日本化粧品技術者会誌
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45 巻, 2 号
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特集総説 乳化技術の基礎と進化(6)
  • 紺野 義一
    2011 年 45 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    本総説では,リン脂質の素材および乳化剤としての特性,微細O/Wエマルション製剤,リン脂質から形成される分子集合体を利用した製剤について解説した。化粧品素材としては,天然由来であるため,分子構造を制御して化学的安定性を確保する必要がある。リン脂質の構成成分であるPC,PE,PI,のバランスを調整することで有用な乳化剤としての機能を発揮し,さらにノニオン界面活性剤を併用して多価アルコールを利用することで,100nm以下の微細O/Wエマルションを調製することができる。また,水溶液中でラメラ構造を形成しやすい特性を応用したリポソーム製剤やシート状ラメラゲル製剤は特異的な物性を備え,肌効果の高い製剤である。
特集総説 感性からのものづくり(2)
  • 上條 正義
    2011 年 45 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    人のモノとの接触知覚には,手などによって触診する能動的触知覚と人の意識には関係なく接触する受動的触知覚がある。接触する行為は,接触した物体の特性を理解する一つのコミュニケーション手段であると考えることができる。経済産業省から感性価値創造イニシアティブが宣言された以降,製品に新しい価値を付加する感性価値への関心が高まり,多くの産業において感性価値創造の取り組みが活発になっている。製品に付加する価値として,接触知覚における手触り,肌触りの良さが重要な要件として注目されている。本稿では,繊維製品の風合いが人体に対して与える影響を事例として,生理反応を計測することによって手触り,肌触りストレスを評価する研究について紹介する。
報文
  • 川副 智行, 渡辺 智子, 藤井 敏弘
    2011 年 45 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    以前のわれわれの研究で,フルオレセイン5チオセミカルバジド (5-FTSC) と蛍光顕微鏡を用いた光曝露による毛髪構成タンパク質のカルボニル化を検出する手法を開発した。本研究では,ケラチンとケラチン関連タンパク質 (KAPs) からなる毛髪ケラチンフィルムを毛髪の代わりに用いて実験を実施した。数種のケラチンフィルムを用いて光照射による蛍光強度を確認した結果,プレ─キャスト法で作製したフィルムが,最もカルボニル化タンパク質の生成を検出できることがわかった。このフィルムでは,光曝露時間に比例した蛍光強度の増加が確認され,高い相関係数 (R2 = 0.97) が得られた。また,わずか10分の光曝露照射でも差を検出可能で,毛髪に比べ約6倍の感度を示す結果となった。さらに,UVAとUVB曝露による影響も感度よく検出可能であった。イムノブロット解析では,120分の光曝露でタンパク質の酸化が確認されたが,蛍光顕微鏡による結果に比べて短時間の光照射では変化を確認できなかった。また,ケラチンフィルムを用いたFTIRによる分析では,240分の光曝露によるシステイン酸の生成が検出可能であったが,カルボニルの検出はできなかった。
  • 豊田 智規, 倉島 巧, 藤山 泰三, 佐々木 泉, 宮沢 和之, 清水 秀樹, 松村 正人, 古田 拓也
    2011 年 45 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    ヘアスタイリング剤は,その時代の髪型やファッションの流行に合わせ,さまざまな剤型の変遷をたどってきた。これらヘアスタイリング剤は一般的に固定力とアレンジ力の2軸で評価されるが,この2つの因子は背反事象であり,両立は難しい。われわれはこの課題を解決するため,粘着性を特徴とするポリアクリレートクロスポリマー-3 (Polyacrylate Crosspolymer-3)を開発した。ビニル系,アクリル系のポリマーに代表される従来のヘアスタイリング剤用のポリマーは,スタイルを保持することを目的として設計したため,固定には長けているが,アレンジや再整髪が難しい。そこでわれわれは,従来ヘアスタイリング剤で「べたつき」として認識されてきた「粘着性」をあえて発現させることで,1 つのポリマーでアレンジ力と固定力との両立を試みた。ポリマーのガラス転移点 (Tg)を低く設計すること,架橋部位を導入することにより,粘着性を発現させることができた。このポリマーを用いることで,新しいスタイリング剤の開発が可能となった。
ノート
  • 濱元 秋雄, 川嶋 早苗, 小橋 和正
    2011 年 45 巻 2 号 p. 114-121
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    一般的に油剤との親和性が低いといわれるフッ素化合物表面処理粉体で,トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの場合,優れた分散特性を示す系が得られたので,従来のメチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理粉体と比較して報告する。微粒子酸化亜鉛にトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン (TDFOS-ZnO) およびメチルハイドロジェンポリシロキサン (MHPS-ZnO) を表面処理し,分散剤にポリグリセリン変性シリコーン (PGSI) およびポリエーテル変性シリコーン (PESI) を用いてポリジメチルシロキサン (PDMS) に分散させた。この結果,TDFOS-ZnO/PGSI系は良好な分散安定性を示し,塗布時の塗膜も高い耐水性を示した。特にPGSI 5wt%添加系では調製直後に一度増粘するものの,一定期間経過後に粘度が低下する特異的な挙動が確認された。次にこれらの分散体をサンスクリーン剤に適応したとき,分散体自体と同様に,TDFOS-ZnO/PGSI 5wt%系が最も分散安定性に優れ低粘度であり,塗布時の耐水性も高かった。また,肌へ塗布した際の感触も良好であり,水への浸漬による白化現象もほとんど起こらなかった。
  • 小柳 綾子, 松井 康子, 戸叶 隆雄, 吉岡 正人
    2011 年 45 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2011/06/20
    公開日: 2013/06/20
    ジャーナル フリー
    アミノ変性シリコーンはコンディショニング効果に優れたシリコーン誘導体の一つであり,ヘアケア製品に広く使用されている。しかし,連用するとアミノ変性シリコーンが毛髪表面に蓄積 (ビルドアップ) することで感触が損なわれることが問題であった。今回われわれは,「 (加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール) クロスポリマー」 (Hydrolyzed Silk PG-Propyl Methylsilanediol Crosspolymer;以下,HPS)をアミノ変性シリコーン含有コンディショナーに配合することでアミノ変性シリコーンのビルドアップが抑制されるかどうかを確認した。エネルギー分散型X線分析装置 (EDS)による毛髪表面のシリコーン量の測定と官能評価の結果から,HPSにはアミノ変性シリコーンのビルドアップを抑制し良好な感触を維持する効果があることがわかった。
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