パーマネントウェーブにおける, 毛髪への還元に及ぼすチオールの構造について検討を行い, 以下のような知見を得た。
1) チオールの疎水性パラメータlog
Pを測定したところ, パーマネントウェーブの効力と高い相関性が認められた。チオールの毛髪への還元作用は, チオールと毛髪の疎水性相互作用が深く関与しているものと考えられた。
2) チオールの毛髪への還元作用は, SH基の酸性度に深く関与していると考えられているが, 分光滴定法によりSH基の酸性度を測定し, パーマネントウェーブの効力との関係を検討した結果, 有意な相関は認められなかった。また, Ellman試薬 (5,5′-dithiobis (2-nitrobenzoic acid) 以下, DTNB) を用いチオールとDTNBの反応速度を検討したところ, 反応速度と測定したチオールのSH基の酸性度は, 非常に高い相関を示し, チオールとジスルフィドの求核置換反応の反応速度は, チオールのSH基の酸性度に依存することが確認された。これらの結果より, パーマネントウェーブにおける毛髪への作用は, 液相均一系反応に見られるような反応速度律速ではなく, 拡散速度が律速となっていると考えられる。
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