産婦人科の進歩
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67 巻, 1 号
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研究
原著
  • 海野 ひかり, 橋本 洋之, 山崎 瑠璃子, 竹田 満寿美, 宮武 崇, 長松 正章, 横井 猛
    2015 年 67 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/30
    ジャーナル 認証あり
    当院では低侵襲な子宮摘出術の術式として,腟式子宮全摘出術を積極的に実施している.今回,腟式および腹式子宮全摘の組織侵襲の程度を数値化できるかを検討するために,腟式子宮全摘出術と腹式子宮全摘出術の術前後の血中C反応性蛋白(CRP),クレアチンキナーゼ(CK),乳酸脱水素酵素(LDH)の検査値を組織侵襲の指標として比較検討した.対象は,2008年1月から2012年12月までの5年間に当院で単純子宮全摘出術を施行した468症例のうち,子宮筋腫および子宮腺筋症に対して腹式単純子宮全摘出術を施行した226症例(以下TAH群)と,腟式子宮全摘出術を施行した168症例(以下TVH群)とした.まず,全症例の手術前後の検査値を比較したところ,CRPとCKについては術後に検査値の増加を認めたが,LDHは増加を認めなかった.CRPとCKは子宮全摘術における組織侵襲の有用なマーカーと考え,TAH群とTVH群の術後のCRPとCKを後方視的に比較検討した結果,術後CRPはTAH群の中央値が3.1mg/dl,TVH群が1.1mg/dl,CKはTAH群の中央値が145 IU/l,TVH群が78 IU/lといずれも有意にTAH群の方が高かった.これらの結果よりCRPとCKは腟式および腹式子宮全摘の組織侵襲の違いを数値化するための指標となるが,LDHはその指標とならないことがわかった.〔産婦の進歩67(1):1-6,2015(平成27年2月)〕
症例報告
  • 坂本 能基, 髙木 力, 内田 学, 田原 秀男, 木野 茂生
    2015 年 67 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/30
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは,再発卵巣明細胞腺癌の治療後7年目に,膀胱内に発現した明細胞腺癌を経験した.症例は4回経妊2回経産,初診時は60歳であった.初診時に原発性卵巣癌と診断し,術後診断は右卵巣明細胞腺癌pT2cN0M0であり,術後化学療法を行った.初診から3年目に骨盤腹膜に約3cm大の明細胞腺癌の再発を認め,これを外科的に切除し,術後化学療法を行った.再発の治療から7年目に膀胱内腫瘍を認め,経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を施行した.病理診断は明細胞腺癌であった.術後の追加治療は行わなかった.原発性膀胱明細胞腺癌と卵巣明細胞腺癌の膀胱への再発はともにきわめてまれなケースであるが,本症例では双方の可能性を考える必要性がある.しかしながら,子宮内膜症,ミュラー管遺残,膀胱原発腺癌の異分化および尿路上皮癌の化生性変化などの発生母地を推測する他の組織の混在があれば原発性膀胱明細胞腺癌といえるが,本症例では認められなかった.また免疫組織化学的分析では臓器の違いにより明細胞腺癌を鑑別できない.そこでわれわれは正常な移行上皮下の結合織内に明細胞腺癌が存在することを根拠に再発癌の可能性が高いと考えた.膀胱内再発癌のTUR-Btから3年目に再び膀胱内腫瘍を認め,再度TUR-Btを施行し,明細胞腺癌の再発の診断となった.術後の追加治療は行わなかった.現在も慎重に経過観察中であるが,再発を認めていない.〔産婦の進歩67(1):7-13,2015(平成27年2月)〕
  • 角張 玲沙, 小西 恒, 田中 江里子, 連 美穂, 宇垣 弘美, 竹村 昌彦
    2015 年 67 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/30
    ジャーナル 認証あり
    症例は55歳,閉経52歳,2経妊0経産であった.1年間で30kgの体重増加,発熱,腹痛,多量の腹水貯留により当科へ紹介された.高血圧,2型糖尿病で加療中であり,脳梗塞の既往歴があった.BMIは47であった.超音波検査にて長径20cmの嚢胞性骨盤内腫瘍と多量の腹腔内貯留液を認め,CA19-9は 496U/ml,CA125は 238U/mlであった.造影MRI検査では,右卵巣壁が肥厚し腹膜の一部に造影効果を認めた.繰り返し実施した腹水細胞診では悪性所見は検出されなかった.患者の耐術能を考慮し,確定診断を目的として腹腔鏡補助下右付属器切除術を行い,褐色腹腔内貯留液を22400ml回収した.腫瘍内部には茶褐色泥状成分が多量に貯留していた.組織学的に腫瘍の上皮成分を見いだすことはできなかったが,卵巣子宮内膜症性嚢胞の可能性を考えた.周術期合併症を併発することなく経過し,その後腹腔内の液体再貯留を認めていない.子宮内膜症性病変による大量腹水貯留という病態は非典型的で,内膜症が活動性を有する年齢では複数の報告例があるが,閉経後の報告はない.術前に卵巣悪性腫瘍の可能性も疑ったが,全身状態を考慮して腹腔鏡下手術を実施した.閉経後であっても何らかの原因で卵巣子宮内膜症性嚢胞の活動性病変を引き起こす可能性や,嚢胞破裂に伴う腹膜刺激によって腹水貯留をきたす可能性を考慮する必要がある.〔産婦の進歩67(1):14-20,2015(平成27年2月)〕
  • 松木 厚, 梶谷 耕二, 吉山 智貴, 西沢 美奈子, 徳山 治, 深山 雅人, 川村 直樹
    2015 年 67 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/30
    ジャーナル 認証あり
    卵巣癌の術前に肺動脈血栓症と診断され,周術期にヘパリンによる抗凝固療法を行い,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断された2例を経験した.[症例1]49歳,女性.受診の1カ月前から腹部膨満感と数日前からの呼吸困難感を主訴に前医を受診した.そこで,卵巣腫瘍を指摘され当科紹介された.術前検査でDダイマー高値のため肺動脈・下肢静脈造影CT検査を施行し,肺動脈血栓症と診断され,術前よりヘパリンナトリウムによる治療を開始した.[症例2]65歳,女性.CA19-9高値のため近医から当院内科に紹介となり,腹部CTにて骨盤内腫瘤を指摘され当科紹介となった.診察待ち時間中に突然胸痛が出現し,経皮的動脈血酸素飽和度の低下を認めた.造影CT検査で肺動脈血栓症と診断され,ヘパリンによる治療を開始した.2症例とも手術療法を行ったが,血栓予防を目的とした術後のヘパリンによる抗凝固療法中に血小板減少をきたし,臨床的にHITと診断された.このためヘパリンの中止と,既存の血栓とHITによる新規血栓予防のための抗凝固療法として抗トロンビン薬への変更を行った.婦人科悪性腫瘍,とくに卵巣癌は術前に血栓症を合併する頻度が高く,ヘパリンを使用する頻度は高くなっていると思われる.免疫学的機序を介して発症するHITII型は,早期診断,早期治療が行わなければ発症患者の38.0~55.5%に血栓症を合併し,死亡率は4.8~10.6%と報告されている.そのため,臨床的にHITが疑われる場合には,HITによる重篤な合併症の存在を認識し,発症早期より治療を開始することが重要である.〔産婦の進歩67(1):21-27,2015(平成27年2月)〕
  • 辻 芳之, 伊藤 宏一, 野坂 舞子, 久保田 陽子, 加藤 浩志, 伊田 昌功
    2015 年 67 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/03/30
    ジャーナル 認証あり
    女性ホルモンを産生する卵巣明細胞癌は本邦では報告例が少ない.女性ホルモンを産生する腺線維型の卵巣明細胞癌2症例を経験した.症例1は70歳,非常に硬い最大径8cm大の充実性の卵巣腫瘍と子宮内膜肥厚,および血中estradiolが58pg/mlと高値がみられ,摘出病理検査で卵巣明細胞癌と子宮内膜癌合併が証明された.第2の症例は68歳,最大径14cmの硬い半充実性の卵巣腫瘍と子宮内膜増殖症を伴い,血中estradiolが90pg/mlと高値であった.手術標本では卵巣明細胞癌と子宮内膜増殖症が証明された.いずれも術後化学療法を行い,それぞれ3年以上,4年以上再発を認めていない.病理組織を検討し,いずれも強い間質増殖を伴う腺線維型の卵巣明細胞癌であったことから,硬い充実性の卵巣腫瘍で女性ホルモン産生を伴う場合,腺線維型明細胞癌である可能性もある.〔産婦の進歩67(1):28-32,2015(平成27年2月)〕
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