産婦人科の進歩
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63 巻, 4 号
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研究
原著
  • 堀 謙輔, 安藤 亮介, 繁田 直哉, 宮木 康成, 大西 圭子, 栗谷 健太郎, 脇本 哲, 山本 志津香, 尾崎 公章, 伊藤 公彦
    2011 年 63 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    当科の卵巣癌IIIc期の5年生存率は,2006年FIGO報告の32.5%に対し51.2%と良好である.当科での治療内容を詳細に検討することにより,今後の治療成績向上につなげることを目的として,2002年~2008年までに当科で初回治療を開始した卵巣癌IIIc期 32例を後方視的に検討したところ以下の結果を得た.(1)年齢の中央値は56歳(範囲:35~81歳).(2)組織型は漿液性腺癌14例,類内膜腺癌8例,粘液性腺癌2例,明細胞腺癌4例,未分化癌3例,その他1例.(3)5年生存率は51.2%,5年無病生存率は47.3%.(4)初回治療に奏効しなかった2例を除く30例中23例(76.7%)で,初回手術時(5例)またはinterval debulking surgery(IDS)時(18例)に肉眼的残存腫瘍なしのcomplete surgeryがなされ,これら23例は一度もcomplete surgeryがなされていない症例(7例)よりも再発が有意に少なかった(p=0.0042).また初回化学療法(化療)でclinical CRが得られIDS未施行症例(5例)は, IDSでcomplete surgeryがなされた症例(18例)よりも再発が有意に多かった (p=0.0361).(5)再発後6サイクル未満しか化療ができなかった症例(3例)は,6サイクル以上できた症例(10例)に比べて,死亡が有意に多かった(p=0.0024).これらの結果より,卵巣癌IIIc期の治療成績向上には,いずれかの時点でのcomplete surgeryがなされることと,再発時の積極的な化療が有効な可能性が示唆された.〔産婦の進歩63(4):477-482,2011(平成23年11月)〕
臨床研究
  • 岩井 加奈, 大井 豪一, 常見 泰平, 成瀬 勝彦, 野口 武俊, 佐道 俊幸, 小林 浩, 堀内 健太郎, 金山 尚裕
    2011 年 63 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    羊水塞栓症(amniotic fluid embolism: AFE)の血清学的診断は,本邦独自の方法である.現在,日本産婦人科医会の事業として,母体血清中のSialyl Tn(STN)とZinc coproporphyrin1 (Zn-CP1)の測定が浜松医科大学において実施されている.1992年~2006年までに登録され,血清データが存在するAFE128症例と非AFE 73症例の合計201症例を対象として,AFEにおける血清マーカーSTNとZn-CP1の有用性を検討した.χ2検定において,STN 47U/ml,Zn-CP1 1.6pmol/mlの閾値設定により,AFE群STN値(p=0.00003)およびZn-CP1値(p=0.00953)測定は,非AFE群と比較し有意差を認めた.Mann-Whitney検定において,AFE群の母体血清STN値は,非AFE群に比し有意に高値を示した(p=0.0011)が,Zn-CP1値は有意差を認めなかった(p=0.0994).またAFE診断における母体血清STNとZn-CP1値の感度・特異度は,それぞれ25.8%,97.3%と45.9%,73.0%であった.以上の結果より,AFEの血清学診断としてのSTNとZn-CP1値測定は,有用な方法であった.しかし,これら血清マーカー値のみによりAFEと診断すべきではない.本検査法は,胎児成分の1つである胎便が母体血中に流入したか否かのみをみるためのものである.さらに,この研究対象の母集団は,自発的に登録されたAFE群および非AFE群であり,本邦におけるすべてのAFE群および非AFE群を網羅したものでもない.現状においては本血清学的診断法は補助診断法として使用し,AFE診断は臨床診断により慎重に判断されるべきである.〔産婦の進歩63(4):483-487,2011(平成23年11月)〕
症例報告
  • 伊東 史学, 丸山 祥代, 藤本 佳克, 山下 健
    2011 年 63 巻 4 号 p. 488-492
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    一般的に胃・十二指腸潰瘍(PUD)は,妊娠中には非妊時に比べ発生頻度は減少するとされている.また妊娠中の潰瘍穿孔の報告例は少なく,3rd trimesterでの報告はあるものの妊娠初期での報告例はない.われわれは,妊娠初期に十二指腸潰瘍穿孔を発症し,治療により妊娠継続できた症例を経験したので報告する.症例は39歳1経産の妊婦で,妊娠悪阻にて入院管理中であった.突然の心窩部痛を訴え腹部単純立位X線撮影にて腹腔内遊離ガスを認めたため,上部消化管内視鏡を施行し十二指腸潰瘍穿孔と診断した.しかし,穿孔部位は小さく,全身状態は安定していたため保存的治療により妊娠継続し得た.妊娠中の消化管穿孔の診断・管理・治療につき,文献的考察を加え報告する.〔産婦の進歩63(4):488-492,2011(平成23年11月)〕
  • 池田 ゆうき, 鍔本 浩志, 井上 佳代, 加藤 徹, 金澤 理一郎, 小森 慎二, 前田 弘彰, 廣田 省三
    2011 年 63 巻 4 号 p. 493-498
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    子宮頸部腺癌(腺扁平上皮癌を含む)は扁平上皮癌に比して放射線感受性が低く進行癌では予後が悪い.一方,側方浸潤のないIVa期であれば骨盤除臓術により完全摘出が可能である.当科では1998年~2006年の間,子宮頸部腺癌に対する術前化学療法(NAC: paclitaxel 60mg/m2静脈投与 d1, d8, d15+cisplatin 70mg/m2経子宮動脈投与およびゼラチンスポンジによる塞栓術 d2,q21d×3サイクル)の臨床試験を実施した.IVa期2例が登録され,NAC後に前方または後方骨盤除臓術を施行することで長期生存を得たので報告する.[症例1]66歳,経産婦.パーキンソン病合併.性器出血のため来院し頸部組織生検,MRI検査,注腸検査にて長径8cmの子宮頸部腺癌IVa期と診断された.NAC 2サイクル後に腟内に便を認め直腸腟瘻と診断した.またMRI検査では腫瘍は消失した(CR).広汎子宮全摘術および直腸低位前方切除術を施行したところ摘出標本に病理学的残存腫瘍を認めず,術後84ヵ月を経て再発所見はなく,排便障害もない.[症例2]59歳,経産婦.血尿のため近医泌尿器科を受診し子宮頸部腺癌膀胱浸潤と診断され当科に紹介された.NAC3コース後施行した膀胱鏡検査では明らかな腫瘍を認めず,MRI検査ではPRであった.広汎子宮全摘術および膀胱摘出術を施行し,術後72ヵ月経過し再発所見はない.〔産婦の進歩63(4):493-498,2011(平成23年11月)〕
  • 菅沼 泉, 楠木 泉, 辰巳 弘, 大久保 智治, 北脇 城
    2011 年 63 巻 4 号 p. 499-504
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    子宮内外同時妊娠の自然発生は30,000妊娠に1例とまれであるが,ARTの普及に伴いART後妊娠では670妊娠に1例と増加傾向にある.それに伴い,卵管間質部との内外同時妊娠の頻度も増加している.卵管間質部との内外同時妊娠の治療においては従来開腹による間質部切除や間質部切開術が施行されることが一般的であったが,子宮内妊娠に対する影響を最小限にすることが重要である.今回われわれは凍結胚移植後に生じた卵管間質部との内外同時妊娠に対し腹腔鏡補助下に卵管間質部切開術行い,生児を得ることに成功した.症例は39歳の初妊婦.他院で原因不明不妊に対して胚盤胞2個で凍結胚移植を受け,妊娠6週1日に内外同時妊娠を疑われ当院に紹介された.子宮内に心拍を伴う胎芽を,右間質部には胎嚢のみを認めたため入院のうえ子宮内妊娠の成長と間質部妊娠の流産を待機した.しかし右間質部に心拍を伴う胎芽が出現し,右下腹部痛を認めたため妊娠7週0日に緊急腹腔鏡補助下手術を施行した.腹腔内出血を認めず,骨盤内に強い内膜症性癒着を認めた.体外法で間質部切開術を行った.術後経過は良好で妊娠9週0日にいったん退院とした.間質部妊娠術後の子宮破裂の報告もあったため,妊娠29週より管理入院を開始した.切迫早産となり収縮抑制困難と右側腹部痛が出現したため,妊娠35週6日に帝王切開を施行し,1994g,アプガースコア9点(5分)の女児を得た.児は経過良好で成長発達は正常である.経腟超音波検査機器の進歩とART後の内外同時妊娠への警戒の浸透から早期診断例が増加している.治療法は手術療法が主であるが,母体と子宮内妊娠への手術侵襲の影響がより低減される保存的療法や局所薬物療法の報告もある.手術療法においても子宮内妊娠の予後を改善するためより低侵襲な治療を確立する必要がある.〔産婦の進歩63(4):499-504,2011(平成23年11月)〕
  • 梅田 杏奈, 澤田 育子, 山口 博文, 兪 史夏, 数見 久美子, 宮西 加寿也, 朴 康誠, 山本 敏也
    2011 年 63 巻 4 号 p. 505-509
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/26
    ジャーナル 認証あり
    絨毛性疾患患者において,血中ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin : hCG)の上昇により甲状腺機能亢進症を認めるということは一般的に知られている.血液検査にてホルモン値の上昇を認める症例は多く認めるが,臨床的に甲状腺中毒症の症状を呈する症例の発生頻度は不明である.今回われわれは,甲状腺中毒症を呈した胞状奇胎の1症例を経験したので報告する.症例は52歳,2回経妊2回経産婦.最終月経の4ヵ月後より5週間にわたって不正性器出血の持続を認めていたが,月経不順と考え放置していた.同時期より食欲不振,浮腫,腹部膨満感が出現し,当院内科へ紹介受診となった.内科にて腹部に巨大な腫瘤を認め,婦人科疾患を疑い当科紹介となった.当科初診時,子宮は著明に腫大しており,子宮腔内より出血を認めた.血液検査にてFT4 3.52mg/dl,TSH<0.01μU/mlと甲状腺機能の亢進を認めたため,直ちに内科よりチアマゾール,ヨウ化カリウム内服治療が開始され,FT4は速やかに正常化した.子宮内膜細胞診にてトロホブラストを認め,血中hCGを測定したところ681676mIU/mlと高値であり絨毛性疾患が疑われた.子宮摘出の方針としたが,手術予定日の2日前に奇胎の自然排出を認めた.予定どおり子宮全摘術を施行したところ,病理組織検査にてトロホブラストの筋層浸潤をわずかに認め侵入奇胎と診断された.術後,血中hCGは速やかに低下し,術後1年経過した現在でも血中hCGの再上昇は認めていない.また甲状腺機能も正常状態を維持している.絨毛性疾患の治療にあたっては,甲状腺機能亢進状態の有無についても考慮する必要がある.〔産婦の進歩63(4):505-509,2011(平成23年11月)〕
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