本研究では,堆肥化過程で発生する発酵熱を,吸引通気式堆肥化システムにより30 kW程度の熱量を持つ排気として回収し,プレートフィン型熱交換器を用いた水の加温特性(実験1)および,実際の酪農家において温水を乳牛へ飲水供給する場合の温水供給能力(実験2)について検討した。その結果,実験1では,1~14 L・min
-1 の通水量において,得られる温水温度は48.3~31.0 ℃で,水の加温に利用された熱量は,最大で1.41 MJ・min
-1 であった。このとき熱交換効率は90%程度であり,総括伝熱係数は,5 L・min
-1 以上の通水量では,80~90 W・m
-2・K
-1 で安定した。実験2では,実験1と同じ熱交換器を用いて得られた温水を,118頭規模の乳牛群の飲水として供給するシステムを構築し,平均33.3 ℃の温水,14.4 m
3・d
-1(乳牛 1頭あたり122 L・d
-1)が供給できた。このとき,水の加温に利用された熱量は,1 630 MJ・d
-1 であった。また,本熱回収システムの運用には,熱交換過程で発生する結露水の処理・利用方法の検討が必要であることが明らかになった。
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