日本化粧品技術者会誌
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32 巻, 1 号
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  • 滝脇 弘嗣
    1997 年 32 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    皮膚科学では病理組織学や生化学, 細胞生物学などの手技を用いたin vitroの研究が中心であり, in vivoで行われる生理学的研究は少なかった。その理由のひとつに, 生理学的検査に必要な方法が普及していなかった事があげられるが, 電子工学やコンピューターの飛躍的発展に伴って様々な機器が開発・実用化され, 皮膚の性質や状態を非侵襲的に計量し, モニターできるようになった。工学的手法を用いて皮膚をin vivoで計測する新しい分野は皮膚計測工学と呼ばれ, 皮膚科の研究や臨床へ応用されつつある。その現状や問題点について概説した。
  • 道喜 角史, 戸谷 永生
    1997 年 32 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    乳化剤と油性剤の組み合わせがしばしば調製されるエマルションの粒子径と安定性に影響を与える。本報告は, フェスターらによって報告されたCAPICO法を用い各種エマルションを調整し, その粒子径を島津製作所製粒度分布測定装置SALD-2000Aを用い評価した。乳化剤はアルキル鎖長がC12-22のPOE (10-20) アルキルエーテルを用い, 油性剤は炭化水素, ジアルキルエーテル, モノ-, ジ-およびトリエステルを配合した。乳化剤/油性剤/水は1:3:6の比率で混合し, 油性剤に2-エチルヘキサン酸セチルあるいはヘキサデカンを50%配合し転相温度を65-85℃になるように調整した。また, 第三成分としてグリセリン, 1, 3-ブチレングリコール, プロピレングリコール, エタノールおよびリン酸L-アスコルビルマグネシウムを選択した。
    実験の結果, イソプロピルミリステートを含有したエマルションがどの構造の乳化剤を用いても100nm以下の粒子径を示した。微細なエマルションを得るためにはともに低い, あるいは高い無機性を有する油性剤と乳化剤の組み合わせが最適で, 逆に20EOの乳化剤と無機性が低い油性剤あるいは, 10EOの乳化剤と無機性が高い油性剤の組み合わせは, 得られるエマルションの粒子径が大きくなった。粒子径と保存安定性の関係についても更に検討を行った。
  • 山本 宏, 下里 功, 岡田 正紀
    1997 年 32 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は, 官能評価, 毛髪表在脂肪酸分析, 頭のヘッドスペース分析結果より, 通常生活者の頭のニオイ原因物質は, 皮膚常在菌が産生する脂質分解酵素リパーゼにより皮脂中のトリグリセライドが分解されて生じる主に低級から高級にいたる脂肪酸類であると考える。我々は, 微生物及び試薬リパーゼによるトリグリセライド分解による脂肪酸生成モデルを開発, このモデルを評価法として用い, 種々の香料について, 脂肪酸生成に与える影響を調べた。その結果, 脂肪酸生成を抑制する数多くの香料を見いだし, それらの香料を賦香したシャンプー及びリンスの実際使用における頭のニオイ抑制効果を確認した。
    また, 微生物やリパーゼの作用により, いくつかの香料が脂肪酸と反応してエステルを生成することを見いだした。
  • 角層剥離パターンの数量化
    松本 雅之, 林 照次, 新井 清一
    1997 年 32 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    テープストリッピングによって剥離された角層の状態には様々なパターンが存在する。この剥離角層パターンの多様性は角層や表皮内部の状態を反映して現れると考えられる。そこで, 剥離角層パターンを定量的に評価することで皮膚性状に関する知見を得ることが可能であると考え, 今回我々は画像解析を用いて剥離角層パターンの数量化法の開発を行った。
    テープストリッピングによって採取された角層の画像を透過光を用いて画像解析装置に入力し, 解析画像とした。この解析画像に対して剥離量, 厚さと剥離状態の不均一性に関する数量化を試み, 次の5つのパラメーターを設定した: 1. 剥離角層量, 2. 剥離角層厚さ, 3. 重層剥離面積不均一性, 4. 重層剥離位置不均一性, 5. 剥離量分布不均一性。算出された剥離角層パターンの各パラメーターはいずれも, 角層水分含有量, 吸収水分保持能と負の相関, 経皮水分蒸散量 (TEWL) と正の相関の傾向が見られ, 剥離角層量が増加し剥離状態が不均一になるほど角層水分含有量, 吸収水分保持能は低下し, 経皮水分蒸散量は上昇することが分かった。また, これらの剥離角層パターンの画像解析による数量化法は, 保湿剤の効果の評価に有用であった。
  • 岡野 みのる, 岡 秀年, 畠山 樹, 遠藤 隆一
    1997 年 32 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    パーマネントウェーブにおける, 毛髪への還元に及ぼすチオールの構造について検討を行い, 以下のような知見を得た。
    1) チオールの疎水性パラメータlogPを測定したところ, パーマネントウェーブの効力と高い相関性が認められた。チオールの毛髪への還元作用は, チオールと毛髪の疎水性相互作用が深く関与しているものと考えられた。
    2) チオールの毛髪への還元作用は, SH基の酸性度に深く関与していると考えられているが, 分光滴定法によりSH基の酸性度を測定し, パーマネントウェーブの効力との関係を検討した結果, 有意な相関は認められなかった。また, Ellman試薬 (5,5′-dithiobis (2-nitrobenzoic acid) 以下, DTNB) を用いチオールとDTNBの反応速度を検討したところ, 反応速度と測定したチオールのSH基の酸性度は, 非常に高い相関を示し, チオールとジスルフィドの求核置換反応の反応速度は, チオールのSH基の酸性度に依存することが確認された。これらの結果より, パーマネントウェーブにおける毛髪への作用は, 液相均一系反応に見られるような反応速度律速ではなく, 拡散速度が律速となっていると考えられる。
  • 山下 美香, 亀山 浩一
    1997 年 32 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    エマルションの微細構造を直接視覚的に解析する方法は, 従来からの物性測定とともに, 化粧品製剤の開発に重要な知見をもたらすものと考えられる。本研究で我々は, クライオユニットを装備した電界放射型走査電子顕微鏡 (Cryo-FESEM) を用いて, エマルションの微細構造を観察する方法について検討した。観察には, 活性剤, 高級アルコール及び水から成るモデル処方のO/Wエマルションを用いた。再現性良く平滑な観察試料面を作製するために, スラッシュ窒素で凍結したエマルションをクライオミクロトームで薄切して観察試料とした。その結果, このエマルションが球状のラメラー構造を形成していることを明瞭に観察することができ, 再現性良くエマルションの構造解析を行う方法を確立できた。本方法により, エマルション粒子の内部やその周囲の微細な構造を直接視覚的に解析でき, エマルションの組成とその構造との関係や流動特性の発現機構の解明が可能となる。
  • 正木 功一, 戸谷 永生
    1997 年 32 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1998/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧品の製品性能のうち感触 (官能) で評価される特性は, その効能効果と並び, 使用者にとって最も重要な因子の一つである。そして使用感の評価は, 官能評価法を始めとし, 近年種々の測定機器によって, 正確に捉え数値化しようとする試みが行われている。
    今回, 各種油性剤や油性剤を配合した処方系について, 使用感の重要な一因子である「なめらかさ」といった感触を, 平均摩擦係数 (MIU) を指標として比較検討した。塗布の直後, 中期, 終盤及び塗布後にヒトが感じるなめらかさを, 数値化するため作成した塗布モデルによりMIUを測定し, 比較的粘度の高い油性剤が処方の塗布時によりなめらかさを与え, 塗布後30分のなめらかさは, 油性剤自身に起因するところが大きいものと考えられた。
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