日本化粧品技術者会誌
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38 巻, 1 号
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  • 柏井 利之, 椙山 崇, 土岐 育子, 長嶋 慎一, 後藤 肇, 飯田 教雄, 山縣 義文
    2004 年 38 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2004/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    われわれはポリエチレングリコール (PEG) をヒドロキシプロピルセルロース (HPC) でゲル化した自己発熱型非水系ゲル (HPC/PEGゲル) を開発した。本報ではHPC/PEGゲルのゲル化についてレオロジー特性とX線回折の観点から考察するとともにシート状化粧品への応用について検討を行った。HPC/PEG溶液の見掛けの粘度は溶媒の酸化エチレン (E. O.) 鎖長が6程度のときに極大を示した。一方, 極限粘度はE. O. 鎖長が短いほど増加していたため, 鎖長が短いほどHPC分子鎖が伸長し, 絡み合いが増大すると考察した。すなわちHPC/PEGゲルのゲル化はHPC鎖の絡み合いだけでなく, 他の機構の存在が示唆される。X線回折からHPC/PEGゲルにはセルロース由来の微結晶構造が残存し, E. O. 鎖長が長いほどその傾向は強かった。以上の結果からHPC/PEGゲルのゲル化を推察すると, 高分子鎖の絡み合いと微結晶構造による架橋点が適度に共存するE. O. 鎖長が6程度のPEGで最も良好なゲルを形成すると結論づけた。またHPC/PEGゲルは大気中や皮膚から蒸散する水分と水和反応して皮膚温が上昇する自己発熱型シート状化粧品基剤として有用であることを確認した。
  • 植田 有香, 瀬川 昭博, 吉岡 正人
    2004 年 38 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2004/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    現在まで, マイクロカプセルの製法や利用方法など数多くの研究が行われてきている。今回われわれは, 新たな壁材として, 「シリコーンレジン化ポリペプチド」を用いたマイクロカプセル化技術を開発した。この壁材を使用することにより, 90%もの高い内包率のマイクロカプセルを容易に調製することができた。また, このマイクロカプセルは平均粒径が約2μmと微細であるため, ホモミキサーの剪断力に対しても安定であり, 経時安定性も良好であるなどの知見が得られた。そこでわれわれは紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルを用いて化粧品への応用を検討した。その結果, これまで配合が困難であった水系の処方に界面活性剤を使用せずに, 油性である紫外線吸収剤を配合することを可能にし, 紫外線吸収剤特有の塗り感触の重たさや臭いなどを抑え, 配合量を向上させることができた。また, 無機紫外線防御剤と安定に併用することができるため, その配合量を抑えながら, 高いSPF値を化粧品製剤に付与することができた。このように, これまで有機系紫外線吸収剤の配合が困難であった処方系への応用を可能にした。
  • 黒田 綾子, 井柳 宏一
    2004 年 38 巻 1 号 p. 22-33
    発行日: 2004/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    日常生活において, 外部物質との接触により身体に悪影響を受けることがある。またあるいは, 肌トラブルが生じたり, 使用できる化粧品に制限を受けることもある。そこでわれわれは, このような外部物質による悪影響を避けるための有効な防御方法として, 外部物質を透過させないバリアー膜を肌上に形成させることを考案した。この目的を達成するべく, 種々の被膜形成素材の物質透過性を評価した。しかし, 効果的な素材は存在しなかった。さらなる検討を進めた結果, われわれは新規なアクリルの共重合体であるフルオロアルキルアクリレートーポリグリコールメタクリレートーアルキルメタクリレートコポリマー (Fコポリマー) を開発するに至った。このコポリマーにおいては, 親油部分と親水部分を共存させることで化粧品剤型への配合を可能とし, かつフッ素基の導入により油溶性物質, 水溶性物質両者の透過抑制を実現した。ヒトボランティアによるスティンギングテストを行ったところ, メチルパラベンや乳酸のような水溶性物質, ブチルパラベンやサリチル酸メチルのような油溶性物質によって惹き起こされる刺激感の抑制にFコポリマーの膜が有効であることが確認された。
  • 佐々木 茂乃, 小林 敏明, 熊谷 重則, 檜山 哲夫
    2004 年 38 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2004/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    熱などの環境ストレスによって細胞中に一群の熱ショックタンパク質 (HSP) が蓄積されることが知られている。これらのHSPはストレスによるタンパク質の変性を防いだり修復したりすると考えられている。近年HSPを前もってヒト皮膚細胞中に蓄積させておくと, 細胞の紫外線に対する防御力が上がるという報告もある。そこでわれわれは苛酷な環境下に生息する生物である好熱性の藍藻に熱ショックを与え, HSPを蓄積させた細胞について化粧品原料としての有用性を検討したので報告する。好熱性藍藻は55℃の温泉から採取されたもので, 研究室では50℃で培養している。培養した藍藻をガラスビーズで破砕して得た抽出物には, SOD様活性と過酸化脂質生成抑制作用が見られた。われわれは熱ショックを与えた藍藻の抽出物にも, 強いSOD様活性と過酸化脂質生成抑制作用があることを見出した。さらにこの抽出物のSOD様活性は, 抽出物を70℃で1時間加熱してもほぼ残存していることがわかった。最も注目すべきは熱ショックを与えた藍藻の抽出物には線維芽細胞増殖作用が見られたことである。線維芽細胞増殖作用は通常の50℃で培養した藍藻から得た抽出物では見られなかった作用である。熱ショックを与えた藍藻の抽出物は, 限外濾過によって分画してさらに解析したところ分子量1万-3万の画分に強い線維芽細胞増殖作用が見られた。これらのことから熱ショックを与えた藍藻の抽出物は抗酸化作用と線維芽細胞増殖作用を併せ持ち, 抗老化化粧品の原料として有用であると考えられる。
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