皮膚観察用の
in vivo共焦点顕微鏡が開発され, ヒト皮膚内部構造に関して非侵襲的に細胞レベルでの検討が可能になってきた。われわれは本測定機器 (Vivascope 100, Lucid社, USA) を導入し, 健常人を対象に皮膚深さ方向における構造・細胞形態変化の観察, SDS (Sodium Dodecyl Sulfite) やテープストリッピングによって惹起された実験的肌荒れ, 露光部位・非露光部位による表皮厚, 表皮-真皮界面の凹凸状態 (アンジュレーション) の変化について検討した。表皮突起に関しては得られた皮膚水平断面像を積み重ね三次元立体構築を行い, 縦断層像を作成し, Snakes法を用いて表皮-真皮界面を抽出した。その結果, 皮膚深さ方向において細胞形態は大きく変化することがわかった。基底細胞の大きさは約100μm
2程度で角層表面での大きさは約1200μm
2と分化・角化とともに細胞は偏平化し, 10倍以上大きくなることが示された。SDS, テープストリッピング処理によって表皮は著しく肥厚し (2倍以上), その影響は25日後でも認められた。一方, 表面形態は25日後ではほとんど処理前の状態に戻っていた。このように外的刺激に対して角層表面での回復は比較的早いものの, 皮膚内部への影響はそれよりも長く続くことが示唆された。露光部位 (頬, 前腕外側), 非露光部位 (上腕内側) における表皮厚, 表皮突起の状態を調べた結果, 頬では他の部位に比べ著しく表皮が肥厚しており, 表皮-真皮界面の凹凸が激しいことがわかった。以上の結果から
in vivo共焦点顕微鏡はこれまで困難であった皮膚内部構造を非侵襲的に捉えることができ, 化粧品の有用性実証に役立つ機器と考えられた。
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