生物物理化学
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55 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
短報
  • 竹田 真由, 舩渡 忠男, 藤巻 慎一, 岩谷 良則
    原稿種別: 〔短 報〕
    2011 年 55 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/22
    ジャーナル フリー
    RNAの分解は,臨床検体の遺伝子発現の分析を行うにあたって,重要な問題である.とくに,RNAの十分な品質は,定量PCRやマイクロアレイ解析のようなmRNA測定の精度を決定する重要な因子である.RNAサンプルのRNA収量と品質を評価し,マイクロチップ電気泳動システムによるRNA Integrity Number(RIN)を得た.冷凍保存したRNAと培養細胞から抽出したRNAの全サンプルは,9.8以上のRINを示し,アガロース電気泳動においても高分子量であった.また,RINは,凍結融解の繰り返しによる影響を受けなかった.したがって,これらの結果は,RINが保存中のRNAの品質を適切に評価しうる指標であることを示唆している.
特別企画II:臨床検査領域におけるプロテオミクスの現状と未来像
  • 荒川 憲昭, 増石 有佑, 平野 久
    原稿種別: 〔特別企画II:臨床検査領域におけるプロテオミクスの現状と未来像〕
    2011 年 55 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/14
    ジャーナル フリー
    プロテオミクスは,種々の疾患に対する新規な診断マーカーや創薬ターゲット探索の方法として役立っている.著者らは,悪性度の高い卵巣癌である卵巣明細胞腺癌(CCA)に特異的に発現するタンパク質を,CCA細胞株と非CCA細胞株のタンパク質をプロテオミクス的アプローチにより探索した.そして,アネキシンIVを含む様々なタンパク質の発現が CCA 細胞株で増加することを見いだした.これらのタンパク質は,ウエスタンブロッティングや定量的RT-PCR分析によってCCA細胞株で発現上昇することが確かめられた.アネキシンIVのプロモーター解析によって,p53結合モチーフがこのCCA特異的な発現に係わっていることが明らかになった.CCA細胞株のp53遺伝子には変異はなかった.RNAiによってCCA細胞株のアネキシンIVの発現は減少した.アネキシンIV遺伝子はCCA細胞ではp53によって制御されていると言える.CCA細胞からはp53により発現誘導される様々なタンパク質が増加していることが確認された.従って,p53の機能的な状態がCCAのプロテオームの特徴を形成していると考えられる.
  • 福井 崇史, 丸瀬 英明, 高橋 新, 古井 陽介, 権藤 延久
    原稿種別: 〔特別企画II:臨床検査領域におけるプロテオミクスの現状と未来像〕
    2011 年 55 巻 1 号 p. 9-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/07/14
    ジャーナル フリー
    MLPA法は,2002年にオランダのSchoutenらにより開発された,鋳型DNAにハイブリダイズしたプローブをPCRにより増幅するという新しい概念の遺伝子解析技術で,1チューブの反応で最大約40種類までの遺伝子領域のコピー数変化(欠失や重複)を定量的に解析できる手法である.従来のダイレクトシークエンス法などの遺伝子検査法では,数塩基程度の小さな欠失・重複は検出可能であったが,それよりも大きな領域にわたる欠失・重複は検出することができなかった.しかし,MLPA法の登場により,それが可能となった.MLPA法は臨床検査手法としても認知されておりデュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィーの遺伝子検査は,保険適用されている.また,遺伝子検査としてだけではなく,CGHアレイやDNAチップなど網羅的探索研究により絞り込まれたターゲット領域を,多検体で検証する際にも簡便に実施できるため非常に有効である.
児玉賞受賞講演 ミニレビュー
  • 近藤 格
    原稿種別: 〔児玉賞受賞講演 ミニレビュー〕
    2011 年 55 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/16
    ジャーナル フリー
    がんは分子生物学的にそして臨床的に多様性に富んだ疾患であり,同じ臨床病期に診断される症例であっても治療に対する応用性はしばしば異なっている.個々の症例に最適な治療を施すために,がんの個性をより詳細にみきわめるための診断技術が求められている.電気泳動法によって作製された分子プロファイルと臨床病理学的データを統合することによって,がん細胞の個性診断のためのバイオマーカー候補を同定できる.蛍光二次元電気泳動法という新しい技術によって,定量的で,再現性と感度の高い,ハイスループットかつより網羅的なタンパク質発現プロファイルの作製を行っている.他のアプローチとして,抗体を基盤とした発現プロファイルの作製も行っている.大規模な抗体ライブラリーを用いてウェスタンブロッティングを行うというものである.電気泳動法はバイオマーカー開発においてたいへん有用なツールである.
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