日本化粧品技術者会誌
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41 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 新規ニオソーム調製法の構築
    李 金華
    2007 年 41 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ニオソームは非イオン界面活性剤からなる2分子膜の閉鎖小胞体 (ベシクル) である。そのベシクルの調製法において, 簡単なレビューを行った。次に, 人体に有害な有機溶媒の代わりに超臨界二酸化炭素 (scCO2) を用いた, 新しいニオソーム調製法 (超臨界逆相蒸発法) に着目して紹介した。非イオン界面活性剤のニオソーム調製の可能性を保持効率, TEM写真, DSCなどにて調べた。その結果非イオン界面活性剤を用いた場合, エタノールのような有機溶媒を一切含まないニオソームを調製できることがわかった。さらに, ニオソーム調製の効率を高めるために, 超臨界逆相蒸発法における調製条件の最適化を行った。その結果, 非イオン界面活性剤のCO2に対する溶解性および二酸化炭素中に溶解した非イオン界面活性剤の量はニオソーム調製の効率化に影響を与える重要な因子であることが明らかになった。また, この方法により得たニオソームは典型的な1枚膜構造をとっていると確認された。今後, ニオソームやリポソーム, 脂質ナノチューブなど, ごく微量で高機能を発現するバイオナノ材料創製に超臨界流体技術を適用するこの新しい研究分野に, さらに取り組んでいきたいと考えている。
  • 大場 愛, 杉山 拓道
    2007 年 41 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    シワに代表される, 光老化に伴う美容上好ましくない変化を防ぐ上で重要なのは, いかにその初期の段階でケアするかということである。しかし, 多くの化粧品ユーザーにとって, 自分の皮膚, 特に真皮のUVダメージを知ることは, 手段がなく困難であった。そこで, 非侵襲的に真皮のUVダメージを評価する方法の検討を行った。127名の健常日本人女性 (25-28歳) の顔面皮膚を, 市販のCutometerとわれわれが開発したResiliometerで測定した。その結果, CutometerパラメータUrおよびUr/Ufは, 加齢とともに直線的に減少していた。一方, Resiliometerパラメータτは, 加齢とともに段階的に増加していた。これまでのわれわれの検討で, UrおよびUr/Ufは光老化の進行とともに増加する弾性線維の変性蓄積量と負の相関が, τはUVダメージレベルの増加に伴うコラーゲン線維の三次元構造状態の崩壊の程度と正の相関が認められている。本検討結果は, 真皮のマトリックス成分が加齢とともに変化していることを示していると考えられる。ただし, 被験者のほとんどはそれを認識していなかった。われわれは, CutometerとResiliometerを併用することで, 真皮のUVダメージを非侵襲的に評価できると考えており, それによって化粧品ユーザーに自分の真皮のUVダメージを認知させ, 光老化の初期段階でのケアを推進することになると考えている。
  • 宮前 裕太, 山川 弓香, 尾崎 幸洋
    2007 年 41 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本論文は, 近赤外 (near-infrared: NIR) 拡散反射 (diffuse-reflectance: DR) 分光法を用いた毛髪内部と表面の損傷状態の非破壊評価法開発に関するものである。毛髪の内部や表面タンパク質の化学的損傷状態を知ることは, 個人個人が最適な修復剤や化学的処理剤を選択するために必要である。毛髪表面の非破壊評価法は多く存在し, そのほとんどは簡便なものである。しかし, 毛髪内部のタンパク質の化学変化を評価できる現状の方法は, 操作が非常に煩雑であり, しかも破壊法である。そこでわれわれは, 光ファイバープローブNIR-DR法を用いて, 毛髪の内部と表面の損傷状態を同時に捉える新しい非破壊評価法の開発を行った。本評価法開発の鍵は, NIR-DR法と主成分分析の組合せを毛髪の損傷度評価に応用したこと, 評価法に適している波数領域が5060-4500cm-1であることを見出したことである。本研究により, われわれは, 化学処理によって受ける毛髪内部と表面の損傷状態を, 光ファイバープローブを毛髪に当てるNIR-DR測定で, 瞬時に評価することが可能な非破壊法を開発した。
  • 田中 健一, 丹呉 豊, 新本 浩一
    2007 年 41 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ヘア製品の処理過程における毛髪内部の変化を連続的に計測する技術は, より効果の高い製品を開発する上で非常に重要である。光学顕微鏡や電子顕微鏡は, 毛髪断面の観察に使われる一般的な手法であるが, 試料の切片を作製する必要があるため, 同一部位の連続的な観察には適用できない。また, 非破壊計測としてX線断層撮影法 (X線CT) が知られているが, 試料内部の色情報が得られないという問題点がある。したがって, 毛髪内部をフルカラーで連続的に観察しうる非破壊計測手法の開発が強く望まれていた。本研究では, 毛髪内部の色情報を連続的に観察可能な新しい非破壊計測手法を提案する。提案する手法では, 光CTに着目し, 従来の光CTの問題点であった内部散乱に起因する大きな観測誤差を, 新しい理論を構築することで解決した。また提案する手法に基づき, 新しい光CT装置を開発した。本装置を用いて脱色や染毛過程を連続的に観察し, 毛髪内部で起こる変化を3次元的に観察することに成功した。これらの結果から, われわれの提案する手法は毛髪内部を非破壊かつ連続的に観察できる計測手法であることが示され, さらに毛髪研究や製品開発にとって非常に有用な手法であることが示唆された。
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