日本化粧品技術者会誌
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32 巻, 2 号
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  • 山村 達郎
    1998 年 32 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    肌の表面状態は表皮の角化過程に大きく影響される。そのため, 肌状態を正確に評価するためには表面の物理的なパラメーターだけでなく, 表皮のターンオーバーを反映している生化学的なパラメーターについても測定する必要がある。皮膚表面の角質細胞の形状, 有核率, 剥離密度, 細胞面積, 多重剥離度は, 表皮の角化過程を判断するのに非常に有用である。また, 角質層のプロテアーゼ活性や過酸化物消去能も表皮のターンオーバーを反映している。これらの生化学的なパラメーターと皮膚表面水分量, 皮脂量, TEWL値等の物理的パラメーターを組み合わせることにより, 肌状態を細かく分類することが可能となった。
  • 田中 廣通
    1998 年 32 巻 2 号 p. 124-130
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    現在, 市場にはゲル, 液体, フィルム, エアゾール, セラミックなど用途に応じて様々な基材を使用した芳香剤・消臭剤が上市されているが, これらの剤型について香料揮散体としての特長及び長所, 短所を述べ, その中でも最もよく使用されているゲル基剤, カラギーナンゲルについてサワデーを例に芳香剤として求められる物理化学的特性, 経時安定性, 芳香機能などについて説明する。また, サワデー発売から現在に至るまでのゲル芳香剤の技術的な進歩, 特に長年の課題である使用初期から後期に至るまでいかに一定の香調の香りを持続させるかについて過去当社が取り組んできた研究内容及び今後の課題について概説する。
  • 岡田 文裕
    1998 年 32 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧品の研究・開発や生産場面における微生物試験は, その機能・品質を確保するために欠くことのできないものである。しかし, 一般に用いられている試験法は, 繁雑な操作を要し, またある程度の培養期間をとるため, 判定に長い時間がかかる。このことは, 研究・開発や生産の効率を考える上において, 非常に重要な課題となっている。ここでは, こうした問題に対処するための資料として, 最近の簡易・迅速な微生物試験法を概説すると共に, 化粧品の研究・開発や生産場面での応用例として特に熱測定を中心に解説する。
  • 宮地 保好, 小山 匡子, 青木 好男
    1998 年 32 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    毛髪素材の範疇を人工毛髪にまで広げ, そのパーマネントウェーブ評価を各種行った。その結果, 人工毛髪の場合, 水素結合架橋のみによるウェーブがかかる場合があり, ウェーブの“もち”まで考慮した場合, 人毛のウェーブの挙動と水素結合架橋による人工毛髪のウェーブの挙動とは大きく異なること, このウェーブの形状保持性の挙動は, 従来のスパイラル法やキルビー法では評価できないことが判明した。
    そして, ウェーブの“もち”まで考慮したパーマネントウェーブの評価法として, スパイラル法にウェーブ保持率 (W. H.: Wave Hold) の組み合わせを考案し, 各種毛髪素材のウェーブ性の挙動の差別化が可能となった。そして, 人毛とポリアミノ酸人工毛髪は両者のパーマネントウェーブが非常に類似したものであることが確認された。
  • 渋谷 満, 大石 多恵子, 山本 信也, 長谷部 進
    1998 年 32 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    低角度レーザー光散乱検出器 (LALLS) を用いたサイズ排除クロマトグラフィー (SEC/LALLS) により, 市販化粧品用粉末及び医薬品用注射剤中のヒアルロン酸 (HA) の平均分子量 (Mw) と分子量分布を測定した。用いたカラムは網目状に架橋された親水性樹脂からなるTSK gel G6000PWXL (30cm) を4本連結し, これに移動相として0.2M硫酸ナトリウム水溶液を毎分1.0mlで流した。このSEC条件によりHAの保持時間と分子量の間にはSECの原理に見合った適切な関係が得られた。70℃での加熱処理によるHAの低分子化の過程については高分子量になるにつれて分解率が高くなることを認めた。測定した8種の化粧品用HA粉末のMwと粘度平均分子量は良く一致した。HA含有注射剤からの前処理は移動相に希釈するだけであり, この溶液を直接SECに注入した。今回測定した8種の化粧品用HA粉末と4種の医薬品用HA注射剤の中では, 注射剤からのHAが最も低い分子量分散度を示した。SEC/LALLSはHAとこの関連製剤の分子量分布測定に有用であることがわかった。
  • 星野 拓, 成 英次, 小出 千春, 荒金 久美
    1998 年 32 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    B 16メラノーマ細胞を用いて, コウジ酸及び油溶性甘草エキスの併用によるメラニン生成抑制効果について検討した。その結果, コウジ酸と油溶性甘草エキスを併用すると, 両者を単独で添加した場合に比較して相加的にメラニン生成を抑制することが明らかとなった。
    さらにこれら両薬剤の併用効果の詳細を探るため, メラニン生成制御酵素の一つであるTRP-2 (Tyrosinase relation protein-2) に対する両薬剤の作用を検討したところ, コウジ酸, 油溶性甘草エキスともにTRP-2活性を濃度依存的に抑制した。また, コウジ酸と油溶性甘草エキスが同じメラニン生成抑制率を示す濃度でのTRP-2活性抑制率は, それぞれ7.7%, 21.2%であったことから, 油溶性甘草エキスの方がメラニン生成過程においてTRP-2活性を強く阻害していることがわかった。さらにTRP-2に対する両薬剤の併用効果について検討した結果, コウジ酸及び油溶性甘草エキスを併用すると, 両者を単独で添加した場合に比較して相加的にTRP-2活性を抑制することが明らかとなった。
  • 白石 美紀, 神田 賢治, 奥村 達也, 西谷 宏, 高松 翼
    1998 年 32 巻 2 号 p. 160-169
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    複雑な混合物から成る化粧品の分析法として簡単な前処理のみで多成分についての情報が一斉に得られる自動分析システムを, 市販ソフトおよび独自に改編したデータベースにより構築した。基剤分析には13C-NMR, 微量配合の薬剤・添加剤の分析にはLCを, それぞれ適用し, 検索パラメータとして前者には化学シフト, 後者には保持指標 (RI) および2波長吸光度比を用いた。開発した簡易システムは, 充分な迅速性と精度を有することが確認できた。
  • 平山 賢哉, 山本 美恵子, 山崎 和広, 木村 知史
    1998 年 32 巻 2 号 p. 170-177
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    リップカラーの色選択や仕上がり評価には, 多くのイメージワードが用いられている。これらを用いた評価の際には, そのイメージに対する適合度の評価と同時に「似合う」についても評価しているものと思われる。そこで, 我々は「似合う」ことは重要であると考え, 「似合う」と評価されるリップカラー色の規則性の有無について検討した。
    「似合う」リップカラー色の評価は種々の要因が影響すると考えられるが, その中でも顔面の肌色との関係が最も重要であると考え, 本研究ではリップカラー色と肌色との2色配色の関係に絞り実験を行った。実験は, 女性の顔写真にCG (コンピュータグラフィックス) によりリップカラーの塗布状態をシミュレートした画像を作成し, これを被験者に提示し「似合う」についての評定を求めた。
    得られた評定を, 色彩調和理論を応用した解析や, 数量化I類を用いた解析を行った。その結果, 「似合う」の評価には, リップカラー色と肌色との色差, 特に明度差の正負の関係が重要であることを見いだし, 色彩調和に関する規則性の存在を示唆する結論を得た。
  • 橋本 悟, 栗原 浩司, 佐藤 芳代, 田川 正人, 田村 幸吉, 池田 孝夫
    1998 年 32 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧料用油相成分として有用な, 月見草油, ククイナッツオイル等の高度不飽和油を, 安定に化粧料に配合することを目的として, 抗酸化力を有する植物抽出物を抗酸化成分に選定し, O/Wエマルジョン中で有効な, 抗酸化剤及び抗酸化システムの探索を行なった。リノール酸メチルを含むO/Wエマルジョンを評価系とした本報告において, 著者らは, O/Wエマルジョン系での植物抽出物系抗酸化剤の抗酸化力とそれらの分配挙動が密接な関係にあることを明らかにして, 更に, 親油性のポリグリセリン脂肪酸エステルが, O/Wエマルジョン中で, 抗酸化剤を, 効率良く, O/W界面に配向させることを見いだし, 結果として, 植物抽出物のO/Wエマルジョン中での抗酸化力を増大させることを確認した。
  • 宮脇 維章, 酒井 剛, 小西 宏明
    1998 年 32 巻 2 号 p. 186-189
    発行日: 1998/06/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    従来, 口紅の酸化安定性評価は, 官能評価やAOM試験等を利用して判断されている。しかしながら, 官能評価の結果は評価パネルの水準に左右され, AOM試験は結果が得られるまでに多くの期間を必要とする。そこで, 我々は示差走査熱量測定 (DSC) により, 口紅の酸化安定性の評価法を検討した。DSCにより口紅の酸化誘導期を求め, 加速試験において口紅から変臭が発生するまでの時間と対比した。その結果, 酸化誘導期が短い口紅は変臭発生までの時間が短かった。さらに, 酸化防止剤を添加した口紅の酸化誘導期は無添加品と比較して酸化誘導期が長くなり, 変臭発生までの時間も長くなった。これらの結果より, DSCによって求めた酸化誘導期から, 口紅の酸化安定性を短期間で予測できると考えた。
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