン腹腔内投与施行した.その後,腹水が再貯留し,12日後には胸水が出現した.18日後に胸水穿刺施行し,4日間で総量2200ml排液,細胞診を施行したが,やはり悪性腫瘍細胞は確認できなかった.翌日,腹式単純子宮全摘出術,両側子宮付属器摘出術,大網切除術,虫垂切除術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清術,カルボプラチン450mg腹腔内投与を施行した.摘出標本で,子宮と卵管の内膜に腫瘍はなく,引き延ばされた右卵管に接した部位から発生した,広範囲に中心壊死を伴う腫瘍が,子宮の底部から後壁のほぼ全面に,漿膜側から内腔方向に浸潤していることより,右卵巣原発腫瘍と考えられた.また組織型は上皮性悪性腫瘍成分と間葉系悪性腫瘍成分が混在しており,一部に軟骨肉腫の部分が認められたため異所性癌肉腫と診断した.左卵巣,大網,虫垂に転移性腫瘍はなく,胸腹水にも腫瘍細胞は認められなかった.いわゆるpseudo-Meigs syndromeを発症したII期の卵巣原発異所性癌肉腫であった(pT2cN0M0).術後補助化学療法としてTC(パクリタキセル,カルボプラチン)化学療法を6クール行い,10ヵ月経過した時点では完全寛解状態が持続している.本症例はきわめてまれで,初めての報告と思われる.〔産婦の進歩62(4):333-339,2010(平成22年11月)〕
  • 勝矢 聡子, 樋口 壽宏, 寺島 剛, 武内 英二, 高倉 賢二
    2010 年 62 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/24
    ジャーナル 認証あり
    エストロゲン産生腫瘍は大半が卵巣原発であり,卵巣以外の婦人科臓器からの発生はまれである.今回われわれは,術前に卵巣性索間質腫瘍を疑って開腹手術を行ったが,子宮体部原発の性索間質類似腫瘍と診断した稀有な症例を経験したので報告する.症例は59歳,閉経後性器出血を自覚し近医を受診したところ子宮内膜病変を疑われたため,当科を紹介受診した.当科初診時,子宮出血に加え,画像上子宮内膜肥厚および子宮右側に腫瘤を認め,血中エストラジオールは36.00pg/mlと軽度上昇していた.卵巣性索間質腫瘍を疑い開腹手術を施行したところ,両側卵巣は萎縮しており右子宮角部に軟な腫瘤を認めた.術中迅速病理診断では卵巣莢膜細胞腫に相当する所見であり,腹式単純子宮全摘術および両側付属器切除術を施行した.術後病理診断では腫瘍は正常子宮平滑筋で囲まれており,子宮原発の性索間質類似腫瘍(uterine tumor resembling ovarian sex-cord stromal tumor)type IIと診断した.子宮原発の性索間質類似腫瘍は子宮内膜間質腫瘍由来のtype Iと子宮筋層内の種々の間質細胞由来のtype IIに分類され,両者で予後が異なり,取り扱い上注意が必要であるため,免疫染色を用いた正確な術後病理診断が重要である.〔産婦の進歩62(4):340-344,2010(平成22年11月)〕
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