ウマTf型間およびその構成バンド間の分子量サイズの異質性や量的変異から, Tf型は3群 (D・F・H型, O・R型およびX型のサブグループ) にグループ化された. この結果をさらに検証するため, 4種類のプロテアーゼ (α-キモトリプシン, V8プロテアーゼ, パパインおよびエンドプロテアーゼAsp-N) を用いたペプチドマッピング法によりウマTf型がサブグルーピング化された. その結果は, 以下の如くであった. 1) 4種類のプロテアーゼによる分解では, Tf-D・F・H型にはほぼ同じ分解パターンが検出された. またTf-O・R型の間には異なるいくつかのペプチド分解パターンが検出されたが, それらはTf-D・F・H型グループより互いに類似したペプチド分解パターンであった. このことから, Tf-OおよびR型間の分化は進んでいるものの, 両Tf型にはTf-D・F・H型群に比べ互いに類似したバンド成分が多く認められることから基本的には同じグループに属すると考えられた. なお, ロバ・Tf成分の分解バンドパターンは, Tf・OとR型にきわめてよく類似していた. 2) Tf・D型とR型のT
+とT
-成分をそれぞれV8プロテアーゼおよびα-キモトリプシンで分解した結果, D型のT
+とT
-成分はほとんど同じ分解パターンを示したが, R型はT
+とT
-成分との間に明確な差異が認められた. 以上のようにペプチドマッピング法による分析から, Tf・O型とR型はTf・D, FおよびH型群とは異なるグループであることが再度確認でき, Tf-O型とR型は新たなサブグループに分けられる可能性が示された. しかし, これら両Tf型はTf-D・F・型グループとは明らかに異なることがわかった. したがって, ここではウマTf型は2つのサブグループ (Tf-D・F・H群とTf-O・R群) に分類されえた. またTf型の構成成分であるT
+とT
-間の構造が基本的に異なることもTf・R型を用いたペプチドマッピングで確認できた. これらのTf構成成分は両者間の濃度的変異や分子量サイズの多様性から推測し, ハプロタイプのような完全連鎖した複数の遺伝子座位によって支配されていると推察された.
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