日本化粧品技術者会誌
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33 巻, 1 号
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  • 池山 豊, 川田 典子
    1999 年 33 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    商品の開発過程において, ユーザーに好まれる品質設計の追求のために官能評価による品質と嗜好の調査が頻繁に行われる。官能評価法の中でもSD法は, 品質や嗜好を数量的に表現することが可能であるため, ユーザーならびに企業サイドの双方に対してしばしば用いられてきた。このとき, 使い手としてのユーザーが用いる評価用語=一般用語と, つくり手である企業サイドの評価用語=専門用語それぞれの空間が一致している必要がある。香り製品を例にあげれば, 双方の評価用語空間のギャップが著しく大きいと思われ, このような場合には, SD法によるユーザーの評価は嗜好を除いて有用なデータとはなりえないことが多い。そこで, ユーザーの嗜好データと企業サイドの専門用語空間を直接解析する方法としてPREFMAPを紹介し, オードトワレの官能評価データを例にその有用性を探ることにした。
  • 小山 純一, 仲西 城太郎, 佐藤 純子, 野村 純子, 鈴木 裕美子, 増田 嘉子, 中山 靖久
    1999 年 33 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
  • メラニンのみによる色素沈着画像の再構成
    川口 由起子, 金子 治
    1999 年 33 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    色素沈着画像には, メラニンによる呈色だけでなくその他の要素による呈色も含まれていることが多い。色素沈着の色の濃さを数値化する場合は, メラニンのみによる色素沈着の呈色度合いを対象にすることが望ましい。皮膚の分光反射データから求めた反射光構成因子V1, V2の重み係数M1, M2は, それぞれ相対的に深い所 (基底層周辺) に存在するメラニン量, 相対的に浅い所 (基底層より上層) に存在するメラニン量を反映している。皮膚表面から深さ方向に存在する場所が異なるメラニンによる呈色を分離し, 画像化する方法を考案した。メラニンによる呈色画像の平均輝度を算出し, 平均色素沈着濃度と定義した。また, 画像を構成している画素の輝度に関する頻度分布の形を二つのパラメータで表現する方法を開発し, 平均色素沈着濃度は等しいが輝度の頻度分布が異なる画像の色素沈着のプロファイル表示を可能にした。
  • 黒田 秀夫, 大場 愛, 落合 道夫, 釈 政雄
    1999 年 33 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    われわれはポリスチレンの側鎖に糖が結合した糖鎖高分子の生物学的特性を検討した。4種の糖鎖高分子のうちラクトース側鎖を有するポリマー (PVLA) のみが細胞培養系で線維芽細胞の接着を有意に増加させた。また, PVLAは細胞外マトリックス様の培養基質として培養皮膚細胞の増殖促進とコラーゲン合成能およびグリコサミノグリカン (GAG) 合成能の増加作用を示した。動物皮膚に対してもPVLAは表皮細胞分裂活性の増加作用を示し, UVB照射による光老化皮膚表面状態の改善作用を示した。さらに1% PVLA配合クリームの1ヵ月間使用テストで中高年女性の顔面皮膚粘弾性を有意に増加させたことから, 抗老化に有効な素材であると考えた。
  • 新本 浩一, 本多 庸悟
    1999 年 33 巻 1 号 p. 48-58
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    肌の状態を客観的に計測し評価することは, 効果的な化粧品開発を行ううえできわめて重要な課題の一つである。とくに肌の評価を行ううえで, しわやきめに代表される肌表面の3次元形状を知ることは重要である。近年になって, 肌表面形状の計測を行うための, 画像処理による計測手法が数多く提案されている。しかし, これら従来の手法には, 肌表面のレプリカしか計測することができない, 被験者を長時間拘束する必要があるなど多くの問題点があり, 肌表面特性を高速かつ正確に計測することはできなかった。この論文では, 肌表面形状を直接かつ高速に計測するための, 従来にない新しい手法を提案する。この手法では, 肌の直接計測を実現する。光源方向を変化させて撮像した複数の単眼視濃淡画像から, 対象物体全面の法線ベクトルを決定し, 積分することによって形状の復元を行う。従来の類似の手法では, 肌のように複雑な形状と色彩変化をもつ物体の3次元形状を復元することは困難であった。しかし, 提案した手法では, 空間ベクトルを用いて解析解を導くことで, 複雑な形状の復元を可能とする。さらに, 対象物体が色彩変化をもつ場合においても, 表面自由エネルギーに基づく新しい拘束条件を導入することによって, 表面反射係数の推定を行い, 復元を可能とする。また, 計測の高速化を実現するために, 対象物体をカラーで撮像し, 波長範囲での分割を行うことで, 複数画像の同時計測を可能とするとともに, 対象物体の色によって発生する問題を回避するための理論式を提示する。これら提案した手法に基づき計測装置を作製するとともに, 実際にさまざまな対象の形状を計測した。この装置は, 撮像時間0.03秒, 平均自乗復元誤差0.0026という高速かつ良好な結果を示し, 提案した手法は従来手法に比べ明らかに有効であることが示された。
  • 紺野 義一, 菅谷 良夫, 広部 みどり, 外尾 恵美
    1999 年 33 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    転相温度乳化法は, ノニオン界面活性剤の温度による親水性・親油性のバランスの変化を利用した乳化法である。本研究では, 乳化剤としてテトラオレイン酸POE (n) ソルビット (n: 30, 60) およびPOE (20) 硬化ヒマシ油を用いて, 転相温度乳化法により各種油剤でエマルションを調製し, 粒子径の測定や経時安定性を評価した。実験の結果, 粒子径200nm以下の微細なエマルションを得るには, 乳化剤と油剤の組合せが重要であった。微細エマルションの安定性に関しては, POE硬化ヒマシ油で得られるエマルションは良好であるが, テトラオレイン酸POEソルビットでは油剤種により異なった。また, 上記二つの乳化剤を混合して用いれば, 各種油剤で経時安定性の良好な微細エマルションが得られる。
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