日本化粧品技術者会誌
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34 巻, 3 号
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  • 池本 毅
    2000 年 34 巻 3 号 p. 231-240
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    様々な糖類が古くから保湿剤や界面活性剤の親水基として化粧品に汎用されている。近年においてもキシリトール, トレハロースやラフィノースなど新しい機能を有する糖類が化粧品素材として注目を集めている。一方, 植物は様々な化合物を配糖体として蓄え機能的に活用していることが知られている。配糖体の中にはアルキルグルコシドやアルブチン, ビタミンCグルコシドなどすでに化粧品に応用されているものもあるが, その特性を活用することにより新たな化粧品素材の開発が可能であると考えられる。ここでは, 天然に存在する配糖体であるエチルグルコシドのそれぞれの構造異性体 (α体とβ体) と, いくつかの香気成分配糖体について得られた知見を中心に, その化粧品への応用についても紹介する。
  • 社会心理学的展望
    大坊 郁夫
    2000 年 34 巻 3 号 p. 241-248
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顔の魅力は, 身体的特徴にのみによって形成されるものではなく, 社会的脈絡や文化によって大きく影響される。多くの研究は, 進化によって築かれた民族的な同一性と顔の形態特徴によって顔の魅力が形成されることを示している。日本人は, 歴史的に外見的特徴自体および外見的美を表現することに抑制的であり, 包括的な平等さを重視する傾向がある。しかし, 外見美に無関心なわけではない。このような間接性を重視する文化は, 欧米, 他のアジアとも異なるものであり, 日本人の同調性, 集団主義的傾向を示唆する。外見美や化粧の効用の社会心理学的研究において, 個人の特徴や文化的影響を十分に踏まえる必要がある。さらに, 顔の形態特徴に加えてコミュニケーション性への視点も重要である。
  • 井上 さくら, 山本 美恵子, 山崎 和広
    2000 年 34 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    個性を生かした化粧をするためには, 顔の特徴を認識し, その特徴に基づいた魅力を引き出す化粧をする技術が必要となる。本研究では, 人が顔全体のパターンを見る際に重要な特徴を抽出し, その特徴を顔画像から客観的に評価する技術の開発を試みた。研究対象は20代日本人女性とした。まず顔の認識に重要な特徴を知ることを目的に実験1を行った。被験者は「似ている」という基準で112枚の顔写真を分類する課題を行った。クラスター分析で解析した結果, 顔は5分類された。その際「目の大きさ印象」「目より下の顔輪郭印象」が分類に重要な特徴であると仮定した。実験2では, 被験者は実験1と同じ顔写真を上記2印象で評定した。得られた印象評定値を目的変数, 顔形の計測値を説明変数として重回帰分析を行い, 10ヵ所の計測値によって印象評定値を推定した。さらにこの印象を2軸とした顔形態マップを作成した。顔をマップにプロットしたところ, 8割近い正解率で5分類され, 仮定した印象とマップの妥当性が確認された。このマップを使うことによって誰でも顔の特徴を客観的に知ることが可能となる。この結果は個性を生かすための化粧技術の一助となるだろう。
  • 内野 正, 徳永 裕司, 安藤 正典
    2000 年 34 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    塩酸プロカインおよび塩酸ジブカインは局所麻酔剤として広く用いられているが, 昭和61年の厚生省通知 (昭和61年3月12日薬審2第100号) により化粧品への配合禁止成分となっている。われわれは配合禁止成分の有無を効率よく確認し, 化粧品の安全性を確保するために塩酸プロカインおよび塩酸ジブカインの高速液体クロマトグラフィーによる定量法を確立し, 化粧品への応用について検討した。化粧水や乳液およびクリーム中の塩酸プロカインまたは塩酸ジブカインを水またはメタノールで抽出し, ODSカラム (Shiseido CAPCELL PAK C18, 4.6×250mm), 移動相として50mMリン酸塩緩衝液 (pH 5)/アセトニトリル混液 (37:3) または (65:35), 検出器として紫外吸光光度計 (測定波長296nmまたは228nm) を用い, 高速液体クロマトグラフィーで分析した。この方法を用いることにより, 化粧水や乳液およびクリーム中の塩酸プロカインまたは塩酸ジブカインを原料の影響もなく定量することができることを明らかにした。
  • 妹尾 正巳, 竹本 裕子, 飯田 一郎, 菅谷 良夫, 神宮 英夫
    2000 年 34 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    スキンケア製剤がもたらす主たる効果の一つに感情変化がある。「使って気持ちいい」というのがそれである。スキンケア製剤を評価する際には, 物性や肌効果の評価, 嗜好の調査などはよく行われるが, この「気持ちいい」といった「感情」に対する評価はあまり行われていない。そこで, スキンケア製剤の代表的アイテムである「洗顔料」「化粧水」「乳液」の3アイテムを使用した時の感情変化 (快-不快) を, 「マグニチュード推定法」と「プロトコル分析」を用いて時系列的に検出する試みを行った。結果, 感情の変化は各アイテムによって質・量ともに異なった挙動を示し, 「洗顔料」「化粧水」では瞬間的な「さっぱり感」が, 「乳液」では使用直後から持続する「落ち着き感」が特徴的であった。また, これらの結果はパネルの属性によって異なる傾向がみられた。今回の実験において感情変化がとらえられたことは, 将来的には商品開発時における新たな評価法への応用につながるものと考えている。
  • 辻 尚子, 福田 優子, 北原 隆, 森脇 繁, 武馬 吉則
    2000 年 34 巻 3 号 p. 283-290
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    10代-60代の健常女性, 計74名について下肢の肌診断を行い, 下肢のむくみ, 血管浮き, 体毛, 下肢部皮膚トラブルと年齢との関係について検討した。下肢のむくみは脛骨上を押圧しての圧痕スコアにより評価し, Bモードによる皮膚厚・皮下組織厚との関係を調べた。その結果, 年齢が高くなるに従って圧痕スコアは高くなり, むくみやすくなる傾向が認められた。皮膚厚は年齢が高くなるに従って薄くなる傾向が認められ, 皮下組織厚には年齢との相関が認められなかった。押圧による皮膚・皮下組織厚の変化は, 皮膚では年齢との相関は認められなかったが, 皮下組織では年齢が高くなるに従って変化量が大きくなる正相関の傾向が認められた。下肢後側の血管浮きの目立ちを写真上でスコア化した結果, 年齢が上がるに従って目立つようになり, ひどいものでは静脈瘤を形成しているような状態が認められた。その他の下肢部皮膚トラブルに関しては, 色素斑・色むらが年齢が高くなるに従って増える傾向にあり, 肌荒れ・乾燥・テカリ・肉割れは年齢との相関は認められなかった。逆に毛穴目立ち・埋没毛・毛包炎といった毛穴周辺のトラブルは若年層に多い傾向があり, 体毛除去処理との相関が非常に高かった。
  • 松崎 文昭, 吉野 修之, 梁木 利男, 松本 俊, 中島 英夫, 西山 聖二
    2000 年 34 巻 3 号 p. 291-298
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    化粧品において皮膜剤として用いられてきたエチルセルロースについて, その両親媒性構造に着目し, 乳化剤としての可能性を検討した。種々の油分を用いて乳化を試みた結果, エチルセルロースが極性油をW/O乳化可能であることが見出された。蛍光ラベル化したエチルセルロースを用いた評価系の結果から, エチルセルロースは界面に吸着層を形成すると同時に連続相に構造体を形成することで, W/O型エマルションを安定化することが示唆された。このエチルセルロースを用いたW/O型エマルションは, イソステアリン酸とカルボキシメチルセルロースNaの添加によりさらに安定化し, 化粧品として要求されるレベルまで安定化できることがわかった。本基剤の特長は, 従来乳化が困難であった極性油を安定にW/O乳化できる点にあるため, サンスクリーン剤への応用を次に試みた。この結果, エチルセルロースは乳化剤として作用し, エマルションが調製されると同時に, 塗布後は皮膜剤として作用し, 高い耐水性を与えることが示された。
  • 大友 直也, 渡邉 由子, 鶴田 美貴夫
    2000 年 34 巻 3 号 p. 299-306
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    高内相エマルションは高い内相比率のため高粘度のクリーム状を呈する。種々の物質を大きな内相に溶解できることから化粧品, 医薬品の剤型として有用である。特にW/0型のエマルションは応用性は高いが乳化の安定性に課題があった。エルカ酸 (炭素数22, 二重結合1個) を疎水基とするショ糖脂肪酸エステル (SE), ポリグリセリン脂肪酸エステル (GE) は特徴的な機能を有し, 食品産業で高く評価されている。われわれは, 油相からこのエルカ酸を親油基とする親油性SEまたはGE, かつ水相から高親水性のSEまたはGEを併用することによって, 90%を越える含水率でも高い安定性を維持できるW/Oエマルションを調製することができた。両乳化剤の併用は, 特に低温域での安定性向上に有効であり, 高温域の安定性に寄与する多価アルコールの添加との組み合わせにより, 低温から高温までの幅広い温度領域で安定なW/Oエマルションが可能となった。両乳化剤の併用は強固な界面膜の形成に寄与したものと推測される。親水性乳化剤としてポリオキシエチレン系の乳化剤を用いた場合には転相し, W/O乳化物とならなかった。SEおよびGEの強い親水性もしくは疎油性が, 両乳化剤併用の相乗作用発現に重要な役割を持っているものと推測する。油相には多様な化粧品用の油脂原料が使用できた。
  • フレグランスのパーソナルスペースへの影響
    立川 一義, 大坊 郁夫
    2000 年 34 巻 3 号 p. 307-309
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    『コミュニケーションの円滑化をたすける香り』をテーマに創作した香水のパーソナルスペース (以後PSと略す) 減少効果を測定し興味深い結果を得た。大学生パネラー30名の協力を得て, 香りなし, 創作香水A, 創作香水B, の3条件で, 前後左右4方向について, ストップデイスタンス法によりPS計測を行った。その結果, 香りなしに比べ, 香水A, Bはそれぞれ面積比換算で50%, 20%のPS減少効果がみとめられた。PS減少の原因を子細に論ずることはできないが, 減少効果のより大きかった香水Aと小さかったBの香りの印象を比較してみた。すると, 香水Aは刺激的, 香水Bは親しみやすいという印象としてとらえられていた。この結果は「嗜好性の高い香りほどPS減少効果が大きいのではないか」という想像に反するもので興味深い。
  • 江下 義之, 外村 学
    2000 年 34 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    脂肪酸塩の固まりである固形石鹸は, クリーミィな泡立ちやさっぱりとした洗いあがり感から古来より皮膚を洗浄するものとして愛用されてきた。一方では, 洗浄後の肌のつっぱり感が好ましくなく, マイルドな合成界面活性剤を主剤とする液体洗浄剤を好む人も多い。マイルド性の面から言えば海外では脂肪酸塩と合成界面活性剤を組み合わせた複合石鹸が市販されているが, 日本の浴室のような水分の多いところで使用を続けていると溶け崩れてしまい, 日本ではほとんど顧みられることはなかった。さっぱり感とマイルド感をあわせもち, 水にも溶け崩れない石鹸はいわば「理想」である。本研究では, 気泡を石鹸内部に充填させた複合石鹸系がその理想を満たす条件として最適であることを発見した。気泡を石鹸内部に密に充填したまま固形化する製法を考案し, この石鹸について水の内部への浸透性を測定することによって石鹸の溶け崩れ性を評価した。実験の結果, 石鹸内部に気泡を充填していくほど水の浸透を抑制することができ, 石鹸の溶け崩れ性を防止することが可能となることがわかった。
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