産婦人科の進歩
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68 巻, 3 号
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研究
原著
  • 川西 陽子, 早田 憲司, 八木 一暢, 奥野 幸一郎, 田中 博子, 正木 秀武, 奥野 健太郎, 坪内 弘明
    2016 年 68 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    予後不良と認識されている妊娠22週未満での前期破水(以下;pPROM)の予後について,当院の症例を後方視的に検討した.2006年から2013年の間に,当院で妊娠22週未満にpPROMと診断された41症例(うち双胎4症例)を対象とした.41例の破水時週数は妊娠13週~21週であった.18例が48時間以内に流産進行またはIUFDとなり,10例が選択的分娩誘発を選択したため,13例について待機的管理を行った.妊娠22週未満に分娩に至った6例はIUFDが3例,自然流産が2例,母体感染による人工流産が1例であった.妊娠22週以降に分娩に至った7例のうち,死産となった2例(双胎1例)はいずれもIUFDであった.5例(双胎2例)が妊娠26週1日から33週6日で分娩に至り,7人の生児を得た.待機的管理を行った13例のうち,3例が母体感染を認め,1症例に遺残胎盤を認めた.胎盤病理所見では,Blanc III度の絨毛膜羊膜炎を生産例で1/5,死産例で6/8で認めた.児の合併症としては,先天性サイトメガロウイルス感染と子宮内胎児発育制限を認めた1例で重度の身体的・精神的発達障害を認め,dry lungと慢性肺障害のため在宅酸素療法を要した.他の6例中,肺低形成・敗血症・脳室内出血など重篤な合併症は認めず,1例がdry lungと診断されたが退院までに改善を認めた.股関節の開排制限を2例で認め,うち1例は生後早期に自然軽快し,1例は理学療法を要した.双胎の非破水児1例に精神発達障害を認めた他,5例は生後の精神発達に異常を認めなかった.妊娠22週未満のpPROM症例であっても必ずしも予後不良ではないことを念頭に,待機的管理も含めて治療方針を提示することが望ましい.〔産婦の進歩68(3):217-223,2016(平成28年8月)〕

症例報告
  • 船内 祐樹, 村山 結美, 加藤 俊
    2016 年 68 巻 3 号 p. 224-231
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    子宮留膿腫は良性の慢性疾患であるがまれに穿孔することがある.今回異なる転帰をたどった子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎を3例経験したので報告する.症例1は87歳,高血圧,糖尿病,腎不全,心不全を合併し,認知症,大腿骨頸部骨折のため施設で寝たきり状態であった.帯下異常を主訴に当科を受診し子宮留膿腫と診断したが,家族の意志で入院手術を回避し経過観察とした.1カ月後に意識レベルの低下で当院救急外来を受診し,CTで消化管穿孔と診断された.外科医による緊急開腹術中に子宮穿孔による汎発性腹膜炎と判明し,当科で単純子宮全摘術を施行した.術後に腎不全の増悪を併発し65日目に永眠となった.症例2は85歳,認知症で寝たきり在宅介護中であった.食思不振と炎症反応で当院内科に入院したが,感染源不明のまま32日目に退院となった.退院後40日目に不正出血と膿性帯下で再受診となり,CTで子宮留膿腫が疑われ当科に紹介された.経腟ドレナージ術を施行したが,その後さらに炎症反応が増強したため翌日緊急開腹術となった.子宮穿孔による汎発性腹膜炎と判明し,子宮腟上部切断術を施行し術後22日目に退院となった.症例3は79歳,認知症,大腿骨転子下骨折のため施設入所中であった.発熱に対し近医で経口抗菌薬を投与されたが無効のため当院内科を受診し,CTで膀胱膿瘍と診断された.保存的治療開始後3日目にCT再検で消化管穿孔と診断され緊急開腹術となった.術中に子宮穿孔による汎発性腹膜炎と判明し,子宮腟上部切断術を施行し,術後20日目に退院となった.子宮留膿腫はADLの低下した高齢者に多く症状の把握が困難なことから,婦人科以外での早期診断は容易ではない.初期対応にあたる他科に子宮留膿腫の病態とリスクを周知させ,婦人科医は定期的観察中に進行増大を認めたら経腟ドレナージを試みることが重要と思われる.急速に進む高齢化社会において本疾患は今後増加すると考えられ,注意深い対応が望まれる.〔産婦の進歩68(3):224-231,2016(平成28年8月)〕

  • 李 泰文, 小林 史昌, 横山 信喜, 稲田 収俊, 山村 省吾, 坂田 晴美, 吉田 隆昭, 中村 光作
    2016 年 68 巻 3 号 p. 232-236
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    手術時のガーゼ遺残はさまざまな予防対策によってしだいに減少してきているが,現在でも国内で年間数十例の報告がある.われわれは,石灰化した腫瘤として見つかった膿瘍を伴うガーゼ遺残の症例を経験したので報告する.症例は69歳,2経妊2経産.23歳時に帝王切開術の既往がある.発熱と腹痛を主訴として近医を受診した際に,腹部X線にて石灰化した腫瘤を骨盤部に認めたため当科を紹介された.CT検査にて,石灰化した球形の壁に囲まれた腫瘤(長径7.5 cm)を子宮の後方に認めた.血腫や膿瘍を疑って開腹術を施行したところ,腫瘤はダグラス窩にあり,子宮と卵巣のいずれにも連続していなかった.その腫瘤を摘出し,石灰化した腫瘤壁を切開すると,その中に膿汁とともにガーゼを認めた.そのため腫瘤は,46年前に行われた帝王切開術の際に遺残したガーゼに膿瘍を伴うことによって形成されたと考えられた.本症例は,ガーゼ遺残が発見されるまでの期間が非常に長期間であったこと,長期間無症状であったにもかかわらず膿瘍を形成したこと,遺残したガーゼと膿瘍が石灰化した腫瘤壁に被包化されていたことなど,ガーゼ遺残の典型例とは異なる臨床所見を示していた.〔産婦の進歩68(3):232-236,2016(平成28年8月)〕

  • ─治療中の子宮内膜組織診の変化の検討─
    若橋 宣, 須藤 保, 浮田 真沙世, 市田 耕太郎, 長尾 昌二, 山口 聡, 山田 秀人
    2016 年 68 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    子宮体癌は婦人科悪性腫瘍のなかで最も多い疾患であり,その約5.3%は40歳以下に発症する.高用量プロゲスチン療法(medroxyprogesterone acetate (MPA)療法,以下;MPA療法)は妊孕性温存希望の患者に行われているが,再発率が高く,再発例に対して繰り返し行うことはリスク管理の点から推奨されていない.今回,われわれは3回のMPA療法を行ったが,病変の消失をきたさず子宮摘出に至った症例を経験した.複数回のMPA療法ということもあり,治療経過中のPgR発現を検討した.症例は39歳,1経妊0経産,不妊症にて近医受診中に子宮内膜細胞診異常を指摘され紹介受診となった.精査の結果,類内膜腺癌G1の診断となり,MPA療法開始となった.治療開始から6カ月後の内膜組織診では治療効果を認めたため経過観察となった.しかし初回治療から6カ月後に類内膜腺癌G1の再発を認めた.患者希望もあり2回目のMPA療法を行い,治療再開から8カ月後の内膜組織診では腺癌は消失した.しかし,2回目のMPA療法から8カ月後に子宮内膜異型増殖症を認めた.妊孕性温存を強く希望されたため3回目のMPA療法となったが,治療再開から4カ月後の内膜組織診は改善を認めず,腹腔鏡下子宮全摘出術施行となった.摘出子宮からは類内膜腺癌G1を認めた.治療経過にともなったPgR発現の検討では初回治療開始前,2回目および3回目のMPA療法開始前のいずれの時点でもPgR発現が陽性であった.MPA療法後には病理所見の改善は認めているものの,残存した腺管の大部分は治療抵抗性を示唆するPgR発現陰性成分が占めており,最終的に摘出した子宮の病変はPgR発現陰性であった.MPA療法後の再発例に対する治療の選択には,患者背景などから苦慮することも多い.本症例のように病理所見上の改善を認めても,PgR発現陰性成分が残存する症例は治療抵抗性であることを示唆しており,治療経過中のPgR発現の変化はMPA療法継続を判断するのに有用な情報を提供できる可能性がある.〔産婦の進歩68(3):237-242,2016(平成28年8月)〕

  • 高瀬 亜紀, 市村 友季, 中川 倫子, 村上 誠, 安井 智代, 角 俊幸
    2016 年 68 巻 3 号 p. 243-247
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    後腹膜線維症は後腹膜腔の線維化により尿管の狭窄や尿路閉塞症状をきたす疾患で,尿管の蠕動が障害されることにより水腎症が引き起こされると考えられている.今回,後腹膜線維症による両側水腎症を契機に発見された子宮頸部腺癌の1例を経験したので報告する.症例は35歳未経妊で,右側腹部痛を主訴に近医受診し,両側水腎症と血清クレアチニン高値(3.8 mg/dl)を指摘された.両側尿管カテーテルの留置を受けるも腎機能が改善しなかったため当院泌尿器科紹介となり,両側腎瘻造設術を受けた後,水腎症の原因検索を目的に当科紹介となった.初診時の超音波検査所見では頸部腫大はみられなかったが頸部細胞診はSCC疑いで,コルポスコープでは脆弱で易出血性の隆起病変がみられ,同部位の生検結果は粘液性腺癌であった.MRI画像では,頸部腫瘍や骨盤リンパ節腫大は明らかではなかった.CT画像で転移性病変ならびに腫大リンパ節は認められず,子宮頸部腺癌IB1期と診断し,広汎子宮全摘術と両側付属器摘出術を施行した.術中所見は後腹膜腔の線維化が著明で,尿管は硬化して可動性が不良で後腹膜線維症を疑う所見であった.摘出標本肉眼所見では頸部に5 mm大の腫瘤を認めたが,骨盤リンパ節に明らかな腫大は認められなかった.摘出標本の病理結果は通常型頸部腺癌で,子宮傍組織浸潤と両側卵巣および骨盤・傍大動脈リンパ節に転移を認め,尿管周囲に癌の浸潤を伴っていたことから子宮頸部腺癌による後腹膜線維症と考えられた.術後化学療法を行うも初回治療より17カ月後に原病死し,予後不良であった.器質的異常が明らかでない水腎症に遭遇した場合には,まれではあるものの本症例のように後腹膜線維症を合併した悪性腫瘍である可能性も念頭に置くべきと考えられた.〔産婦の進歩68(3):243-247,2016(平成28年8月)〕

  • 細見 麻衣, 土田 充, 脇本 剛, 三宅 麻子, 濱田 真一, 峯川 亮子, 山嵜 正人, 村田 雄二
    2016 年 68 巻 3 号 p. 248-251
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    卵巣遺残症候群(ovarian remnant syndrome;ORS)は,両側付属器摘出術の数年後に腹腔内に残存していた卵巣組織から,腫瘍性あるいは非腫瘍性病変が発生する状態をいう.腹痛や腹部膨満感を初発症状とすることが多く,高度の慢性骨盤痛が持続する例もあるが,無症状のこともある.リスクファクターとしては子宮内膜症,骨盤腹膜炎,頻回の開腹手術既往などがあり,とくに骨盤腔内の強固な癒着により手術に難渋した付属器摘出例にみられる.術中の癒着剥離や嚢胞摘出の際に残存した卵巣組織が腹膜や隣接する骨盤臓器に生着するのではないかと考えられている.今回当科で腹膜偽嚢胞(peritoneal inclusion cyst;PIC)を呈したORSを経験したので報告する.症例は46歳,1経妊,1経産,既往歴に30歳,帝王切開,36歳,クラミジアによる骨盤腹膜炎,37歳,左卵巣漿液性腺腫に対する左付属器摘出術,44歳,右卵巣卵管膿瘍に対して右付属器摘出術が行われた.39歳より右卵巣チョコレート嚢胞に対しGnRHアゴニスト療法3コース施行,42歳よりジェノゲストを内服していたが,右付属器摘出術後に内服中止となっていた.術後2年目の46歳,外来受診時の経腟超音波検査で,骨盤内左側に低輝度の嚢胞性腫瘤を認め,MRI検査で左残存卵巣から生じた嚢腫が疑われ,腫瘤摘出術を施行した.術後病理診断より嚢腫壁は遺残卵巣組織と線維性組織からなる部位とに分かれており,嚢胞性卵巣腫瘍ではなくORSを伴うPICと診断した.同手術7カ月後に月経様の出血を認め,経腟超音波検査では子宮左側にshadingを伴う嚢胞性病変を認めた.骨盤部MRI検査とあわせ,左残存卵巣のチョコレート嚢胞再発が考えられたが,癒着高度のため再開腹は困難と判断した.ORSからの卵巣癌発生例の報告もあることから,本症例においては卵巣遺残に起因するチョコレート嚢胞の悪性転化に留意して管理していくことが重要であると考えられた.〔産婦の進歩68(3):248-251,2016(平成28年8月)〕

  • 竹山 龍, 脇本 裕, 坂本 美友, 井上 佳代, 伊藤 善啓, 鍔本 浩志, 柴原 浩章
    2016 年 68 巻 3 号 p. 252-255
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    腟内異物が原因であった難治性の細菌性腟炎の1例を経験した.6歳の女児が2年間の抗菌剤加療に反応しない帯下や性器出血を認めた.抗菌剤加療と静脈麻酔下での腟洗浄は奏功しなかったため,腟の軟性鏡検査を全身麻酔下で行った.細径の軟性鏡を使用して腟内を検索し,異物を同定した.異物は軟性鏡視下に鑷子で除去し,ヘアゴムであることが判明した.常温の生理食塩水300 mlで洗浄し,腟内に明らかな出血や傷はないことを細径の軟性鏡で確認した.術後半年以上経過しているが,症状の再発は認めていない.思春期前の少女に原因不明の帯下増量や性器出血がある場合には,腟の異物は考慮すべきであると考える.患者が幼少女児である場合は,本症例のごとく,十分な麻酔下で細径の軟性鏡を使用することで身体的負担を減少させることができると考えられた.〔産婦の進歩68(3):252-255,2016(平成28年8月)〕

  • 山下 紗弥, 磯部 晶, 角田 紗保里, 清水 亜麻, 中江 彩, 谷口 友基子, 増原 完治, 信永 敏克
    2016 年 68 巻 3 号 p. 256-260
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    子宮内外同時妊娠は,出血性ショックをきたして緊急手術の際に診断される例が多い.今回われわれは,卵管破裂前に心窩部痛を呈した子宮内外同時妊娠を2例経験した.(症例1)IVF-ETで妊娠成立.妊娠7週に心窩部から右下腹部へと移動する疼痛を訴え搬送され,子宮内胎芽を確認したため虫垂炎と診断して保存的加療を行った.翌日,下腹部の疼痛が増強し腹腔内液体貯留像および右卵管付近に胎嚢様像を認めたため試験開腹,右卵管妊娠の破裂と診断した.(症例2)正常妊娠と診断されたが,妊娠9週に心窩部痛を訴え受診,急激にショックとなったため当科へ搬送された.試験開腹により右卵管妊娠の破裂と診断した.妊娠初期に心窩部痛を訴える症例については,子宮内妊娠を確認していても,子宮内外同時妊娠の可能性を念頭に置く必要がある.〔産婦の進歩68(3):256-260,2016(平成28年8月)〕

  • 李 享相, 辻江 智子, 池田 佳代, 藤谷 真弓, 髙橋 佳世子, 蒲池 圭一, 徳平 厚, 脇本 昭憲
    2016 年 68 巻 3 号 p. 261-268
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    脳静脈洞血栓症は産褥期に多く,そのほとんどが分娩直後から産褥4週までに発症するといわれている.妊娠初期に発症する例は少ないとされるが,今回は妊娠初期に脳静脈血栓症を発症し,重篤な神経症状を呈するも,抗凝固療法により母児ともに良好な経過をたどった1例を経験したので報告する.症例は38歳の初産婦,顕微授精で妊娠成立した.採卵前周期に低用量ピルを,胚移植後に卵胞ホルモンと黄体ホルモンを投与されていた.妊娠初期より妊娠悪阻を認めていたが,妊娠悪阻の増悪と意識障害の出現を認めたため,妊娠7週に当院に救急搬送された.来院時は不穏状態で,意識レベルJCSI-3と意識障害を認め,さらに全身性痙攣や麻痺も出現した.頭部CTおよび頭部MRI/MRVにて脳静脈洞血栓症と診断し,直ちに抗凝固療法を開始した.脳浮腫治療やリハビリ療法を併用し,妊娠14週には神経学的な後遺症なく回復した.妊娠15週には外来管理が可能となり,妊娠40週に2830gの児を娩出した.産後は母児ともに異常なく経過した.産後,抗凝固療法はワルファリン内服に変更し,産褥6カ月まで継続した.〔産婦の進歩68(3):261-268,2016(平成28年8月)〕

  • 平山 貴裕, 安彦 郁, 吉岡 弓子, 山口 建, 近藤 英治, 馬場 長, 松村 謙臣, 小西 郁生
    2016 年 68 巻 3 号 p. 269-273
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル 認証あり

    モルセレーターは子宮筋腫を腹腔内で細断することで,腫瘍を小さい手術創から体外へ取り出すことを可能にし,手術の低侵襲化に寄与する一方で,子宮肉腫を播種させるリスクも報告されている.今回,子宮筋腫の術前診断で,モルセレーター併用腹腔鏡下核出術後に再発し,悪性の子宮内膜間質・平滑筋混合腫瘍と診断された1例を報告する.症例は34歳未経妊であった.子宮腫瘤に対し,他院にてモルセレーター併用腹腔鏡下核出術を受け,富細胞平滑筋腫と診断された.18カ月後の超音波検査で子宮腫瘤を認め,1年間で増大したために紹介となった.内診では骨盤腔を占拠する弾性硬の腫瘤を認め,MRI検査で子宮後壁筋層内に10 cmの境界不明瞭な腫瘤と,連続して腹腔内へ突出し内部に充実部分を有する11 cmの嚢胞性腫瘤を認めた.筋層内の腫瘤はT2WI軽度高信号のなかに筋状の低信号を認め,拡散強調画像高信号を呈し,不均一な造影効果を認めた.子宮内膜間質肉腫の子宮外への進展を疑い,子宮全摘,両側付属器切除術を施行した.病理学的に,腫瘍は筋層内から子宮壁外や脈管内にも進展していた.内膜間質様細胞が筋層内に侵入する低悪性度子宮内膜間質肉腫の成分が主体で,子宮外へ進展する部分には核異型の目立つ類上皮平滑筋肉腫成分を認め,子宮内膜間質・平滑筋混合腫瘍と診断した.腹腔内に播種はなかった.初回手術標本を再検討すると,モルセレーターにより細断されているため,正常筋層と腫瘍成分との関係がわかりにくいが,腫瘍は短紡錘形細胞で構成され,らせん動脈を模倣する小血管も認められ,低悪性度間質肉腫が示唆された.術後2年を経過し再発を認めていない.子宮の間葉系腫瘍には,部分像では病理診断が難しい症例もあり,モルセレーター使用は細断により病理診断を困難にする可能性がある.モルセレーター併用腹腔鏡下子宮腫瘍核出術を施行する症例では,術前のMRIや,術後の慎重な経過観察が重要であると考えられた.〔産婦の進歩68(3):269-273,2016(平成28年8月)〕

臨床
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学会
第133回近畿産科婦人科学会 第101回腫瘍研究部会記録
「卵巣癌におけるベバシズマブの使用経験」
第133回近畿産科婦人科学会周産期研究部会記録
「高齢出産」
第133回近畿産科婦人科学会生殖内分泌・女性ヘルスケア研究部会記録
「子宮内膜症・子宮腺筋症の病態,診断および治療(薬物・手術療法を含む)の進歩」
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