産婦人科の進歩
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64 巻, 4 号
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研究
症例報告
  • 井上 佳代, 鍔本 浩志, 金澤 理一郎, 本多 釈人, 加藤 徹, 脇本 裕, 荻野 舞, 澤井 英明, 窪田 耕三, 羽尾 裕之
    2012 年 64 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル 認証あり
    子宮ポリープ状異型腺筋腫atypical polypoid adenomyoma(APAM)と診断された若年者2例を報告する.[症例1] 29歳,未経妊.過多月経および径約2cmの腫瘍を子宮体部に認め当科に紹介される.子宮内膜 生検で子宮内膜異型増殖症(複雑型)と診断され経頸管的切除術(transcervical resection, TCR )および子宮内膜全面掻爬術を施行しAPAMと診断した.術後子宮鏡検査で残存腫瘍を認めず.初回TCRから6年後,MRI検査で径約2cmの子宮腫瘍を認め子宮内膜全面掻爬術によりAPAMの再発と診断した.2回目の子宮内膜全面掻爬術から3カ月後に腫瘍が径約4cmとなりTCRを施行したが,その6カ月後に再度腫瘍が増大し過多月経も認めたため,開腹下に腫瘍摘出術(切除断端陰性)を行った.現在開腹術後10カ月 で再発所見は認めない.[症例2] 27歳,未経妊.過多月経を認め,TCRにより子宮底部の子宮内膜ポリープを切除した際に,子宮体下部後壁の不整子宮内膜を生検したところ子宮内膜異型増殖症(複雑型)と診断された.その後,子宮内膜全面掻爬術を施行したが異型内膜腺は認めず慎重に経過観察したところ,2年後に超音波検査にて子宮体下部に径約1cmの腫瘍を認め,子宮内膜生検をしたところ高分化型類内膜腺癌と診断された.筋層浸潤や頸部浸潤の有無を判定するためにTCRを施行しAPAMと診断された.現在術後11カ月目で再発所見は認めない.〔産婦の進歩64(4):483-489,2012(平成24年11月)〕
  • 自見 倫敦, 中後 聡, 柴田 貴志, 徳田 妃里, 山本 彩, 登村 正之, 張 友香, 加藤 大樹, 奥杉 ひとみ, 新小田 真紀子, ...
    2012 年 64 巻 4 号 p. 490-494
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル 認証あり
    胎盤血管腫は胎盤に発生する良性腫瘍の中で最も頻度の高い疾患である.通常,腫瘍径は5cm以下のものが多く,15cmを超えるものはまれである1).とくに腫瘍径の大きなものほど周産期合併症が多く,母体では羊水過多,早産,胎児では非免疫性胎児水腫,心不全,貧血,胎児発育不全,DICなどの重篤な合併症を引き起こすことが報告されている2,3).今回,われわれは著明な羊水過多を契機に胎盤血管腫が疑われ,妊娠29週2日に胎児心不全に至った直径18cmに達する巨大胎盤血管腫の1例を経験したので報告する.症例は17歳,初産婦.妊娠27週0日に羊水過多と切迫早産と診断され,当院に搬送された.超音波検査で胎盤辺縁に91×63mm大の血流豊富な腫瘍を認め,胎盤血管腫を疑った.妊娠29週2日に胎児水腫と心嚢液貯留を認め,CTAR(cardiothoracic area ratio) 43%,IVC-PLI(inferior vena cava preload index) 0.5と上昇したため,胎児心不全と判断し緊急帝王切開術を行った.腫瘍は治療期間を通じて徐々に増大し,分娩時の直径は18×13cmであった.胎児は集中治療により日齢96で退院した.今回,われわれは厳重な胎児観察を行い,胎児心不全の診断後,速やかに胎児娩出を行い,児の出生後経過も良好であった症例を経験した.巨大な胎盤血管腫を認めた際には,合併症に対する対症療法を行いながら,胎児心不全徴候を早期に発見し,その所見を認めた場合は迅速な分娩も含めた適切な対応を行う必要がある.〔産婦の進歩64(4):490-494,2012(平成24年11月)〕
  • 中川 美生, 橋本 洋之, 石井 貴子, 吉田 晋, 岡澤 美佳, 横井 猛, 井阪 茂之, 山崎 大, 荻田 和秀, 長松 正章
    2012 年 64 巻 4 号 p. 495-499
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/31
    ジャーナル 認証あり
    子宮体部の小細胞癌はまれで予後不良な疾患であり,化学療法を含む標準的な治療方法は確立されていない.今回われわれは,パクリタキセルとカルボプラチンによる化学療法が著効した子宮体部小細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は73歳,3経妊2経産,腹部膨満感を主訴に当院を受診した.子宮は鷲卵大に腫大し,MRIにて子宮筋層が著明に肥厚し子宮前壁から内腔に突出する病変を認めた.またCTにて傍大動脈から両側内腸骨にかけてリンパ節腫大を認めた.試験開腹術を施行した.腹水細胞診は陽性,子宮は新生児頭大に腫大し,可動性が認められず,切除不可能であったため,腫瘍部分切除術と右付属器摘出術を行った.腫瘍の病理組織学的所見は,N/C比が大きい小型細胞が主体でシート状に増殖しており,核の木目込み像,核線の形成,小~中型の壊死巣が散見された.免疫組織化学的染色として神経内分泌マーカーのNSEがびまん性,強陽性,Synaptophysinがびまん性,中~強陽性,Chromograninが陰性であったため,小細胞癌と診断した.病期はIIIA期,pT3aNxM0であった.術後の化学療法としてTC療法(パクリタキセル:175mg/m2,カルボプラチン:AUC 5)を施行し,5コース施行後子宮は正常大となった.再開腹術を施行し,子宮全摘術,左付属器摘出術,大網切除術を施行した.摘出子宮は壊死組織のみで残存腫瘍を認めなかった.術後TC療法2コース施行し外来にて経過観察中であるが,初回手術より3年が経過した地点で,再発を認めていない.子宮体部の小細胞癌に対して,パクリタキセルとカルボプラチンによる化学療法は効果が得られ,また副作用も軽度であったことから治療の選択肢の1つとなりうると考える.〔産婦の進歩64(4):495-499,2012(平成24年11月)〕
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