産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
66 巻, 2 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
研究
原著
  • 山口 昌美, 薮田 真紀, 貴志 洋平, 谷口 文章, 杉並 留美子, 杉並 洋
    2014 年 66 巻 2 号 p. 71-77
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    腹腔鏡下子宮筋腫摘出術(LM)における合併症の発生状況を調査し,さらにLM手術時間に関連する諸因子を分析することを目的に本研究を行った. 研究対象は高の原中央病院産婦人科にて2010年1月から2012年3月までに実施された全LM症例(n=397)で,手術時間203分以上のものを長時間手術,それ未満を短時間手術と定義した.合併症は短時間手術群で33/336(9.8%),長時間手術群で30/61(49.2%)に認められた(p<0.001).合併症のほとんどは軽微なものであり,追加的処置を要したのは4例(1.0%)のみであった.手術時間を従属変数とした前進ステップワイズ回帰分析を行ったところ,患者基本情報として体重が,手術情報として術中出血量,摘出筋腫個数および重量が,術後情報として術後1日目CRP値および術後入院期間がそれぞれ貢献因子として抽出された.各貢献因子は手術時間との間に正の相関を示した.長時間手術は周術期合併症と関連する.摘出筋腫個数および摘出筋腫重量の増加は手術時間および術中出血量の増加と関連する.唯一の可変因子は体重であり,症例によっては術前の体重コントロールが望まれる.〔産婦の進歩66(2):71-77,2014(平成26年5月)〕
  • ─とくに放射線単独療法と同時化学放射線療法の比較─
    中村 春樹, 川口 龍二, 春田 祥治, 金山 清二, 吉田 昭三, 古川 直人, 大井 豪一, 小林 浩
    2014 年 66 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    [目的]局所進行子宮頸癌に対し,同時化学放射線療法(CCRT)が放射線単独療法(RT)に比べ予後改善効果を認めるかどうかについて,他の予後因子も含めて検証をすること.[方法]1996年から2007年まで主治療として放射線治療を行った75歳以下の子宮頸部扁平上皮癌III~IVA期の70例を対象とした.そのうち2000年から2007年までにCCRTを行った34例に対し,1996年から1999年までにRT単独を行った36例をhistorical controlとして後ろ向きに比較検討を行った.[成績]70例全体の年齢中央値は66歳(範囲46~75),観察期間中央値は58.7カ月(範囲11.3~204)であった.治療前ヘモグロビンの中央値12.2g/dlで,腫瘍径の中央値は46.5mmであった.また子宮傍結合織への浸潤例は65例(92.9%)で,骨盤内リンパ節転移は22例(31.4%)に認めた.5年生存率はCCRT群(76.1%)がRT群(44.1%)に比べ有意に良好であった(p=0.017).単変量解析ではCCRT以外に治療前ヘモグロビン値,腫瘍径,骨盤内リンパ節転移が予後因子となった.これらの因子のうち多変量解析では,CCRT,治療前ヘモグロビン値および骨盤内リンパ節転移が独立した予後因子となった.再発例はCCRT群で13例(照射野内10例,外3例),RT群で23例(照射野内15例,外8例)であったが,両群間で照射野内外における再発率に差は認めなかった.[結論]後ろ向きの検討ではあるが,局所進行子宮頸癌に対して,CCRTはRTに比べ予後改善効果を認めることが確認された.また治療前ヘモグロビン値および骨盤内リンパ節転移が予後因子であることが明らかとなった.〔産婦の進歩66(2):78-84,2014(平成26年5月)〕
臨床研究
  • 中木 絢子, 水津 愛, 佐竹 由美子, 丸山 俊輔, 三瀬 裕子, 金 共子, 小林 久人, 佐藤 幸保
    2014 年 66 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    骨盤内経カテーテル動脈塞栓術(骨盤内TAE)は,産科危機的出血のコントロールや子宮筋腫の非観血的治療などさまざまな目的で施行されている.骨盤内TAEは子宮温存が可能であるため,挙児希望のある生殖年齢女性に対して施行されることも多い.子宮への側副血行路が発達している妊娠・産褥期に行った骨盤内TAEでは,その後の妊孕性に悪影響を与えないとする報告が多いが,それ以外の時期に行った骨盤内TAEでは,子宮内膜発育不全や不妊を続発する可能性が危惧されている.今回,過去4年間に当科で経験した生殖年齢女性に対する骨盤内TAE症例11例について,その後の妊孕性(月経再開の有無,過少月経の有無,妊娠の有無)について検討した.7例は子宮への側副血行路が発達していると考えられる妊娠・産褥期に骨盤内TAEが行われていた.残り4例は側副血行路が発達していないと考えられる月経期あるいは妊娠終了より1カ月以上経過した時期に行われていたが,いずれも塞栓前と同等の月経が再開し,1例は観察期間内に自然妊娠に至っていた.今回の検討では症例数が少なく,また多くの因子が関与するため断定的な結論を導き出すことはできなかったが,骨盤内TAEは子宮への側副血行路があまり発達していない産褥期以外の時期においても,その後の妊孕性に悪影響をもたらすことなく施行できる可能性が示唆された.〔産婦の進歩66(2):85-92,2014(平成26年5月)〕
症例報告
  • 臼木 彩, 安 炳九, 東田 太郎, 高原 秀典, 金田 憲熙, 常盤 洋一, 神澤 真紀, 横山 正
    2014 年 66 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳の女性で月経時に一致する左鼠径部の疼痛・膨隆を主訴に,当院を受診した.骨盤単純CT検査では,左鼠径部に径3cm大のspace occupying lesion (SOL)を認めた.SOLは腹腔内臓器と交通は認めないこと,さらに疼痛・腫大の発症時期が月経周期に一致することから子宮内膜症を伴ったNuck管水腫と術前推察し,手術を施行した.鼠径管を開放したところ,暗赤色の嚢胞性腫瘤を認め,さらに線維性結合織により内鼠径輪から腹膜へとつながっていた.Nuck管水腫を切除した後,メッシュ・プラグ法を施行した.病理組織診断検査の結果,術前の推察どおり子宮内膜症を伴ったNuck管水腫であることが確認できた.月経随伴症状を伴う鼠径部の腫瘤では,異所性に子宮内膜組織が存在することも考慮に入れた管理が必要であると考えた.〔産婦の進歩66(2):93-98,2014(平成26年5月)〕
  • 熊谷 広治, 坂井 昌弘, 内野 義彦, 藤井 和則, 前田 隆義
    2014 年 66 巻 2 号 p. 99-103
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    卵管妊娠と同時に認められる対側卵管留水症には,自然妊娠を目指して卵管開口術が,生殖補助医療(assisted reproductive technology;ART)を計画して卵管摘出術が行われてきた.本邦では産婦人科内視鏡手術ガイドライン2013年版と産婦人科診療ガイドライン2014年版で初めてARTを前提とした不妊患者に対する卵管摘出術や近位卵管閉塞術の実施が推奨された.当然ながら,卵管妊娠手術の術前には,患側卵管への対応に重点を置いて説明し同意を得る.しかし挙児希望例では,加えて対側卵管への配慮も重要である.今回,術式に苦慮した対側卵管留水症を伴う卵管妊娠の1例を経験したので報告する.患者は未経妊の34歳8カ月の女性で,妊娠6週の右卵管妊娠の診断で腹腔鏡下右卵管摘出術を施行した.その際に左卵管に高度の留水症を認めARTを計画したが,対側卵管摘出術の可能性を術前に本人・夫に説明していなかったので左卵管をそのまま温存した.35歳3カ月で1個の凍結胚盤胞を融解移植したが妊娠は成立しなかった.以上より,患者に挙児希望がある場合は,卵管妊娠の術前に対側卵管への対応についても説明し同意を得ておくべきである.〔産婦の進歩66(2):99-103,2014(平成26年5月)〕
  • 宮本 泰斗, 今村 裕子, 青木 卓哉, 星野 達二, 玉木 良高, 吉村 元, 今井 幸弘, 北 正人
    2014 年 66 巻 2 号 p. 104-113
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    最初に症候性の血栓症を生じ,その後の全身検索にて悪性腫瘍が発見されるTrousseau’s syndromeは,悪性腫瘍による凝固亢進状態からさまざまな血栓症が惹起される病態である.今回われわれは脳梗塞の発症を契機に発見された卵巣癌の2例を経験した.症例1:57歳未経産,自宅で倒れているところを発見され当院へ救急搬送された.全失語と右片麻痺を認め,頭部MRIにて多発脳梗塞像を認めた.骨盤部MRIにて充実部分を含んだ巨大な多房性腫瘍を認め,その他精査にて明らかな脳梗塞の原因を認めなかった.卵巣癌により引き起こされた脳梗塞と診断しヘパリン持続点滴を開始,入院6日目に単純子宮全摘,両側付属器摘出,大網部分切除術を施行し,左卵巣明細胞腺癌(stage Ia,pT1aNXM0)と診断した.術後13カ月経過した現在,失語,麻痺は改善傾向にあり,脳梗塞,卵巣癌の再発はない.症例2:78歳2経産,2週間前からの急激な認知機能低下を認め神経内科に入院中,PET-CTにて骨盤内腫瘤を認め当科紹介となった.頭部MRIにて多発梗塞像を認め,骨盤部MRIでは10cm大の充実性の骨盤内腫瘤を認めた.全身の血栓検索にて明らかな脳梗塞の原因を認めず,卵巣癌により引き起こされた脳梗塞と診断し,ヘパリン持続点滴を開始した.入院7日目に単純子宮全摘,両側付属器摘出,大網部分切除術を施行し,左卵巣明細胞腺癌(stage Ic,pT1cNXM0)と診断した.術後8カ月経過した現在,認知機能は改善し脳梗塞,卵巣癌の再発はない.自験例のように脳梗塞発症から発見された卵巣癌の報告は散見され,その多くで卵巣癌の治療が遅れる傾向にあった.I期のものは手術にて予後良好だが,III期以上のものは全身状態の悪化が急激できわめて予後不良であった.進行例では不完全な手術にて術後も血栓症を繰り返しやすく,また全身管理に難渋し卵巣癌の治療が遅延・不十分となりやすいためと考えられた.脳梗塞発症を契機に発見される卵巣癌に対しては,可及的速やかに発見し,機を逸さずに手術を行うことが重要であると考えられる.〔産婦の進歩66(2):104-113,2014(平成26年5月)〕
  • 高倉 賢人, 濱西 潤三, 馬場 長, 小林 弘尚, 吉岡 弓子, 松村 謙臣, 小西 郁生
    2014 年 66 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    腟上皮内腫瘍grade3(vaginal intraepithelial neoplasia, grade 3 ; 以下VAIN3)は病変を根治することが難しく,腟完全切除や閉鎖を要するため,最終的に排尿障害や性交能喪失に至ることは少なくない.一方で,悪性腫瘍手術において,根治性だけでなく,術後QOL低下への配慮を求められることが多くなってきた.今回われわれは,子宮頸癌術後の難治性VAIN3に対して腟切除を行うも,機能的腟壁再生が可能であった1例を経験したので報告する.症例は47歳未経妊.子宮頸癌Ia1期およびVAIN3に対し,単純子宮全摘出術,両側付属器切除術,腟壁CO2レーザー蒸散術を施行,1年7カ月後にVAIN3再発を認めた.腟壁CO2レーザー蒸散術を施行したが,その2カ月後に再度VAIN3を認めたため腟切除術を施行した.腟切除創面は被覆せず,術後にエストラジオールゲル製剤の塗布を3カ月間続けたところ腟上皮の再生を認め,機能的腟の温存が得られた.本治療法は比較的簡便かつ低侵襲であり,間質浸潤のないVAIN症例には根治および術後QOL保持の両面で有用である.〔産婦の進歩66(2): 114-118,2014 (平成26年5月)〕
  • 森本 真晴, 原田 佳世子, 脇本 裕, 和田 龍, 武信 尚史, 田中 宏幸, 澤井 英明, 柴原 浩章
    2014 年 66 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    間葉性異形成胎盤(placental mesenchymal dysplasia;PMD)は胎盤の嚢胞状変化を呈するまれな疾患であり,しばしば部分奇胎や胎児共存奇胎との鑑別が必要となる.合併症に胎児発育不全(FGR)やBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)などがある.今回胎児共存奇胎と鑑別が必要であったPMDの1例を経験したので報告する.症例は妊娠15週より胎盤が一部胞状化し,妊娠20週に胎盤に多発した小嚢胞とFGRを認めたため妊娠21週に当院へ紹介となった.尿中hCG値は35814IU/lで週数相当であった.MRI所見では胎盤は子宮腔内の約半分を占め,嚢胞成分と混在していたためPMDの可能性が示唆された.妊娠32週に胎児発育停止と胎児機能不全のため緊急帝王切開を行った.胎盤は1414gで多数の小嚢胞を認め,その組織学的所見からPMDと診断した.児は貧血および血小板減少を認めたが,明らかな外表奇形はなかった.〔産婦の進歩66(2):119-123,2014 (平成26年5月)〕
  • 山田 詩緒里, 橘 大介, 和田 夏子, 田中 さやか, 依岡 寛和, 西川 正博, 古山 将康
    2014 年 66 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    通常,絨毛膜と羊膜は妊娠14~16週で癒合するとされるが,それ以降も癒合しない状態が持続するchorioamniotic membrane separation(CMS)は,羊水穿刺や胎児治療などの侵襲的処置を施行した後に認めることが多いとされている.今回われわれは侵襲的処置を経ることなく自然に発症したCMSの1例と羊水検査後に発症したCMSの1例を経験し,両症例とも経腟分娩にて生児を得たので報告する.症例1は37歳の経産婦である.羊水検査歴なく妊娠24週に超音波検査にてCMSが疑われ当科受診し,超音波検査上,臍帯胎盤付着部付近に一塊となって浮遊する膜様構造物を認めたが,胎児奇形や羊水量異常を認めなかったため外来管理を継続した.妊娠36週4日に分娩誘発施行し,2335gの女児(Apgar score 8点/9点)を娩出した.児および臍帯に羊膜の巻絡は認めなかった.胎盤病理検査では羊膜と絨毛膜が完全に剥離している像を認めた.症例2は41歳の初産婦である.妊娠17週時に羊水検査を施行し,その後CMS疑いにて妊娠22週で当科受診した.超音波検査上,羊膜は全周性に癒合を認めないものの胎児への巻絡は認めなかった.その後の経過において異常所見は認めず,誘発分娩の予定としていたが陣痛発来し,妊娠37週0日に2035gの女児(Apgar score 8点/9点)を娩出した.羊膜が左足に巻絡していたが,児に明らかな外表奇形は認めなかった.今回われわれは,経腟分娩にて生児を得たCMS合併の2症例を経験した.CMSはその管理方針や分娩様式に対し一定の見解はなく,個々の症例に応じて対応する必要がある.〔産婦の進歩66(2) :124-129,2014(平成26年5月)〕
  • 植栗 千陽, 佐道 俊幸, 小池 奈月, 赤坂 珠理晃, 重富 洋志, 常見 泰平, 成瀬 勝彦, 小林 浩
    2014 年 66 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    胎児心臓腫瘍は非常にまれな疾患である.超音波検査の進歩により胎児期に発見されることが多くなってきたが,子宮内胎内死亡や早期新生児死亡に至り予後不良となることもある.今回われわれは妊娠26週で胎児心臓腫瘍を認め,腫瘍の増大により胎児心不全,胎児水腫が増悪し,子宮内胎児死亡に至った症例を経験したので報告する.症例は27歳初産婦で,既往歴・家族歴に特記事項なし.妊娠初期より当科外来にて定期妊婦健診を受診していた.妊娠23週1日の健診では異常を認めなかったが,妊娠26週1日には超音波検査上,右室壁は著明に肥厚し,胸腔内のほぼ全体を占拠していた.また心室中隔の一部も結節状に肥厚しており,胎児心臓腫瘍と診断した.両側肺は背側に圧排されていた.妊娠27週0日には心筋肥厚がさらに進行し,少量の胸水,心嚢液,頭部中心の皮下浮腫が出現した.その後は心室中隔の結節状肥厚が増大し,心臓内腔は著明に圧迫され狭小化した.それに伴い胎児水腫が増悪し,妊娠28週1日に子宮内胎児死亡に至った.病理解剖で心臓横紋筋腫と確定診断した.心臓横紋筋腫は無症状のまま加齢とともに縮小,退縮することが多いとされているが,腫瘍の存在場所や大きさにより心不全をきたした場合は早期発見されても予後不良となる.今回の症例でも在胎週数が早く,病態の進行も早かったため児の救命には至らなかった.しかし,妊婦本人や家族との頻回のカウンセリングのなかで児の状態を受け入れる環境づくりは行うことができた.〔産婦の進歩66(2):130-136,2014(平成26年5月)〕
  • 智多 昌哉, 高岡 幸, 宮武 崇, 三村 真由子, 橋本 洋之, 横井 猛, 長松 正章, 杉原 英治
    2014 年 66 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    帝王切開や子宮内容清掃術後に子宮腔内に子宮動静脈瘻が生じることはしばしば経験するが,子宮外に発生する子宮動静脈瘻は非常にまれである.今回,われわれは子宮筋腫核出術後に子宮外の骨盤腔内に発生した子宮動静脈瘻を経験したので報告する.症例は53歳,今回の子宮動静脈瘻の指摘から13年前に子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術を2回,9年前に子宮筋腫核出術を施行されていた.以後,検診にて子宮筋腫の再発を指摘されるも増大なく経過観察されていた.最近,会社健診の際に約6cmの腫瘤を右骨盤腔に認め,卵巣腫瘍の疑いで当院に紹介受診となった.経腟超音波検査では卵巣嚢腫または卵管留水腫が疑われたが,当院でのMRIにて右骨盤腔に拡張・蛇行した異常血管影を,dynamic CTでは右内腸骨動脈から子宮動脈にかけて広範囲に造影される血管拡張像を認め,子宮外に発生した子宮動静脈瘻が疑われた.無症状であったが,破裂した場合は致死的であると考え,血管造影にて病変部への子宮動脈の血流および拡張した静脈を確認して子宮動静脈瘻の確定診断を行い,子宮動静脈瘻に対して塞栓術を施行した.術後10カ月経過したが合併症や再発を認めていない.筋腫核出術後には子宮動静脈瘻が形成される可能性も念頭に置き,経過観察していく必要がある.〔産婦の進歩66(2): 137-142,2014(平成26年5月)〕
  • 大上 健太, 中野 朱美, 山本 浩子, 羽室 明洋, 浜崎 新, 寺田 裕之, 橘 大介, 古山 将康
    2014 年 66 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    妊娠中の子宮静脈破裂による腹腔内出血は非常にまれであり,重篤な場合は周産期および新生児死亡率が増加するといわれている.今回われわれは妊娠22週で子宮静脈破裂による腹腔内出血を外科的に修復し,正期産で無事生児を得た1例を経験したので報告する.症例は42歳,初産婦.配偶者間人工授精(以下AIH)にて妊娠成立した.妊娠17週4日,多発筋腫合併妊娠,高年初産婦にて当科紹介初診となった.妊娠22週3日より下痢,嘔吐の消化器症状を認め,さらに妊娠22週5日より右上腹部痛が出現したため急性腹症にて緊急入院となった.内診・超音波検査で明らかな異常所見は確認されず,血液検査では感染徴候および貧血の進行を認めた.MRI所見にて急性虫垂炎破裂後が疑われたため,緊急開腹手術を施行した.開腹所見は消化管に異常所見はなく,右側卵管付着部位の子宮静脈が破裂,持続出血していた.出血部位の子宮筋層の縫合結紮およびフィブリン加第13因子製剤散布して,止血し得た.術中出血量は1155ml,輸血はRCC6単位施行した.術後麻痺性イレウスを発症するも保存的に軽快し,術後26日目に退院した.以後の妊娠経過は良好で,妊娠38週5日子宮収縮の増加を認め再入院した.妊娠39週0日のCTG所見にて遷延性徐脈を認め,同日胎児機能不全の適応にて緊急帝王切開術施行した.児は2785gの男児(Apgar score 1分後7点,5分後9点,臍帯動脈血液ガスpH7.222,BE-3.0)を娩出した.臍帯巻絡が頸部と体幹にあり,これが遷延性徐脈の原因と考えられた.今回の帝王切開術と同時に有茎性の筋腫核出術も施行した.術中前回開腹時の子宮静脈破裂創部に異常は認めなかった.母児とも経過良好にて術後6日目に軽快退院となった.本症例のように,妊娠中期での腹腔内出血のあと妊娠継続している症例は少なく,妊娠後期では常位胎盤早期剥離と診断され緊急帝王切開術を行っている症例がほとんどであった.妊娠継続を要する週数での腹腔内出血は迅速に精査・加療を行うことで,正期産での出産も可能であると考える.〔産婦の進歩66(2) : 143-147,2014(平成26年5月)〕
  • 西沢 美奈子, 徳山 治, 深山 雅人, 川村 直樹
    2014 年 66 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    女性の尿閉は10万人あたり7人と報告されており,とくに婦人科疾患によるものはまれとされている.子宮筋腫はその原因疾患に含まれるが,腫大子宮による尿路系圧迫に伴う症状としては頻尿が比較的多く認められるものの,尿閉をきたすものはまれである.これまでに1~3例の症例報告はみられるが,まとまった症例数での系統的解析が行われた報告はない.今回,われわれは子宮筋腫が原因と思われる急性尿閉を発症した10例を経験したので,その臨床背景,発症時の状況,病態について診療録をもとに後方視的に検討した.対象は,2006年4月から2012年3月までの6年間に当院子宮筋腫外来を受診した2032例の患者のうち,急性尿閉をきたした10例(0.49%)である.年齢は38~51歳,子宮の大きさは妊娠12~21週相当,3例が頸部筋腫を有し,7例は体部筋腫のみであった.いずれの症例も尿閉は膀胱に尿が充満しているときに発症しており,起床時にみられることが多く,確認できた残尿量は175~1600mlであった.導尿後は尿閉が継続してみられることはなく,膀胱充満時に腫大子宮体部が上方あるいは後方へ変位し,その結果,尿道の変位・延長,後方からの子宮頸部の尿道圧迫などが生じて一過性尿閉が出現したものと推測された.子宮筋腫が原因と思われる尿閉の既往がある場合,原則外科的介入の適応とされるが,眠前の多量水分摂取を控えたり,膀胱に尿が充満しすぎないよう注意することなど生活習慣を指導することで,その後尿閉を繰り返さず経過する場合が多い.したがって,とくにまもなく閉経を迎える年代では1度の急性尿閉のエピソードは外科的介入の絶対適応ではないものと考えられた.〔産婦の進歩66(2): 148-154,2014 (平成26年5月)〕
  • 田吹 邦雄, 寺井 義人, 田中 良道, 佐々木 浩, 恒遠 啓示, 金村 昌徳, 大道 正英
    2014 年 66 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    子宮内膜症の発生頻度は性成熟女性の約10%とされる.一方,子宮内膜症にはさまざまな合併症(骨盤痛や不妊症,付属器腫瘍など)が起こるが,近年子宮内膜症性嚢胞から約0.7%に卵巣癌が発生することが知られている.今回われわれは,経過観察中に臨床的,病理組織学的に子宮内膜症性嚢胞から発生したと考えられた卵巣癌4症例を経験したので,その臨床経過や特徴を報告する.症例は38歳から48歳(平均値43.3歳).2例は子宮内膜症と診断されてから10年以上の経過観察期間があった.1例は診断から約1カ月の間に充実性部分の出現を認めた.腫瘍径は8cmから20cmで,術前の腫瘍マーカーはCA125 56.9~313 U/ml,CA19-9 99~174 U/mlであった.全例画像所見から悪性を指摘された.MRI画像ではT2強調画像で低信号を呈する充実部分の出現と同部位の造影効果の増強を認め,内容液はT1強調画像で等~低信号,T2 強調画像で高信号を呈していた.全例で卵巣癌根治術を施行,術後病理組織の結果は類内膜腺癌2例,明細胞腺癌2例であった.進行期は1A期,1C期,2C期,3C期であり,1A期を除いた症例で術後補助療法としてTC療法を施行した.現在平均50カ月経過観察しているが,全例再発徴候なく経過良好である.今回経験した4症例から,子宮内膜症性卵巣嚢胞の癌化におけるMRI検査での腫瘍内容液の性状の変化,壁在結節の存在が重要な所見であった.また1カ月という短期間に充実部が出現した症例や1年ごとの画像検査を施行していても進行卵巣癌で発見される症例も存在することから,内膜症性卵巣嚢胞にも急な変化を示すものがあることを念頭に置いた管理が必要であると考えられた.〔産婦の進歩66(2):155-162,2014 (平成26年5月)〕
  • 葉 宜慧, 船越 徹, 牧志 綾, 高松 祐幸, 喜吉 賢二, 佐本 崇
    2014 年 66 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    一絨毛膜一羊膜性双胎(monochorionic monoamniotic twin;MM双胎)は双胎妊娠のなかで最も周産期予後が不良といわれているが,管理方法は未確立である.2001~2012年に当院で管理した6例のMM双胎を検討した.平均入院週数は26週0日で,全例子宮収縮抑制剤を投与し,胎児心拍数モニタリング(fetal heart rateモニタリング;胎児心拍数モニタリング),超音波検査にて厳重に胎児監視を行った.出生前に超音波検査で全例に臍帯相互巻絡を認めたが胎児機能不全はなく,選択的帝王切開にて全例生児を得ることができた.MM双胎は臍帯相互巻絡の頻度が高く臍帯血流不全のため胎児死亡や神経学的後障害のリスクが存在するが,24週ごろから入院管理を行うことで妊娠期間の延長をはかり良好な周産期予後を得ることができた.〔産婦の進歩66(2):163-168,2014 (平成26年5月)〕
  • 松尾 愛理, 河原 俊介, 泉 有希子, 三瀬 有香, 頼 裕佳子, 川島 直逸, 長野 英香, 吉岡 信也
    2014 年 66 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル 認証あり
    難治性癌性腹水は婦人科進行癌におけるコントロール困難な症状の1つである.大量の腹水貯留を認める症例も多く,通常の腹水穿刺では症状緩和に有効な量の腹水排液が困難なことも多く,また短期間で再貯留する.そのため頻回の腹水穿刺を要し,低蛋白血症の進行や血管内脱水による腎機能低下につながることもまれではない.近年,難治性癌性腹水に対し腹水濾過再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy ; CART)が,ADLの改善や低蛋白血症の予防に有効とする報告が散見される.今回当院にて癌性腹水に対しCARTを施行した7症例を経験したので報告する.7症例の内訳は卵巣癌5例,子宮体癌1例,子宮頸部腺癌1例,年齢中央値57歳,CART施行回数の中央値は5回(1~21回),7例中4例で5回以上継続可能であった.終末期であった59歳卵巣癌(漿液性腺癌IIIc期)症例では,再燃病変に対する化学療法中にCARTを導入した.症状緩和やADL改善に有効であり,またCART施行直後は一時的な腎機能改善を認めた.化学療法継続目的にCARTを行った54歳卵巣癌(粘液性腺癌IIIb期)症例では10カ月間で21回のCARTを施行した.1回平均6700 mlの腹水排液を行い,その間,低蛋白血症の進行なく自立したADLを維持しながら化学療法を継続し,CART導入10カ月後に腫瘍減量術を施行した.現在術後約3年で再発所見なく経過観察中である.当院にて継続的にCARTを施行した症例では大量の腹水排液により症状緩和およびPSの改善がみられ,また低蛋白血症の進行や腎機能低下は認めなかった.CARTは終末期患者のADL改善に有効であり,また化学療法などの積極的な治療を行う症例においても有効な治療法である可能性が示唆された.〔産婦の進歩66(2): 169-176,2014 (平成26年5月)〕
臨床
臨床の広場
今日の問題
会員質問コーナー
feedback
Top