日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
Print ISSN : 0387-5253
ISSN-L : 0387-5253
45 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総説 乳化技術の基礎と進化(5)
特集総説 感性からのものづくり(1)
  • 神宮 英夫, 高橋 正明
    2011 年 45 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    化粧品における「高級感」は,すべての価格帯にとってもっとも重要なキー品質である。本研究では,ハイプレステージブランドと低価格帯ブランドとで,使用感と高級感との関係に着目した。顧客はどのような側面から高級感を感じているのかを明らかにすることが目的である。さらに,商品の連用時における時系列上の分析を行い,連用した際に感じる使用感の変化が高級感にどのような影響を与えるのかを明らかにする。コンセプト文を読んで感じる使用感と化粧品の連用による評価構造の変化とから,使用感と高級感とのつながりを,共分散構造分析を使用して特定した。2つのブランドでの高級感を向上させるための手立てを明らかにした。
報文
  • 小池 徹, 中島 紀子, 奥村 英晴, 奥村 秀信
    2011 年 45 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    化粧品において「触感」は重要な因子であり,その触感に大きな影響を与える皮膚の柔らかさに関する報告は多い。たとえば角層の柔軟性には,水分が大きな影響を与えていることが広く知られており,その詳細なメカニズムの解明も進んでいる1)。一方,「エモリエント」という言葉が業界に古くからあるように,油剤が皮膚へ柔軟性を与える効果も広く認められている。しかし油剤による柔軟効果に関して,具体的にどのような機構で働いているのかという点を追究した報告が少ない。そこで今回は液状油に注目し,皮膚への柔軟化機構を力学的ならびに官能的に検討した。その結果,塗布された液状油によって細胞間脂質層が柔らかくなり,これが角層に影響を与えていることが示唆された。また官能的に「感じる」柔らかさは必ずしも力学的な柔軟化傾向とは一致しておらず,ほかにも摩擦等の表面特性が関与していることが示唆された。よって,肌を柔らかくする,または感じさせる効果を化粧品で十分発揮するためには,両方の側面からアプローチすることが有効であると考えられた。
  • 伊賀 由美子, 松井 康子, 瀬川 昭博, 森田 幸浩, 植田 有香, 吉岡 正人
    2011 年 45 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    天然由来原料であるペプチドは,皮膚や髪に対する親和性から種々の機能を発揮することが知られている。また,さまざまな化学修飾を経ることでペプチドのさらなる機能拡大が図られてきた。中でも,ペプチドの新たな機能発現を目的に開発されたペプチド─シリコーンハイブリッドポリマーを用いたマイクロカプセルは,高い内包率で成分を内包化できる特徴を有している。この技術を用いて調製した紫外線吸収剤内包マイクロカプセルは水に分散するため,処方への紫外線吸収剤の導入を容易にした。また,カプセル化することにより内包成分を他の成分と切り離すことができ,皮膚深部への紫外線吸収剤の浸透を抑えることから,処方の安全性・安定性向上に寄与することが確認された。さらに,内包する紫外線吸収剤の選択により,UV吸収領域の自在なコントロールが可能であることから,複数の紫外線吸収剤内包マイクロカプセルを併用することで,欧州の新規制に代表されるようなUVB~UVA領域にバランスのとれたUV吸収能を有する処方の設計も容易になる可能性が示唆された。
  • 川原 慎一, 津原 一寛, 蓜島 一善, 奥山 雅樹
    2011 年 45 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    使用感は化粧品を購入する上で重要な判断材料のひとつである。われわれは,一定の負荷荷重をかけながら,塗布抵抗をスティック状のまま測定することができる新しい測定機器を開発し,スティック状口紅の使用感を数値化する検討を行った。まず,塗布抵抗測定結果と付け感評価との相関を確認し,本評価方法の有効性を検証した。ついで,再塗布までの時間間隔を変え,再塗布時の抵抗を測定することにより使用後の持続感を数値化することを試みた。その結果,塗布膜の増粘に伴う塗布抵抗の増大が顕著にみられるものが確認された。これは化粧膜が形成する際の結晶粒子間の相互復元力に起因していると考えられる。そこで,この復元力により粒子が再配列を行い,塗布抵抗が時間変化する増粘モデルを仮定し,その妥当性の検証を行った。さらにこのモデルより得られる近似定数と官能評価結果との関係について検証した結果,評価項目のうち,付け感および使用後の定着感について,近似定数と一致度があることが確認された。
  • 江浜 律子, 岩渕 徳郎, 飯野 雅人, 中沢 陽介, 出田 立郎, 辻 善春, 大浦 一, 荒瀬 誠治, 岸本 治郎
    2011 年 45 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/18
    ジャーナル フリー
    最も一般的な女性の薄毛は “female pattern hair loss (FPHL)” に分類され,男性ホルモン依存性脱毛 (androgenetic alopecia : AGA) とは異なる特徴を示す。AGAでは頭頂部や前頭部が顕著に薄毛化するのに対し,FPHLではより広範囲にわたってびまん性に毛髪密度が低下し,髪の生え際の後退は認められない。アデノシンは細った毛髪を太く成長させることにより太い毛の割合 (太毛率) を高めて男性におけるAGAを改善することが示されている。本研究では女性の薄毛改善に対するアデノシンの有効性を検討した。薄毛女性を対象とした12カ月間連用試験の結果,アデノシン配合ローション使用群ではプラセボ群に比較して太毛率が有意に高くなった。さらにアデノシンに加えてパナックスジンセンも配合したローションの6カ月連用試験の結果,連用前後の比較で毛髪密度の増加が認められた。いずれの試験においても副作用は観察されなかった。以上の結果より,アデノシンは男性のみならず女性のQOL (quality of life) をも改善する安全で効果的な育毛剤として有益であることが示された。
feedback
Top