日本化粧品技術者会誌
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30 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 池田 進一
    1996 年30 巻2 号 p. 145-152
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧品容器は, その用途によって多くの形態があり, 非常に多くの機能が要求される。
    その中でも技術的な基本機能としては, 品質保持性, 機能・性能があげられる。何故ならば, 化粧品容器である以上, 充填される中味の保護性と適合性, そしてその用途に応じた機能・性能が発揮されることは必須である。
    しかしながら中味について言えば, 構成している原料の種類は非常に多いし, 又, 増々化粧品の効果・効能を追及する為の薬剤が容器に厳しい物理化学特性を求めている。
    一方, 容器についても近年多くの素材や加工方法が開発され, これらが中味に及ぼす影響も少なくない。
    そこでここでは, 化粧品各社が長年にかけて得られた化粧品中味と容器との間の技術的な経験や知見を, 具体的な事例をもって考察してみた。
  • 大林 恵, 岩本 敦弘, 正木 仁
    1996 年30 巻2 号 p. 153-160
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は, マウス由来B 16メラノーマ細胞を用いたチロシナーゼ比活性を指標とするメラニン産生抑制評価法を確立した。さらに, 確立した評価法を用い, チロシナーゼ比活性抑制効果を有する植物抽出液を検索した。その結果, Achillea millefolium, Artemisia copillaris, Eupatorium fortuneiおよびPolygonum cuspidatumについて高いチロシナーゼ比活性抑制効果が認められた。これらの植物抽出液中の有効成分を明らかにするために, ヘキサン, 酢酸エチル, アセトン, エタノール, 水の溶媒を用いてそれぞれ抽出した試料のチロシナーゼ比活性抑制作用を測定した。Achillea millefoliumは酢酸エチル抽出液またはアセトン抽出液に, Eupatorium fortuneiはエタノール抽出液に高い抑制効果が認められた。また, Artemisia copillarisはヘキサン抽出液に, Polygonum cuspidatumは酢酸エチル抽出液に高い抑制効果が認められた。
  • シリコーン側鎖を有する新規ポリマーのマニキュアへの応用
    鈴木 一弘, 朱 信良, 清水 徹
    1996 年30 巻2 号 p. 161-168
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は, 有機溶剤の組成変更という手段をもちいず, 配合する樹脂分の改質により, 速乾性のマニキュアを開発した。これは従来の親油性アクリルポリマーに, 側鎖としてジメチルポリシロキサン鎖を付加した, 新規なグラフトポリマーを応用したものである。開発した新規ポリマーが形成する皮膜は従来にない低い表面付着性を示し, マニキュア製品処方においても, その特徴は充分に発現する。この特徴が速乾性マニキュア具現化の重要な要素であり, 同時に擦過強度の向上等の化粧持ち改善に大きく寄与している。又, この新規グラフトポリマーが, マニキュア皮膜中の溶剤残留性を大幅に低減し, 良好な気体透過1生を付与する効果を示すことは, 爪病変の防止等の安全性向上, マニキュア塗布時に多くのユーザーが指摘する負担感の低減に有効であり, マニキュアの品質向上にも大きく寄与するものである。
  • 西村 桂一, 北田 好男, 金田 泰雄, 村松 宜江, 小川 一, 飯島 敬, 高倉 伸有
    1996 年30 巻2 号 p. 169-175
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    四季の変動が非常に大きいわが国において, 人の肌色は四季の変化に従って変動することが推定されるが, その変化が太陽光量の増減による皮膚メラニン量の変化によるものか, 温度変化による皮膚血流の変化によるものかは, 非常に興味深い点である。
    ある種の生物では, 季節の変動を太陽光の量で認識して, 来たる季節に備えることが知られているが, 我々はヒトには太陽光の変化により, 来たる季節に向かって皮膚血流量が変動をきたす「季節先取りプログラム」ともいうべき働きの存在を想定し, それに伴って肌色が変化すると仮定した。
    そこで今回, 太陽光の変化曲線と一致する「東洋の季節」に従った測定時期を設定し, 色彩色差計を用いて肌色の季節変動を測定した。
    男性の通年測定データから, 肌色の色相が「東洋の季節」に於ける春夏と秋冬で二相性に変動するという結果が得られた。またその変曲点は立春, 立秋の頃と推定された。
    興味あることに, この変動は, 顔面等の露出部位だけでなく, 前腕や上腕のような非露出部でも認められた。この結果から, 肌色の季節変動の主原因は生体側の血流動態の変化によるもので, 外部からの直接的な光刺激に伴う皮膚メラニンの増加ではないと考えられる。この事から, 長時間人工光環境にさらされているヒトにも, 太陽光の変化を感知し, 生理反応を示す「動物」としての季節対応システムが今なお残されていることが示唆された。
    女性においては, 頬の色相変化は男性と同様の変化を示したが, 額部では夏から冬にかけて色相値の変動はほとんど見られなかった。この違いは, 女性の日焼け防止に対する意識や行動, 性周期に伴う肌色変動などが影響しているものと考えられる。
    今回の実験結果を, 化粧品的な立場から考えた場合, 肌色は春分, 秋分にはすでに夏型, 冬型となっていることから, 季節によって変化する肌色に合わせたメーキャップを行うためには, 東洋の季節に合わせて, 現状よりも1-2ヵ月早めに, 色号数の取り替えを行うことを提案したいと考える。
  • ファンデーションの塗布色予測
    川口 由起子, 金子 治
    1996 年30 巻2 号 p. 176-183
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    従来メーキャップ製品を肌に塗布したときの色 (化粧肌色) は, 実際に塗布した後, 視感判定あるいは測色を行って始めて把握できるものとされてきた。それに対して我々は, 化粧肌色の反射率をKubelka-Munkの理論を基に予測する方法を報告している。しかしながら, 化粧肌色の反射率を予測するために必要なデータベース作りは容易ではない。その上事例を重ねるに従って, 幾つかの問題が生じてきた。
    そこで, 報告以後生じた問題の解決を目的とする塗布色予測方法・予測作業の見直しを行った。更に事例として, 健常肌の化粧肌色だけでなく新たに青あざ (太田母斑), 赤あざ (血管腫) にファンデーションを塗布する場合についてもこの方法が適用できるか否かを調べた。
    その結果, 塗布色予測方法・予測作業の見直しに関しては, ファンデーション塗膜の印刷が再現よくできる印刷機の新規開発, 固有反射率採取方法の変更, Saundersonの補正式で取り扱うK1, K2の設定値の大きさと予測値の関係が把握できるソフトと最新のレーザ膜厚計の導入という4つの改良を行うことで, 従来の問題点をクリアした。また, 健常肌以外のあざの部分についても, 実際にメーキャップ製品を塗布することなく化粧肌色が推定できることが確認された。
  • 塚田 弘行, 武田 あきら, 宇山 〓男
    1996 年30 巻2 号 p. 184-189
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    皮膚の微小循環は, 皮膚に栄養や酸素を輸送し, 体温調節をする働きがあることから, 微小循環の血流の状態が皮膚表面に反映されていると考えられる。しかしながら, 皮膚の微小循環の血管構築は複雑で, 血流も一定でないことから皮膚の表面状態との対応はつかなかった。そこで, 複雑な微小循環を計測するために, 深度別血流計測が可能なプローブを考案した。このプローブの特徴は, 一度の装着で同一部位の6点の深さの血流を測定できることである。このプローブをもちいて, 様々な肌状態 (普通肌, 肌荒れ, 敏感肌, 赤ら顔, ほてった状態, 血管が透けて見える状態, 血管腫, 太田母斑) の血流計測を行った。
    この結果, ほてりによる一過性の血流状態と血管が透けて見える恒常的な血流状態の違いが明確になった。このことは, プローブの有効性を示すものである。
  • 石井 博治, 三上 直子
    1996 年30 巻2 号 p. 195-201
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    表皮角質層の水分保持が皮膚を健やかに保つために重要であることは古くから知られている。近年表皮角質層の水分保持に角質細胞間脂質が重要であることがあきらかとなって久しい。これら角質細胞間脂質構成成分の内, セラミド, コレステロール, コレステリル誘導体は細胞間でのラメラ形成能に深く関与しており, 形成されたラメラ間に水分保持し, 機能を発揮しているとされている。今回, 我々は, 細胞間脂質であるコレステリル誘導体に着目し, 特にコレステリルエステル類の荒れ肌に対する有用性を評価した。有用性評価は, ラウリル硫酸ナトリウムにより荒れ肌を誘発し, 誘発された荒れ肌部位にコレステリルエステル類を塗布し, 被検部位の角質水分量と経皮水分損失量の経時変化から評価した。その結果, コレステリルエステル類のうち, アシルグルタミン酸コレステリルエステル (AGCE) は荒れ肌の水分保持機能に対して優れた回復効果を示した。らに, 実際の表皮脂質複合体を想定したモデルとセラミド代替としてAGCEを配合したモデルは荒れ肌に対して同等の効果を示した。
  • 清水 敏之, 瀧下 満之, 峯尾 征次, 久保 正道
    1996 年30 巻2 号 p. 202-206
    発行日: 1996/07/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    高圧ホモジナイザーは, 微細エマルションやリポソームの調整等で, 注目されている。しかしながら, 現在販売されている装置では,
    1) 高圧なので大きなエネルギーを消費すること
    2) 予備乳化が必要であること
    3) 研究用の装置でもおおがかりで使いにくい等の問題点があった。これらの問題点を改良するため, ポンプシステムには今や成熟期に達している高速液体クロマトグラフのシステムを利用し, キャビテーションを利用しないカラム形式の新しいチェンバーを考え, 低圧下の条件において, 予備乳化なしで, 簡単に既存の高圧ホモジナイザーと同等の性能が得られた。このチェンバーは高速液体クロマトグラフイー的手法を利用することにより容易にスケールアップも可能であり, この技術を利用すると化学分析技術のフローインジェクション分析に相当するデットボリュームの少ない新しいフロー系乳化技術の構築が期待できる。
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