産婦人科の進歩
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65 巻, 1 号
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研究
原著
  • 原田 直哉, 小林 浩, 井上 芳樹, 高井 一郎, 潮田 悦男, 大井 豪一, 小畑 孝四郎, 喜多 恒和, 下里 直行, 中島 容子, ...
    2013 年 65 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    妊婦健康診査(以下,健診)をほとんど受診することなく分娩に至る妊婦健診未受診妊婦(以下,未受診妊婦)に関する既報では多くが施設単位であるため,奈良県全体での実態を把握するためのアンケート調査を実施した.未受診妊婦の定義は,(1)全妊娠経過を通じての産婦人科受診回数が3回以下,または(2)最終受診日から3カ月以上の受診がない妊婦,のいずれかに該当する場合とした.県内のすべての分娩施設に対し,平成22年1月からの1年間の分娩数と,未受診妊婦があれば個別に母児の状況を調査した.年間11,168例の総分娩数中の11例(0.10%)の未受診妊婦を認めた.初産婦は4例(36.4%)で,5回あるいは7回と多産の経産婦もいた.未入籍は9例(81.8%),妊娠のパートナーと音信不通になっている者が5例(45.6%)いた.重篤な合併症を認めた母体が3例(27.3%),集中治療室に収容された新生児が3例(27.3%)であった.産褥健診を受診しなかった1例(9.1%)は,新生児の1カ月健診も受診しなかった.未受診を防ぐことは,母児の健康を確保するだけでなく,周産期母子医療センターへの患者集中を防ぎ,周産期の医療資源の有効利用にもつながるため,社会全体でその解消に取り組む必要がある.また未受診であった妊婦に対しては,虐待のハイリスクグループと考え,その後を通常の妊婦と異なる個別の対応を行うことにより,虐待を防止することができるかもしれない.〔産婦の進歩65(1):1-10,2013(平成25年2月)〕
診療
  • 高橋 佳世, 岡田 十三, 市田 耕太郎, 安田 立子, 村越 誉, 本山 覚
    2013 年 65 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    近年,妊産婦の妊娠分娩管理に対するニーズが多様化する一方で,産科医師不足や分娩取り扱い施設の減少など産科医療現場には多くの課題がある.このような産科医療情勢に対して,病院内における助産師を主体として妊娠分娩管理を行う院内助産システムが注目されている.当科では平成19年5月より院内助産システムを開設し,平成23年12月までに計825例が分娩した.今回われわれは平成21年1月~平成22年12月の間に当科で分娩したローリスク妊婦のうち,医師管理の妊婦937例と院内助産システム管理の妊婦444例における妊産婦と児の周産期予後を比較検討した.出血量と微弱陣痛症例における入院時から分娩誘発開始までの時間の統計解析はt検定で,その他の統計解析はχ2検定で行い,p<0.05を有意とした.母体の転帰(帝王切開率,分娩時出血量,会陰裂傷の程度)および出生時の児の転帰(分娩週数,Apgar score1分値・5分値7点未満,臍帯動脈血pH7.1未満,臍帯動脈血pH7.2未満,2500g未満の低出生体重児,出生体重3500g以上の児)には両群間に有意な差はなかったが,医療介入(分娩誘発・陣痛促進,吸引・圧出分娩,分娩後子宮収縮剤投与,会陰切開)については,医師管理群が助産師管理群より有意に多かった.また院助管理群のうち62例は胎児因子,母体因子や社会因子で医師管理となり,そのうち30例は医師の複数回の診察で経過に異常がないことを確認して,再度院助管理へ移行して分娩に至った.以上の結果より,分娩時の医療介入は医師管理群で有意に高かったものの,母児の転帰においては有意差を認めず,院内助産システムで医師管理と同等に周産期管理を行うことは可能であると考えられた.〔産婦の進歩65(1):11-19,2013(平成25年2月)〕
症例報告
  • 田中 絢香, 吉村 明彦, 小泉 花織, 中村 幸司, 渡邊 慶子, 島津 美紀, 中辻 友希, 増原 完治, 信永 敏克
    2013 年 65 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    原発性腟癌は婦人科悪性腫瘍のなかでもまれな疾患で,欧米では腟明細胞腺癌は子宮内でジエチルスチルベストロールdiethylstilbestrol(DES)に曝露された若年女性に関連して発生することが報告されている.今回われわれは,DESの曝露歴がないにもかかわらず,左腎無形成と重複子宮といった泌尿生殖器の先天奇形を伴った腟明細胞腺癌の1例を経験したのでここに報告する.症例は60歳女性,2年前から不正性器出血があったが放置していた.持続する性器出血と下腹部痛を主訴に来院.精査により左前壁より発生した5cm大の腟腫瘤であり,明細胞腺癌stageII(T2NXM0)と診断した.画像検査にて重複子宮と左腎無形成を認めた.全骨盤照射と腔内照射を併用した放射線療法を施行したところ,腫瘍は完全に消失したため経過観察とした.治療開始から7年目に多発肺腫瘍を指摘され,腟明細胞腫瘍の再発と診断した.現在irinotecan-cisplatin(CPT-P)療法を施行中である.DESに関連しない腟明細胞腺癌はまれであるが,泌尿生殖器系の先天奇形を伴った症例が数例報告されている.Müller管形成異常に関連して腟腺症が誘導され,腟明細胞腺癌の発生母地となる可能性が指摘されており,性器奇形のある症例では慎重な精査が必要と思われる.腟癌の予後因子である進行期や腫瘍径を考慮すると,本症例で放射線療法のみではなく化学療法を含めた集学的治療の必要性に関して検討の余地があったと考える.〔産婦の進歩65(1):20-25,2013(平成25年2月)〕
  • 滝 真奈, 寒河江 悠介, 稲田 収俊, 宮崎 有美子, 和田 美智子, 横山 玲子, 坂田 晴美, 吉田 隆昭, 中村 光作
    2013 年 65 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    子宮内反とは,子宮が内膜面を外方に反転した状態をいう.分娩と関係なく起きるのはまれで,非産褥性子宮内反とともに膀胱破裂が生じた症例の報告は著者が調べた範囲ではない.今回,われわれは子宮内反および膀胱破裂をきたした子宮癌肉腫の1例を経験したので報告する.症例は81歳,2経妊2経産,腹部膨満と意識障害を主訴に当院に救急搬送された.腟鏡診・内診および画像検査で腟内に充填する壊死を伴った腫瘤,腹水貯留と両側軽度水腎症を認めた.骨盤MRI画像から子宮底部から発生した腫瘤による子宮内反が推測された.また血液検査では血清クレアチニンが5.7mg/dlと高値を呈していた.入院後保存的加療にて血清クレアチニンは著明に低下したが,炎症反応は増悪したため開腹すると,子宮底は両側円靭帯と付属器,骨盤漏斗靭帯を引き込みながら内部に陥没していた.また膀胱頂部に3mm径の破裂孔を認めた.膀胱破裂が原因で腹腔内に尿が漏出,血管内に尿毒素(クレアチニン・カリウム)が再吸収され血清クレアチニンが上昇していたと推測された.内反の絞扼が強く子宮整復できなかったため,内反した状態で腹式単純子宮全摘と両側付属器切除ならびに膀胱修復術を施行した.摘出した標本を観察したところ,子宮底部より出血壊死を伴った充実性腫瘤が発生しており,子宮内腔に外向性に発育することで内反を起こしたと考えられた.病理組織診断は子宮癌肉腫であった.術後数週間に腟断端再発したため放射線治療を行ったが,治療中に多発肺転移が出現し,術後4カ月で原病死した.〔産婦の進歩65(1):26-31,2013(平成25年2月)〕
  • 小山 瑠梨子, 大竹 紀子, 須賀 真美, 宮本 和尚, 高岡 亜妃, 青木 卓哉, 今村 裕子, 星野 達二, 北 正人, 今井 幸弘
    2013 年 65 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    卵巣原発カルチノイドは本邦のカルチノイドの約1.3%,卵巣悪性腫瘍全体の0.1%以下と極めてまれな腫瘍であり,その組織型は島状・索状・甲状腺腫性・粘液性の4つに分類される.最近,われわれは短期間に3例の卵巣原発カルチノイドを経験したので文献的考察を踏まえて報告する.症例1:60歳2経産,定期検診で指摘されていた右卵巣腫瘍が増大し,内部に充実成分も認められるようになったため,当院紹介受診となった.MRI画像では右卵巣に直径6cmの単房性嚢胞性病変を認め,内部に脂肪組織を含有し嚢胞壁には強い造影効果を認める壁在結節が認められた.悪性腫瘍の可能性も考慮し開腹両側付属器摘出術が施行され,甲状腺腫性カルチノイド(stage Ia)と診断した.症例2:55歳1経産,検診にてCA19-9の高値,両側卵巣腫大を指摘され当院紹介受診となった.受診時,CA125, CA19-9の高値を認め,MRI画像では両側卵巣に(直径 右6cm 左5cm)単房性嚢胞性病変を認め,いずれも内部には脂肪組織を含有し両側性成熟嚢胞性奇形腫を疑う画像であった.腹腔鏡下両側付属器摘出術が施行され,甲状腺腫性カルチノイド(stage Ia)と診断した.症例3:73歳2経産,下腹部膨満感・排尿困難感を主訴に近医受診,経腹超音波にて骨盤内腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.受診時,CA125,CA19-9,CEAの高値を認め,MRI画像では骨盤内に直径16×14cmの腫瘤を認め,内部には強い造影効果を示す充実性成分と嚢胞性成分が混在しており,悪性腫瘍を疑う所見であった.開腹子宮両側付属器摘出術が施行され,粘液性カルチノイド(stage IIa)と診断した.術後消化管精査により明らかな病変は認められず卵巣原発と診断した.一般的にカルチノイドは予後良好とされるが,一部に再発・転移をきたした症例も報告されており,今後も注意深い経過観察が必要である.〔産婦の進歩65(1):32-39,2013(平成25年2月)〕
  • 野溝 万吏, 馬場 長, 鈴木 彩子, 山西 恵, 山口 綾香, 角井 和代, 松村 謙臣, 吉岡 弓子, 近藤 英治, 佐藤 幸保, 濱西 ...
    2013 年 65 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    子宮びまん性平滑筋腫症は,無数の小さな筋腫結節が粘膜直下の子宮筋層にびまん性に増生する病態を呈し,特殊な発育様式をとる子宮筋腫に分類される.小筋腫は往々にして100個を超えて筋層内および粘膜下に発育し,高度の過多月経や月経痛を生ずるため,手術や薬物治療が必要となる.20~30歳代の女性に好発することが知られており,妊孕性を保った管理法が求められるが,従来の核出術では多数の筋腫を核出することは容易でなく,術後すぐに再発することが多い.今回,われわれは高度貧血をきたす子宮びまん性平滑筋腫症を認め,また妊孕性温存を希望する姉妹の例を経験した.いずれも術前に長期間の偽閉経療法を行った後に,子宮を半割し小筋腫核を可能な限り核出することで,術後長期にわたって過多月経や月経痛を伴うことなく経過観察が可能であり,1例では術後に生児を得た.実母も若年から多発子宮筋腫を発症し,同症であった可能性が高く,同症が家族性に発症することが示唆される.今後の症例集積により病態解明および若年患者の管理法がさらに確立することが期待される.〔産婦の進歩65(1):40-45,2013(平成25年2月)〕
  • 河原 直紀, 藤本 佳克, 丸山 祥代, 山下 健
    2013 年 65 巻 1 号 p. 46-50
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    陰唇癒着症は後天的に左右の陰唇が正中で癒着する外陰部疾患である.低エストロゲン状態を基礎に,炎症や感染,外傷等が加わることにより発症するとされる.主に乳幼児期に発症し,成人期での発症は比較的まれである.今回,閉経後に発症した排尿障害を伴う陰唇癒着症の1症例を経験したので,若干の文献的考察も加えて報告する.症例は82歳.特記すべき既往歴はないが,高齢のため臥床傾向であった.肉眼的血尿と排尿時痛を主訴に当科に受診した.左右の陰唇が正中において癒着し,唯一認めたPin holeより尿や帯下の流出を認めた.また超音波検査にて膀胱巨大憩室と右水腎症を認めた.陰唇癒着症と診断し,局所浸潤麻酔下に剥離を試みたが困難であったため,腰椎麻酔下に剥離術およびHeineke-Mikulicz法を応用した形成術を行った.術後は再癒着防止のためエストロゲン軟膏の局所塗布を2週間行った.術後9カ月の時点で再癒着を認めていない.〔産婦の進歩65(1):46-50,2013(平成25年2月)〕
  • 秦 さおり, 川北 かおり, 小菊 愛, 伊藤 崇博, 奥杉 ひとみ, 近田 恵里, 佐原 裕美子, 竹内 康人, 片山 和明, 橋本 公夫
    2013 年 65 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    子宮筋腫は平滑筋細胞の増殖を呈する良性の腫瘍とされ,転移をきたすことはまれである.しかし,なかには特殊な進展形式をとるものがあり,borderline malignancyとして子宮肉腫との鑑別に苦慮する症例が報告されている.今回われわれは子宮摘出後に肺転移を伴う平滑筋腫の再発を認めた良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma; 以下BML)の1例を経験したので報告する.症例は42歳,1経妊1経産.30歳で子宮筋腫を指摘され,36歳時に前医でGnRHアゴニスト療法実施後子宮動脈塞栓術を受けたが,2年後再増大したため腹式単純子宮全摘術を施行された.その4年後,腹痛を訴えて受診した前医のMRI検査で後腹膜腫瘍を指摘され,多発性肺転移を伴うことが判明したため精査加療目的に当科紹介となった.開腹にて腫瘍を摘出し,平滑筋腫との病理組織診断を得た.血中エストロゲン濃度を下げる目的で両側付属器切除を併せて行ったところ,一時的に肺転移性病変の縮小を認めたが,血中エストロゲン濃度が再上昇し病変も増大してきたため,卵巣の一部残存が疑われ,GnRHアゴニスト療法施行中である.〔産婦の進歩65(1):51-57,2013(平成25年2月)〕
  • 邨田 裕子, 佐藤 加苗, 細野 加奈子, 佐藤 浩, 濱西 正三, 廣瀬 雅哉
    2013 年 65 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    S状結腸癌が子宮へ穿通し,S状結腸子宮体部瘻が形成され,それにより高度な子宮留膿腫が形成された症例を報告する.症例は74歳で約1カ月前に尿閉を主訴に近医を受診し,腹部CTで子宮の著明な腫大を認め当科に紹介となった.前医の腹部CTでは,子宮内腔に液貯留を認め子宮留膿腫が疑われた.経腟超音波では,前方に偏位した子宮頸部の後方に子宮頸管と連続しているとおぼしき子宮腔に大量の膿貯留を認め,子宮留膿腫による尿道圧迫が尿閉の原因と推測された.子宮腔洗浄をしたところ便臭のある粘稠性の高い黄色内容物が多量に排出され尿閉は改善した.大腸子宮瘻を疑い大腸内視鏡検査を行ったが,S状結腸に癌を疑う潰瘍を認めたものの瘻孔は確認できなかった.潰瘍部の生検組織からは腺癌が検出された.大腸内視鏡検査翌日の下腹部MRIで,子宮内に多量のガスを認め,前日の送気操作で大腸から子宮に空気が漏れたものと推定され,またS状結腸癌の部分に子宮壁が接しており穿通が疑われた.以上の所見より,子宮留膿腫はS状結腸癌の浸潤穿通によるS状結腸子宮体部瘻によるものであると診断した.よって,S状結腸摘出術,結腸断端吻合,単純子宮全摘術,および両側付属器切除を行った.手術所見ではS状結腸の結腸ひもの反対側と子宮底部の前壁右側との間に強固な癒着があり,同部位に直径約1.5cmの瘻を認めた.摘出標本では,S状結腸に全周性の腫瘍を認め,潰瘍性の腫瘍の底部に約1.5cmの穿孔を認めた.子宮は筋層全体が水腫様に腫大しており,子宮底部右寄りに約1.5cmの穿孔を認めた.術後病理診断では,S状結腸には全周性の結腸漿膜まで浸潤する腺癌を認めたが,子宮は漿膜のごく一部に異型腺管を認めるのみで,瘻孔周辺の筋層内や子宮内腔には異型腺管は認めなかった.術後経過は良好であった.〔産婦の進歩65(1):58-63,2013(平成25年2月)〕
  • 新納 恵美子, 吉田 昭三, 大井 豪一, 山田 嘉彦, 小林 浩
    2013 年 65 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    サルモネラ菌の感染により卵巣膿瘍を呈した卵巣境界悪性腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は10歳代後半で性交歴のない女性で,2日前より下腹部痛と発熱を自覚するようになったため近医内科を受診し,婦人科疾患が疑われたため当科を受診した.骨盤MRI検査にて下腹部を占拠する多房性嚢胞性腫瘤を認め,症状の経過や理学所見が強いことなどから卵巣膿瘍や卵巣腫瘍茎捻転を疑って緊急で試験開腹術を行ったところ,腫瘤は右卵巣由来の腫瘍であり一部の嚢胞が膿瘍化していた.右付属器摘出術を施行して手術を終え,抗菌薬を投与したところ術後には速やかに解熱した.卵巣の嚢胞内容液の細菌培養にてSalmonella sandiegoが検出され,病理組織診では卵巣膿瘍を伴う粘液性境界悪性嚢胞腺腫であった.後に便中にも同菌が検出され,腸管内のサルモネラ感染より血行性に卵巣の嚢胞内に感染したものと推測された.〔産婦の進歩65(1):64-68,2013(平成25年2月)〕
  • 岡本 敦子, 三好 剛一, 桂木 真司, 根木 玲子, 山中 薫, 梅川 孝, 小林 良成, 堀内 縁, 神谷 千津子, 井出 哲弥, 田吹 ...
    2013 年 65 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    妊娠中の高血圧に対し,本邦で従来使用されてきたヒドララジン,メチルドパの内服薬に加えて,ニフェジピン(妊娠20週以降に限る),ラベタロールの2剤について妊娠中の使用が認可された.今回,加重型妊娠高血圧腎症に対し選択的α2アゴニストとカルシウム拮抗薬を使用して妊娠継続を図ったが,常位胎盤早期剥離を発症し術後腎障害が遷延した症例を経験したので報告する.症例は34歳,0経妊0経産.27歳時より高血圧を指摘されていたが,治療介入がないまま自然妊娠成立し前医で妊婦健診を受けていた.妊娠11週よりメチルドパ内服が開始され,妊娠34週にニフェジピンの内服が追加されたが,さらに血圧は上昇傾向であったため妊娠35週0日に前医に入院となった.妊娠35週2日に胎児機能不全にて当院に母体搬送となり,到着直後に常位胎盤早期剥離を発症して緊急帝王切開分娩となった.母体は分娩後,重症加重型妊娠高血圧腎症による高度の血管内皮障害,血管内脱水から急性腎不全を発症し,腎障害は術後長期間にわたり遷延した.妊娠高血圧症候群に対する降圧療法は対症的治療であり,血管内皮障害の改善には必ずしも役立たず,降圧剤を使用し妊娠を継続することで母体の臓器障害が進行する可能性があると考えられた.〔産婦の進歩65(1):69-74,2013(平成25年2月)〕
  • 伊藤 崇博, 川北 かおり, 小菊 愛, 秦 さおり, 奥杉 ひとみ, 近田 恵里, 佐原 裕美子, 竹内 康人, 片山 和明, 橋本 公夫
    2013 年 65 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル 認証あり
    子宮内に胎児と奇胎が併存する場合,多くは部分胞状奇胎であるが,正常胎児と胞状奇胎が併存する胎児共存奇胎の可能性もある.胎児共存奇胎であれば児の生存も期待できるが,生児を得ることができるのは半数以下とされる.今回われわれは,生児を得られた胎児共存奇胎の1例を経験したので報告する.症例は30歳,排卵誘発周期に妊娠成立した.経腟超音波検査にて正常絨毛と奇胎を別々に認め,初診時(妊娠9週)の血中hCG値は349,619 mIU/mlと高値であった.羊水染色体検査は46XXの正常核型であり,血中hCG値も妊娠13週以降は低下傾向にあった.早期より切迫流早産徴候を認め,陣痛抑制困難のため妊娠33週での帝王切開分娩となったが,児の予後は良好であった.奇胎娩出後,免疫組織化学的検査により正常胎児と全胞状奇胎との共存であることが確認された.血中hCG値は順調に低下しており,術後34週を経過したが続発性疾患の発症は認めていない.〔産婦の進歩65(1):75-82,2013(平成25年2月)〕
  • 梅田 杏奈, 串本 卓哉, 福井 薫, 小野 良子, 数見 久美子, 宮西 加寿也, 朴 康誠, 山本 敏也
    2013 年 65 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル 認証あり
    子宮穿孔は比較的まれな疾患である.原因の多くは妊娠中や子宮に関する手術後,子宮留膿症などの良性疾患であり,子宮頸癌を合併した症例の報告はこれまでに6例のみである.今回われわれは,子宮留膿症からの子宮穿孔により急性汎発性腹膜炎を発症した子宮頸癌の症例を経験したので報告する.症例は41歳,未経妊.数カ月前より不正性器出血を自覚していた.徐々に下腹部痛が出現,発熱を認めたため近医内科受診し,補液,解熱剤投与を受けるも症状軽快せず,2日後に近医産婦人科を受診し,当院紹介受診となった.悪臭を伴う血性分泌物を認め,子宮頸部に腫瘤性病変を認めた.腹膜刺激症状あり,CRP 24.1mg/dlと炎症所見高度にて急性腹膜炎,子宮頸癌疑いで緊急入院となった.抗生剤投与を行うも炎症所見改善なく,MRIにて子宮穿孔を認めたため入院3日目に緊急開腹手術となった.腹腔内に膿の貯留を認め,子宮後壁には径2mm大の穿孔を認めた.腹腔内洗浄およびドレナージ術,準広汎子宮全摘術,両側付属器摘出術を施行,右外腸骨リンパ節の腫大を認めたためこれも摘出した.術後病理診断は子宮頸部粘液性腺癌内頸部型,穿孔部分に癌細胞の浸潤は認めなかったが,右外腸骨リンパ節には微小転移を認めた.術後診断は子宮頸部腺癌IB1期とした.術後炎症所見の改善を認めず,CTにて網嚢孔に膿瘍形成を認めたため,再開腹のうえ腹腔内洗浄およびドレナージ術を施行し,術後抗生剤投与により徐々に改善認めるも,炎症所見の陰性化まで2カ月を要した.その後,子宮頸癌に対して術後補助療法として化学療法を施行,現在も治療中である.〔産婦の進歩65(1): 83-89,2013(平成25年2月)〕
  • 福井 薫, 山口 博文, 串本 卓哉, 梅田 杏奈, 数見 久美子, 宮西 加寿也, 朴 康誠, 山本 敏也
    2013 年 65 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎不全維持透析中の卵巣癌患者に対し,パクリタキセルとカルボプラチン併用化学療法を行い,緩解を得た症例を経験したので報告する.症例は73歳,1回経妊,1回経産.61歳より慢性糸球体腎炎にて血液透析を施行している.下腹部痛の精査の結果,上行結腸~S状結腸,右付属器および肝臓に腫瘍を認め,CA125高値であったため,外科とともに開腹術施行.術後診断は卵巣癌IV期で,術後化学療法としてパクリタキセル・カルボプラチン療法を施行した.パクリタキセルは175mg/m2,カルボプラチンはGFR=0でCalvertの計算式を用いて125mg/body投与した.パクリタキセルを180分で点滴静注,カルボプラチンを30分で点滴静注し,その16時間後から血液透析を4時間施行した.カルボプラチン投与後より経時的に血中濃度を測定した結果,カルボプラチンの血液動態はfreeプラチナでCmax 8.18μg/ml,AUC 5.3mg・min/mlであった.治療開始後速やかにCA125の低下を認め,CT上も腫瘍病変の縮小が確認された.計12コースの化学療法を施行し,副作用としてはGrade3~4の白血球減少,Grade2の血小板減少を認めた.今後透析患者に化学療法を施行する機会が増えると予想されるが,透析患者にもパクリタキセルとカルボプラチンの併用療法は安全に施行できることが示された.〔産婦の進歩65(1):90-94,2013(平成25年2月)〕
  • 橋本 佳奈, 山村 省吾, 冨田 裕之, 泉 有希子, 川村 洋介, 野々垣 比路史
    2013 年 65 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/03/29
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    新生児における頭蓋骨陥没骨折の発生はまれであるが,その大部分は妊娠・分娩中の外傷に起因し,外傷既往のない先天性頭蓋骨陥没骨折の発生は4000~10,000分娩と極めてまれである.今回われわれは,受傷機転の明らかでない妊娠および分娩経過を経て出生した児に,右前頭骨陥没骨折を認めた1症例を経験した.26歳,1経産,身長149cmと低身長であるが狭骨盤や扁平仙骨は認めない.妊娠中の外傷既往はなく,妊娠39週5日に自然陣痛発来し,11時間31分の分娩時間を経て自然経腟分娩に至った.吸引・鉗子分娩やクリステレル圧出は行っていない.新生児は2640gの女児,Apgar scoreは1分値9点/5分値10点であった.出生時,右前頭部に3×4.5cm大の陥没を認め,頭部単純X線,CTを施行した.右冠状縫合に沿って右前頭骨の陥没を認めたが,頭蓋内病変は伴わず,明らかな神経学的症状も認めなかった.入院中,頭蓋内圧上昇や神経学的症状は出現せず.退院後も数週間の経過観察を行ったが,陥没骨折の改善傾向を認めなかったため,日齢28に頭蓋形成術を施行し,術後経過は良好である.非外傷性の新生児頭蓋骨陥没骨折の要因は,母体因子として子宮筋腫,子宮奇形,狭骨盤,および正常骨盤における第5腰椎,岬角,坐骨棘など,胎児因子として患児自身や多胎における他児の身体による圧迫などが挙げられる.しかし,出生前に頭蓋骨陥没骨折を予測,診断することは困難で,出生時に初めて診断されることがほとんどである.頭蓋内病変や神経学的合併症の多い外傷性陥没骨折と異なり,非外傷性の場合は出生時に合併症を伴わないことが多く,また自然治癒例もあり,その長期的予後は良好である.よって出生時に合併症を認めない非外傷性陥没骨折においては,まず経過観察を選択し,その間に外科的介入の必要性や時期,手法を検討することが可能であると考える.〔産婦の進歩65(1):95-99,2013(平成25年2月)〕
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