リポソームの内包物の漏出を抑制する手法として古くから膜補助成分としてコレステロールが用いられてきた。しかしながら,コレステロールの効果は相転移温度以上において内包物の漏出を抑制することは知られているが,相転移温度以下の領域において,十分に漏出を抑制できないという課題があった。そこで,われわれは,相転移温度以下の温度領域において内包物の漏出抑制効果を有する膜補助成分を見出すために種々の検討を行ったところ,水酸基が1位と2位に配位した炭素数8~10の1,2-アルカンジオールにコレステロールよりも高い内包物の漏出抑制効果があることを見出し,その中でも特に炭素数10の1,2-デカンジオールが最も効果が高いことを見出した。また,1,2-デカンジオールは,リポソーム膜の親水基および疎水基近傍の膜の流動性を抑制し,その効果は45°C以下の温度領域において維持されることがわかった。以上の結果から,相転移温度以下の温度領域において,内包物の漏出を抑制する成分として,1,2-デカンジオールを見出した。さらに,上記成分で構成されるリポソームは皮膚温度 (33°C) において高い漏出抑制効果を有していることが確認された。
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