産婦人科の進歩
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63 巻, 1 号
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研究
原著
  • ―開腹子宮全摘術との比較から―
    緒方 誠司, 渡辺 正洋, 増田 安紀子, 金山 智子, 雨宮 京夏, 足立 和繁
    2011 年 63 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    低侵襲な手術に対する要求の高まりと腹腔鏡下手術手技,手術機器の進歩をうけ,当科でも平成20年11月以降,一部の症例において全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を導入した.今回われわれは,当科において同時期に行われた開腹子宮全摘術(TAH)症例との比較により,導入初期におけるTLHの特徴について,後方視的な解析を行った.平成20年11月以降に当科においてTLHを施行された症例と,同時期にTAHを施行された症例について,年齢,対象疾患,手術時間,摘出子宮重量,術前および術後のCRP,WBC数,術後の鎮痛剤の使用回数,術後の疼痛スケールについてそれぞれ比較検討した.TLH症例とTAH症例の間に対象症例の年齢については差がなかったが,TLH症例において摘出子宮重量は軽く,手術時間は長かった.TLH症例において術後のCRP値は低かったが,WBC数には差が認められなかった.術後疼痛は,術後早期(術後2日目まで)にはTLH症例で強い傾向にあり(有意差は認めず),術後後期(術後4~5日目)にはTAH症例で有意に術後疼痛が強かった.これは硬膜外麻酔併用がTAH症例で多かったためと考えられた.鎮痛剤の使用回数はTLH症例で少ない傾向にあった.以上より,当科の症例においてTLHはTAHと比較して,手術時間が長くかかる傾向にあるものの,低侵襲であることが示唆された.今後適用可能症例に関しては積極的にTLHの適用を進めていく方針である.〔産婦の進歩63(1):1-5,2011(平成23年2月)〕
臨床研究
  • 林 子耕, 炬口 恵理, 村上 雅博, 中川 康, 木村 光宏, 山崎 幹雄, 阿部 彰子, 加藤 剛志
    2011 年 63 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    腹腔鏡下手術は開腹手術に比べてより低侵襲であり,患者の社会復帰もより早期になることが期待できる.腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)後2ヵ月半に生じた腟断端破裂と小腸脱出症例の経験をふまえ,TLH術後の患者の方が腹式単純子宮全摘術(ATH)後の患者より,術後の性活動を含めた社会生活への復帰が早くなっているのではないかと考え,郵送アンケートによる生活調査を行うこととした.対象は当科で子宮良性疾患のため単純子宮全摘術(STH)を受けた48名で,うちTLH群31名,ATH群17名であった.両群間に年齢,および夫(パートナー)の年齢,仕事の再開時期,自動車運転の再開時期,入浴の再開時期および性交の再開時期(2.0ヵ月 vs. 2.5ヵ月)に有意差は認めなかった.また術後に性交頻度の低下,性欲の低下(32% vs. 56%),性交時疼痛を訴える頻度も両群の間に有意差はなかった.今回の検討では症例数が少なく統計学的有意差はなかったものの,TLH術後の患者の方がATH術後の患者に比べ性活動がより早期に回復する可能性が示唆された.〔産婦の進歩63(1):6-10,2011(平成23年2月)〕
症例報告
  • ―2症例の臨床経過と術後補助化学療法に関する考察(review literature)―
    佐竹 由美子, 姜 賢淑, 最上 晴太, 高橋 顕雅, 宇田 さと子, 横田 浩美, 浦崎 晃司, 濱田 新七, 高橋 良樹
    2011 年 63 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    子宮体癌のなかでは比較的まれで予後が不良とされる癌肉腫を2例経験したので,その臨床経過を検討し,術後補助化学療法についての文献的考察を行った.症例Aは52歳のIIIa期(pT3aN0M0)の同所性癌肉腫で,G1類内膜腺癌と平滑筋肉腫の組織型であった.症例Bは54歳のIb期(pT1bN0M0)の異所性癌肉腫で,G2類内膜腺癌と軟骨肉腫,骨肉腫であった.2例とも準広汎子宮全摘出術,両側付属器摘出術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術を行い,術後補助療法としてパクリタキセル・カルボプラチン療法(TC療法:パクリタキセル175mg/m2+カルボプラチン AUC 6)を施行した.IIIa期の症例Aは術後9ヵ月で再発死亡したが,Ib期の症例Bは術後3.5年経過して再発所見がない.2例とも手術による完全摘出例で,残存腫瘍はなかった.術後補助化学療法としてのTC療法は,III期の症例では無効であった.子宮体部癌肉腫に対する補助化学療法として,TC療法が一般的に汎用されている.しかし,TC療法が無効あるいは耐性となった場合のsecond line chemotherapyの確立は,今後の課題である.〔産婦の進歩63(1):11-17,2011(平成23年2月)〕
  • 宇田 さと子, 佐竹 由美子, 高橋 顕雅, 横田 浩美, 高橋 良樹, 井伊 庸弘, 戸田 省吾
    2011 年 63 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    月経随伴性気胸と胸水貯留を繰り返した重症子宮内膜症の1例を経験したので報告する.本症例は,過去に月経随伴性気胸を繰り返すものの自然治癒していたが,今回,胸痛と呼吸困難,年々増悪する月経困難症のために,当院を受診した.CT検査で右側の月経随伴性気胸と診断され,胸腔鏡下横隔膜切除術が行われ,右横隔膜に異所性子宮内膜症を疑う病巣が確認された.その4ヵ月後に行われた腹腔鏡下手術で,Stage IV(Re-AFS score 45点)の重症子宮内膜症および卵巣チョコレート嚢胞の合併を認めた.胸腔鏡下手術の5ヵ月後に,月経随伴性気胸は胸水を伴って再発し,その後も気胸,胸水貯留を繰り返した.本症例では,血清CRPが気胸,胸水貯留の病勢の推移に連動して上昇し,気胸,胸水の再発を疑う所見として有用であった.胸腔穿刺や胸膜癒着術などの保存的治療は,再発性の気胸や胸水には有効な治療ではなかった.GnRH agonist投与2回目でやや寛解状態が得られ,4回投与終了後,ジエノゲストに変更した.その後10ヵ月以上気胸や胸水の再発を認めていない.本症例では,子宮内膜症に関連する気胸や胸水の病勢の推移に,血清CRPの測定が有用であることが示唆された.〔産婦の進歩63(1):18-23,2011(平成23年2月)〕
  • 梶本 めぐみ, 原田 直哉, 延原 一郎, 春田 典子
    2011 年 63 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    一般に変性が少ないとされる富細胞平滑筋腫が,嚢胞変性をきたし腫瘍マーカーの上昇をも伴ったため,卵巣癌などの悪性腫瘍との鑑別に苦慮した症例を経験した.症例は46歳の2回経産婦.全身の倦怠感および腹部膨満感を主訴に近医内科を受診.骨盤内の腫瘤およびCA125の高値(111 U/ml)を指摘され,婦人科疾患を疑われ当院へ紹介受診となった.骨盤内には子宮または付属器と思われる可動性のやや不良な超新生児頭大の腫瘤を触知し,両側子宮傍組織は軟であった.初診時の採血結果は,Hb 9.7g/dl,Ht 31.5%,plt 40.9×104/μl,LDH 182IU/l,CA125 235.8U/ml,CA19-9 5.4U/ml,CEA 0.8ng/ml.MRIでは骨盤内を占拠する15cm大の多房性の嚢胞性腫瘤を認め,内容液はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号であった.腫瘤の1/3程度にT1強調像で低信号,T2強調像では一部高信号の混在も認めるものの不均一な低信号を呈する充実性の部分を認め,造影により著明に濃染され,拡散強調像では高信号を呈した.少量の腹水貯留も認めた.以上のことから卵巣原発の漿液性または粘液性腺癌を第一に疑い,子宮肉腫または変性した子宮筋腫などを鑑別疾患とした.開腹所見にて嚢胞変性を伴った子宮腫瘍であることが判明し,両側付属器は嚢胞変性した子宮体部に付着していたため,子宮とともに両側付属器も摘出した.病理所見では富細胞平滑筋腫と診断した.術後の経過は良好で,CA125も速やかに陰転化した.嚢胞変性を伴う富細胞平滑筋腫は悪性腫瘍との鑑別が困難なことがある.〔産婦の進歩63(1):24-28,2011(平成23年2月)〕
  • 高岡 亜妃, 大竹 紀子, 北村 幸子, 須賀 真美, 岡田 悠子, 宮本 和尚, 西村 淳一, 今村 裕子, 山田 曜子, 山田 聡, 星 ...
    2011 年 63 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    子宮筋腫などを合併し頸管延長を伴って過度に子宮が変形した症例では,帝王切開術の際,子宮切開部位の決定に苦慮することがある.今回,術前にMRIにて頸管の著明な延長を確認し,術中エコーにて適切な子宮筋層の切開部位を決定でき,良好な経過であった症例を経験したので報告する.症例は31歳,初産婦.妊娠38週時に子宮頸部筋腫合併妊娠,骨盤位および低置胎盤にて当科紹介受診.骨盤MRIにて子宮後下方に約9cm大の子宮筋腫を認め,子宮頸管の著明な延長と内子宮口の挙上がみられた.低置胎盤は否定されたが,子宮筋腫と胎盤との間の子宮筋層がほとんどみられず子宮筋腫への癒着胎盤も疑われた.帝王切開術施行時,術中超音波にて挙上した内子宮口の位置を確認し,臍レベルで子宮横切開を行った.子宮頸部にあると思われていた子宮筋腫は,実際には子宮底部に存在し子宮が過度に後屈してダグラス窩に嵌頓していたものであった.胎盤は自然に剥離し容易に娩出でき,また子宮収縮によって子宮切開層は通常の下部横切開の位置に戻った.〔産婦の進歩63(1):29-32,2011(平成23年2月)〕
  • 山本 拓郎, 澤田 守男, 黒星 晴夫, 辰巳 弘, 森 泰輔, 岩破 一博, 北脇 城
    2011 年 63 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/30
    ジャーナル 認証あり
    外陰部悪性腫瘍手術の目的が腫瘍根治切除であることはいうまでもない.広範な外陰部欠損のため会陰部再建術が必要となるが,従来法は単なる欠損ヵ所の補填という性格が強い.今回われわれは,機能・美容という両面において利するところの多い臀溝皮弁(gluteal fold flap,またはlotus petal flap)を用いた会陰部再建を行った1例について報告する.症例は65歳,半年前から外陰部腫瘤の増大を認め,出血をきたしたことから当院受診.糖尿病の既往と腫瘍に伴う高カルシウム血症を認めた.外陰癌と術前診断し,広汎外陰全摘術・会陰部再建術を施行した.最終病理診断結果が,高分化型扁平上皮癌,pT1bN0M0であったことから追加治療は不要と判断.皮弁皮膚の一部に壊死をきたしたが,幸い生着をみた.donor siteの治癒や排尿・排便機能に関しては支障なく経過した.〔産婦の進歩63(1):33-36,2011(平成23年2月)〕
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