生物物理化学
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35 巻, 4 号
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  • 戸沢 辰雄, 桑原 純子
    1991 年 35 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    LDH3の陰極側に1本の過剰活性帯を有する血清LDHアイソザイム泳動像がマラリア患者からえられた. この過剰活性帯は正常分子サイズをもつ真のLDHにより形成されたものであったが, その酵素学的・免疫学的性状は人の血清および血球溶血液中のLDHアイソザイムのそれらとは異なった. この過剰活性帯は患者の流血中にマラリア原虫感染赤血球を認めた時期にのみ血清および血球溶血液中に存在した. これらの成績から, この過剰活性帯がマラリア原虫由来LDHであると推定した. 人以外の生物LDHの出現が成因となった血清LDHアイソザイムの奇異なパターンの報告はこれまでに見ない.
  • 肝と心筋の比較
    林 泰三, 金田 惠孝, 広川 恵子, 渡部 透, 田中 孝生
    1991 年 35 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病マウス (NOD) と alloxan 糖尿病マウスの, 発症機序の異なる2種の糖尿病マウスについて, 肝と心筋の aspartate aminotransferase (AST), alanine aminotransferase (ALT), vitamin B6, pyridoxamine (PM), pyridoxal (PL), pyridoxine (PN) を測定, 糖尿病肝のB6代謝と糖新生に重要なAST, ALTの関連を, 心筋と対比し検索した. 糖尿病肝では, ASTの上昇, とくにs-ASTの上昇が著明で, またB6の上昇, とくにPM分画の上昇がみられた. 対照肝においては, PLがB6の約70%を占め, PMは30%にすぎないのに対し, 糖尿病肝ではPMが約50%と上昇した. 心筋では対照においてPMが約75%を占め, 糖尿病による変化は著明ではなかった. 糖尿病肝では, 同様に上昇したPMとs-ASTの間に有意の正相関がみられた. これは糖新生の亢進の場合, 筋肉からアミノ酸が供給されると同様, B6群も肝へ供給され, AST活性が上昇し, 糖尿病個体は体内のB6分布に異常をきたすことが考察された.
  • 武田 和久, 多賀 弘子, 平井 秀松
    1991 年 35 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ヒト血清中に Aleuria aurantia レクチン (AAL) 反応性α-フェトプロテイン (AFP) が存在することを親和電気泳動法を用いて明らかにした. AALは複合糖鎖のコア-N-アセチルグルコサミン (GlcNAc) がフコシル化された糖鎖に強い親和性を有するとされているが, 同じ糖特異性を有するレンズマメレクチンAと反応するAFPはAALに必ずしも親和性を示さなかった. むしろAALに親和性を有するAFPは非還元末端のGlcNAcがフコシル化を受けた構造を有するものと考えられた.
  • 岸本 洋輔, 山田 貞子, 周防 武昭, 平山 千里
    1991 年 35 巻 4 号 p. 271-274
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    正常健康人100例, 慢性肝炎78例, 肝硬変83例について, 血清ハプトグロビン (Hp) およびα1アンチトリプシン (PI) 表現型をそれぞれポリアクリルアミドゲル電気泳動, および等電点電気泳動法によって測定した. その結果, Hp1およびPIM3は, 肝硬変, とくに非アルコール性, 非代償性肝硬変において増加しており, Hp1とPIM3の組合せはウイルス性慢性肝疾患の重症度を支配する一因子となりうるものと推定された.
  • 山口 稽子, 浅川 英男
    1991 年 35 巻 4 号 p. 275-277
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Immunostaining method for the sensitive detection of isoferritins separated by isoelectric focusing on cellulose acetate membrane is described in this paper. Methanol was used in order to fix proteins to the membrane. Membrane was shaked in methanol immediately after isoelectric focusing and then incubated in phosphate buffered saline containing a sufficiency of antibody and 2% skim milk. Blocking, a step for filling in the blank of membrane was not necessary. Fine isoferritin profile with clear background was obtained using this procedure. The sensitivity of immunostaining was slightly higher than that of gold staining in which proteins were fixed with sulfosalicylic acid and/or trichloroacetic acid. When 250ng of liver ferritin was applied on the membrane, minor acidic isoferritin bands also were observed distinctly.
  • 島尾 和男
    1991 年 35 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    傾けたフィルムにアガロース溶液を流すことにより楔型のゲルを簡単に作製できることを墨汁を含ませたゲルのデンシトメトリーにより確認し, このゲルを用いるゾーン電気泳動と等電点電気泳動を行った. ゾーン電気泳動ではゲルの厚いほうに向かって電気泳動するとゾーンの濃縮効果により, 速く泳動する成分のゾーンの分解能が改良されることを理論的に示すとともに血清蛋白質の電気泳動 (pH8.6, μ0.045のバルビタール-N-メチル-D-グルカミン緩衝液) のプレアルブミンとアルブミン分画について実証した. 等電点電気泳動法では平板ゲルに比べて, 分画像は薄いところでは拡大, 厚いところでは縮小されることを, 広域両性担体 (Sepaline, pH3.5-10, 富士写真フイルム) を用いる血清蛋白質の等電点電気泳動により示した. すなわち楔型のゲルを用いることにより平板ゲルで分画像の拡大した部分に該当するpH域の両性担体を添加するのと同じ効果がえられる.
  • ヒトTFIID mRNAのPCRを用いた定量法
    和田 知益, 大谷 英樹
    1991 年 35 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    真核細胞において, 転写開始因子の一つであるTFIIDは, 遺伝子のプロモーター領域のTATA box と結合し, RNAポリメラーゼIIにより転写されるほとんどの遺伝子を制御している. Polymerase chain reaction (PCR) 法を用いたヒトTFIID (hTFIID) mRNAの高感度かつ特異的な定量法を考案した. この定量法の特徴は, 微量のRNA (1μg) を検出材料とすること, cDNA合成にランダムプライマーを用いること, β2-ミクログロブリンをコントロールとして用いることならびに異なったサイクル数のPCRを行い32Pの取込み量よりhTFIID転写産物の相対量を算定することなどが挙げられる. この方法を用いて, ヒト正常組織におけるhTFIIDの遺伝子発現の分布を初めて明らかにするとともにそのmRNA量を定量した. その結果, 肝, 胎児肺および胎盤等において, 中等度のhTFIID mRNAの発現が検出された. hTFIID転写産物量は, 組織における転写開始される全mRNA量や蛋白合成量に相関すると考えられた. このPCRを用いた定量法は, 特異的で高感度であり, より広範囲の遺伝子発現の検索に応用可能である.
  • 竹尾 和典, 藤本 正憲, 鈴木 公, 田中 経彦, 中村 和行, 柏木 史郎
    1991 年 35 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高精度の恒温ディスク泳動装置を用いて諸種の温度における親和電気泳動を行い, 得られた解離定数から熱力学定数を算出した. それらの値は平衡透析や蛍光測定法等の他の方法で得られた値とよく一致した.
    Concanavalin Aと dextran あるいは glycogen phosphorylase と glycogen の相互反応のような親水性の相互反応の場合には, 親和性は温度の上昇とともに減弱し, その標準エンタルピー変化 (ΔH°) および, 標準エントロピー変化 (ΔS°) は負の値となった. これに反し, dinitrophenyl-基等の芳香族ハプテンと抗芳香族ハプテン・ミエローマ・タンパクの相互反応のような疎水性相互反応の場合には, 親和性は温度の上昇とともに増強し, そのΔH°およびΔS°は正の値となった.
    Fibronectin と collagen との相互反応の場合には, 親和性は温度の上昇とともに減弱し, そのΔH°およびΔS°は負の値となった. この結果から fibronectin と collagen との相互反応は親水性のものであると推論できる. その親和性が尿素によって著しく低下することから, この親水性の相互反応には水素結合の関与が大きいと推論した.
  • 吉岡 尚文, 横井 毅, 那谷 雅之, 目黒 ひとみ, 森田 香, 勾坂 馨
    1991 年 35 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    健康人のハプトグロビン (Hp) 欠損の原因は不明の部分が多い. 9,711例を血清学的にスクリーニングしたところ, 7例が表現型欠損と考えられた. この7例についてHp2αプローブを用い白血球DNAの分析を行った. その結果, 6例は intact なHp遺伝子の存在が確認されたが, 1例は, Hpをコードする遺伝子の欠損ではないかと考えられた. この例は30歳男性, 体格はやや肥満体, 幼少時肝臓を悪くしたという既往があるほかは, ずっと健康に成育し, 現在も平常に仕事をしている. 臨床検査成績では, GPTに軽度の上昇をみるのみで, 他の肝機能検査値, 血算値は正常範囲内である. 母は通常の2-2型と判定され, 定量値も正常範囲である. したがって, 本例は遺伝的な原因は考えにくく, むしろ突然変異のようなことが起こり, Hpの合成が障害されたのではないかと推察される.
  • 池本 卯典, 福井 えみ子, 土田 修一, 梶井 英治, 岩本 禎彦, 雨宮 洋一
    1991 年 35 巻 4 号 p. 303-306
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    骨髄移植8症例のドナーとレシピエントにつき, 移植前後の血液検査に当たり採取された血液少量を分与してもらい, 電気泳動法によって検出される主な血清蛋白型(HP, GC, TF, PIシステム) 血球酵素型 (EsD, ACP, PGD, PGM1, GLOシステム) の変容を検討した. また, 耳下腺唾液蛋白および酵素多型 (Pa, Pb, Pr, Db, PmF, PIF, Amy1システム) についても同様に検討した. ドナーとレシピエント間で異なった多型を示したPI, EsD, ACP, PGD, PGM1システムなどは, 移植後レシピエントの表現型はいずれもドナー型に変化した. しかし, 唾液蛋白および唾液酵素多型は骨髄移植による影響は認められなかった.
  • 櫻林 郁之介, 大門 正博, 橋本 好一, 太田 抜徳, 河合 忠, 和田 守弘, 妹尾 英樹
    1991 年 35 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    全自動血清蛋白分画測定装置が多く用いられるようになってから, 電気泳動図の観察によるM-蛋白の検出, ことに微量M-蛋白の検出が行われにくくなっている. また, 検査結果の数値のみの報告では, 検査結果が臨床家によって十分に活用されるとは限らない. このような状況に鑑みて, セルロースアセテート膜電気泳動法を用いる全自動血清蛋白分画測定装置とコンピュータをオンラインで結んで, 自動分析の結果を用いて, M-蛋白の検出と病態の判定を行うプログラムを開発した.
    M-蛋白の検出のための5種類のプログラムを併用した場合の検出率は通常または多量のM-蛋白を含む血清では27例について100%, 微量のM-蛋白を含む血清でも90% (14例中13例) であった. 病態判定については24例中19例 (79%) について正しい判定結果がえられた.
  • 今井 浩三, 谷内 昭
    1991 年 35 巻 4 号 p. 313-321
    発行日: 1991/08/15
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    IFN-γ処理ヒト大腸癌細胞株BM314を免疫源として新しいMoAbの確立に成功し, これを用いて以下の結果を得た.
    1) MoAb HA58は, 抗ICAM-1 MoAb CL207の認識する85kDの同一対応抗原と反応し, 本MoAbはICAM-1分子に対する抗体であることが判明した. また, MoAb HA58の認識するエピトープは, MoAbCL207のそれとは異なっていた.
    2) 固相化MoAb CL207およびビオチン化MoAbHA58を用いたELISAによる遊離型ICAM-1の測定系を確立した.
    3) 造血器腫瘍細胞表面のICAM-1の発現はB細胞系, とくに骨髄腫系の細胞株で強かった. またT細胞系の細胞株あるいは myeloid 系細胞株では弱いが, ATL細胞株では強かった. mRNAの発現の検討でも, 細胞表面抗原と同様の傾向がみられた.
    4) 血清ICAM-1濃度について検討したところ, 固型癌については, 膵癌, 胆のう癌, 胃癌等で高値例が多く, 陽性頻度も高かった. B細胞白血病では増加しており, B細胞リンパ腫では stage の進行した症例, 白血化した症例で高値を示した. T細胞系腫瘍ではT-CLL, ATLで増加していた.
    5) 血清中のICAM-1の高値と関連する病態は固型癌では肝転移であり, 造血器腫瘍では肝脾腫, 腫瘍細胞の臓器浸潤, 腫瘤形成であり, 予後不良の症例が多かった.
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