産婦人科の進歩
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65 巻, 3 号
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研究
原著
  • 三杦 卓也, 西尾 順子, 竹林 忠洋, 梶谷 耕二, 中川 佳代子, 寺前 雅大
    2013 年 65 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    わが国では児の出生体重が年々減少傾向にある.その一因として厳格すぎる栄養指導や妊婦自身による栄養制限が考えられる.今回当院で出産した妊婦の妊娠中の体重増加,妊娠前の体型に対して周産期予後に及ぼす影響を検討した.5001人を検討対象とし,妊娠前のBMIよりやせ群(n=937),標準群(n=3536),1度肥満群(n=391),2度肥満群(n=137)に分類した.妊娠中の適正な体重増加をやせ群で9kg以上12kg未満,標準群を7kg以上12kg未満,肥満群を5kg以上7kg未満とした.在胎期間別出生体重標準値を基に児の在胎日数と出生体重から標準偏差値を算出し,児の発育度の指標とした.標準偏差値+1.5SD以上をheavy for date(HFD),-1.5SD以下をlight for date(LFD)とし,妊娠前の体型別に体重増加とLFD,HFD,pregnancy induced hypertension(PIH),緊急帝王切開術のリスクについて検討した.LFDの頻度は全体で6.3%であり,やせ群と1度肥満群で7.4%と最も高かった.体重増加が適正量よりも少ないとLFDのリスクが有意に上昇した(OR2.32 95%CI 1.79-3.01)が,体型によるリスクは認められなかった.HFDのリスクは過剰な体重増加によるリスク(OR2.14 95%CI 1.65-2.78)と妊娠前の体型によるリスク(1度肥満群 OR2.05 95%CI 1.42-2.97,2度肥満群 OR5.01 95%CI 3.06-8.20)が同等に認められた.PIHのリスクは体重増加によるリスクに変化を認めなかったが,肥満群では顕著にリスクの増大を認めた.緊急帝王切開術のリスクは体重増加が過剰であればリスクは増大した(OR1.39 95%CI 1.01-1.90)が,PIHと同様に妊娠前の体型によるリスク増大の方が顕著であった.これらのことから,妊娠中の体重増加は妊娠前の体型をもとに推奨体重増加量の範囲で適正に指導することが重要であるが,PIHについては体重増加のみでリスクを制御することは困難で,他の要因が関連している可能性がある.〔産婦の進歩65(3):243‐250,2013(平成25年8月)〕
  • 大井 豪一, 原田 直哉, 中村 徹, 堀江 清繁, 井上 芳樹, 高井 一郎, 小林 浩, 赤崎 正佳
    2013 年 65 巻 3 号 p. 251-260
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    奈良県内のすべての産婦人科医療施設に対し,2007年から2011年までの5年間におけるHTLV-1スクリーニングに関する調査を無記名質問紙法にて実施した.施設回収率は96.1%(73/76)であり,妊婦健診実施施設に限定すると97.8%(44/45)であった.その結果,HTLV-1一次スクリーニング陽性率は0.17%(93/54, 589),二次検査陽性率は60.3%(35/58)であった.新たにキャリアであると診断された症例(新HTLV-1キャリア)35名,すでにキャリアであると診断されていた症例(既知HTLV-1キャリア)13名と未確認HTLV-1キャリア(一次スクリーニング陽性で二次検査が未施行の22名と二次検査が判定保留でPCR法を未施行の4名)26名の合計74名を次世代HTLV-1継代high risk groupとし,この群を対象に乳汁栄養法,妊娠期間中のカウンセリングの有無,母子フォローアップの有無や新生児感染の有無に関して解析した.乳汁栄養法は,推奨3方法(完全人工栄養,短期母乳,凍結母乳)を92%(68/74)の症例において,また確定HTLV-1キャリア(新+既知)に限定すると98%(47/48)の症例で実施されていた.確定HTLV-1キャリア(新+既知)と未確認キャリアの2群間に対し,乳汁栄養法,カウンセリング施行率と母子フォローアップ率に差があるかをχ2検定にて解析した結果,すべてに有意差(p=0.0047,p=0.0005,p=0.0009)を認めた.この有意差を認めた要因は,乳汁栄養法では未確認HTLV-1キャリアに凍結母乳46%(12/26)が多いためであった.一方,カウンセリング施行率と母子フォローアップ率では,確定HTLV-1キャリアと未確認HTLV-1キャリアのそれぞれに差(48% vs. 76%,48% vs. 12%;確定 vs. 未確認)を認めたためであった.今回のアンケート調査で次の反省点が明らかとなった.一次スクリーニング陽性妊婦の中で二次検査やPCR法を未施行である妊婦がそれぞれ28%(26/93),50%(4/8)と多く存在したこと,HTLV-1キャリア妊婦に対するカウンセリング率が48%(23/48)と低率であること,HTLV-1キャリア妊婦への説明時に不備を認めたこと,次世代HTLV-1継代high risk groupにおいて約2/3の母子症例が分娩後のフォローアップとして次施設へ紹介されていなかったこと,新生児HTLV-1感染症の有無に関しては,分娩を扱った産婦人科医がほぼその結果を知らなかったことであった.〔産婦の進歩65(3):251‐260,2013(平成25年8月)〕
症例報告
  • 林 永修, 桂木 真司, 長田 奈津子, 田畑 知沙, 小川 晴幾, 當間 圭一郎, 田中 順子, 山枡 誠一
    2013 年 65 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    抗てんかん薬(AED)が,胎児に対する催奇形性のみならず,知能や行動への長期影響を有することが明らかにされ,てんかん合併妊婦に対して可能な限り低リスク・低用量のAED処方が求められている.一方,治療薬物モニタリングは,個々の症例における至適投与量を設定するうえで限界がある.母児のリスクを最小限にするためには,妊娠前に臨床経過に基づいた最適の投与量が設定されているべきであるが,非計画的な妊娠に遭遇することがしばしばある.今回われわれは,最適の投与量が設定されていない状態で妊娠に至った特発性全般てんかん合併3症例を経験した.胎児リスクを低減すべく,発作抑制の経過,血中濃度,および脳波所見から総合的に判断して,AED投与を必要最小限にするようなてんかん合併妊娠の管理を試みた.2症例においては,妊娠初期に多剤から単剤療法に変更すること,あるいは多剤療法下で高用量の薬剤を減量することにより,胎児リスクを低減した.妊娠経過や児の短期予後も正常であった.1症例においては不正な服用状態のうえに薬物減量が重なって,妊娠中に発作が発生した.このような管理のためには,てんかん専門医とのより緊密な連携,患者およびその家族に対する十分な説明が必要であると考えられた.〔産婦の進歩 65(3):261‐267,2013(平成25年8月)〕
  • 吉田 彩, 土井田 瞳, 角 玄一郎, 中村 友美, 杉本 久秀, 安田 勝彦
    2013 年 65 巻 3 号 p. 268-276
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    今回,われわれは女性生殖器奇形のなかでも非常にまれなHerlyn-Werner-Wunderlich (HWW) syndromeを経験したので報告する.12歳の少女,月経時に下腹部痛と尿閉を訴え近医を受診したところ骨盤内嚢腫ならびに傍腟嚢腫と診断され,精査・加療目的で当科に紹介となった.経腹ならびに経腟超音波検査では膀胱下方に巨大な嚢腫と正常大の子宮を認めた.傍腟嚢腫を穿刺し血性粘液を吸引除去したところ症状は消失した.その1週間後に骨盤部MRIを施行したところ重複子宮と重複腟を認めた.重複腟は恥骨中央の高さで90度右回旋し,右腟は腹側(尿道直下)に左腟は背側(右腟直下)に移動していた.腎盂尿管造影ならびに超音波を施行したところ右腎臓ならびに右尿管を認めなかった.以上の所見ならびに経過から90度回旋した重複腟をもつHWW症候群と術前に診断することができた.その後,腟中隔切除術を施行し閉塞されていた右腟腔を開口したところ小さな右子宮口を確認できた.術後経過は順調で以後月経時に下腹部痛や尿閉を起こすことはなくなった.思春期の少女が月経時に下腹部痛や尿閉を訴え,傍腟嚢腫と骨盤内嚢腫を伴う場合,HWW症候群のような女性生殖器奇形が存在することを念頭に置くべきである.適切な治療には適切な診断が必要であり,その診断には超音波検査,腎盂造影,MRIなどの検査法が有効である.そのなかでも穿刺吸引前後の超音波検査は,HWW症候群の診断に重要な役割を担い,MRIは確定診断に最も有効である.〔産婦の進歩65(3):268‐276,2013(平成25年8月)〕
  • 浮田 真吾, 日高 庸博, 笹原 淳, 石井 桂介, 田附 裕子, 窪田 昭男, 光田 信明
    2013 年 65 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    梨状窩瘻は第3-4鰓遺残によると推察される先天異常で,瘻孔を作り頸部に嚢胞を形成する疾患である.幼児期や小児期以降に有痛性頸部腫瘤や発熱などの臨床症状を呈して発見されることが多いが,本疾患の胎児診断例の報告は極めて少ない.今回われわれは,嚢胞内容の細胞診から出生前に先天性梨状窩瘻の推定診断に至った胎児頸部嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は29歳,1経妊0経産.妊娠初期から当院で妊婦健診を行い,妊娠28週4日に胎児頸部の3cm大の嚢胞性腫瘤と羊水ポケット9cmの羊水過多を認めた.妊娠30週5日のMRIでは,上咽頭背側から左頸部にかけて25mm×44mm×36mm大のT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号の単房性腫瘤を認め,咽喉頭レベルで気道の圧排所見を伴っていた.リンパ管腫を疑い,生後の確実な気道確保と経腟分娩の選択を目的として妊娠35週6日に胎児頸部嚢胞穿刺を行った.26mlの内溶液を穿刺吸引したところ嚢胞は縮小し,穿刺内容液の細胞診ではリンパ球の血球成分に乏しく,扁平上皮細胞を認めたため,先天性梨状窩瘻が考えられた.妊娠37週4日に誘発分娩を行い,同日経腟分娩に至った.児は出生体重2088gの女児でApgar scoreは8/9点であった.生後のCTで嚢胞内に空気を認めていたことから気道系や食道系と交通性のある嚢胞が考えられた.日齢1より哺乳不良と嚢胞の増大を認めたため,日齢12に根治手術を施行され,梨状窩瘻の診断確定に至った.胎児の頸部に単房性嚢胞を認めた場合には先天性梨状窩瘻を鑑別に挙げる必要がある.気管の圧排が顕著な場合にはEXIT(Ex utero intrapartum treatment)も考慮されるが,今回の症例では分娩前に嚢胞を穿刺吸引することで安全に経腟分娩が選択しえた.〔産婦の進歩65(3):277‐282,2013(平成25年8月)〕
  • 宮本 泰斗, 宮本 和尚, 高岡 亜妃, 星野 達二, 山下 大祐, 西尾 真理, 今井 幸弘, 北 正人
    2013 年 65 巻 3 号 p. 283-289
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    Meigs/pseudo-Meigs症候群とは,卵巣腫瘍(もしくはそれに類したもの)に胸,腹水を伴い,腫瘍摘出によりそれらが消失するものをいい,その臨床像から術前に悪性腫瘍との鑑別が問題となる.一方で卵巣甲状腺腫(struma ovarii)はまれな胚細胞腫瘍であるが,15%に腹水を合併し,またその1/3~1/4がpseudo-Meigs症候群を呈するといわれている.今回われわれはpseudo-Meigs症候群を呈し,術前に悪性が疑われた卵巣甲状腺腫の1例を経験した.症例は40歳女性.未経妊.慢性骨髄性白血病の治療により24歳で閉経した.腹部膨満感を主訴に前医受診し,精査目的に当科紹介となった.骨盤部MRIにて強く造影される充実部と嚢胞部が混在する14cm大の腫瘤と,胸腹部造影CTにて胸,腹水と大網の濃度上昇を認め,卵巣癌と癌性腹膜炎の診断で手術を施行した.14cmに腫大した左卵巣と11 lの淡黄色腹水を認めたが明らかな播種巣はなく,左付属器切除を行った.術中迅速病理検査では卵巣甲状腺腫で良性との診断であったため,単純子宮全摘と右付属器切除術を追加した.術後胸,腹水の再貯留はなく経過良好である.本症例のように,pseudo-Meigs症候群を呈する卵巣甲状腺腫は悪性腫瘍と紛らわしく,術前に診断することは困難であることが多いが,濃縮した甲状腺コロイドや皮様嚢腫の合併などが卵巣甲状腺腫の特徴的な画像所見とされ,今回の症例でも後方視的な検討で指摘可能であった.またこれまでの文献報告例では,術前に悪性腫瘍が疑われていても術中迅速病理検査にて良性の卵巣甲状腺腫と診断されれば,不必要なリンパ節郭清などは回避され,付属器切除術で胸・腹水が消失していた.以上から,pseudo-Meigs症候群を呈する卵巣甲状腺腫については,術前画像の詳細な検討と術中迅速病理検査が,診断および過不足のない手術を行うために重要であると考える.〔産婦の進歩65(3):283‐289,2013(平成25年8月)〕
  • 月岡 美穂, 橘 大介, 山田 詩緒里, 中野 朱美, 寺田 裕之, 斉藤 三佳, 古山 将康, 石河 修
    2013 年 65 巻 3 号 p. 290-294
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    鰓弓症候群は,第一第二鰓弓由来組織の形成不全を呈する先天異常で,小耳症・下顎形成不全を主徴とする疾患である.今回,妊娠後期に羊水過多を認め,出生後に鰓弓症候群と診断された症例を経験したので報告する.39歳,初産婦.既往歴に特記すべきものなし.妊娠初期より当科にて妊娠管理を行っていた.妊娠35週より羊水過多を認めたが,胎児消化器系疾患やその他の異常を示唆する所見は認めなかった.母体の下腿浮腫増強を認めたため,40週0日入院,この時点のAFIは25.1cmであった.40週4日,胎児心拍数図にて遅発一過性徐脈の出現を認め,胎児機能不全の適応で全身麻酔下に緊急帝王切開術を施行し,2602gの女児(Apgar score1分後1点,5分後6点,臍帯動脈血液ガスpH7.168,BE-9.6)を娩出,新生児仮死を認めたため人工呼吸管理となった.児は,両側巨口症,高口蓋,耳介低位,小下顎症,両側副耳頸耳を認め,鰓弓症候群と診断されたが,呼吸状態は速やかに改善し生後1日目に抜管となった.両側巨口症のため経口哺乳が困難であり,出生後3日目までは経管栄養を要し,その後はシリンジ注入による哺乳管理を行った.出生後3カ月時に形成外科にて両側巨口症,両側副耳頸耳の手術が行われた.現在,生後1年4カ月で身体発育・精神発達はともに良好である.鰓弓症候群症例では,4割近くに嚥下障害による羊水過多を認めるという報告もあり,原因不明の羊水過多を認めた場合,本疾患も念頭におき口腔およびその周囲の形態的異常の有無を観察する必要があることが示唆された.〔産婦の進歩65(3):290‐294,2013(平成25年8月)〕
  • 脇本 裕, 澤井 英明, 坂 佳世, 和田 龍, 原田 佳世子, 武信 尚史, 田中 宏幸, 柴原 浩章
    2013 年 65 巻 3 号 p. 295-301
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル 認証あり
    血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura;TTP)は,細血管障害性溶血性貧血,血小板減少,腎機能障害,動揺性精神神経症状,発熱の5症候からなる重篤な全身性疾患である.TTP患者の妊娠は非常にまれで,妊娠管理は母児ともに困難とされている.今回われわれは先天性TTP患者が妊娠し,分娩まで管理を行った例を経験したので報告する.症例は32歳の初産婦で,幼少期にTTPと診断され治療されてきた.今回は自然妊娠したため当科を受診した.TTPの増悪の可能性等を説明したが妊娠継続の意思が強く,当科で管理を行うこととなった.妊娠20週ごろから胎児発育不全傾向を認め,血圧も上昇傾向で収縮期血圧が180mmHg 以上となり妊娠23週5日に管理入院とした.入院安静のみでは十分な降圧が得られず,ヒドララジンの点滴投与を開始した.妊娠24週2日に再び収縮期血圧が180mmHg 以上と上昇し,Caブロッカーの投与を行ったが降圧が不十分であり,超音波検査で臍帯血流の途絶を認めたため,緊急帝王切開術を行った.児は412gの男児でApgar score4/6で出血量は400gであった.母体は新鮮凍結血漿(FFP)やCaブロッカーを中心とした降圧剤の投与により状態は改善し,手術後24日目に退院となった.児は壊死性腸炎等を併発し,生後235日目で死亡した.〔産婦の進歩65(3):295‐301,2013(平成25年8月)〕
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