日本化粧品技術者会誌
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46 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総説 感性からのものづくり(5)
  • 井田 厚
    2012 年 46 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    化粧品は肌を美しく清潔に保つ,老化を防止するなどの本質的な機能の部分に加え,使用者が精神的に充足感を得るという内的心理的側面を持ちあわせている。同様にパッケージにおいても包装容器としての機能性 (品質保持・安全性等) である本質的な役割を担う一方で,化粧品という嗜好品の魅力を備えたものでなければならない。つまり日常に使用するという日用品に近い側面と非日常な高級品の要素を兼ね備える位置づけになる。このバランスは化粧品のブランドの中でも当然画一的なものではなく,ブランドの位置づけや商品の目的,価格によっても変わるものになるが,そのバランスをとることで成立する非常に珍しいカテゴリーに位置するものと著者は考える。商品作りにおいてこのバランスが重要になるが,それぞれ土台となるものを各論として捉える必要性は必ずある。本稿においてはバランスをとるべきであろうファクターについて概念的に触れ,化粧品パッケージの役割を整理し,各論として,人間工学によるアプローチと感覚に訴える「聴覚」に焦点をあてた研究事例について紹介する。
特集総説 やさしく洗浄する技術(1)
  • 坂本 一民
    2012 年 46 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    本稿では皮膚や毛髪に対するやさしい洗浄の基礎について総括的に述べた。洗浄とは、一般的に言うと対象物質に付着した汚れを取り除き清浄にすることである。しかしながらどのような状態が望ましい清浄なものかは、対象物や汚れの種類および洗浄の目的によって一様ではない。皮膚や毛髪の洗浄においては汚れの除去と合わせて健常な状態を保つことがやさしい洗浄の重要な要件である。この観点から界面活性剤に求められる洗浄と有用物質の保持に必要な機能について、洗浄の過程に沿って解説した。
報文
  • 岩橋 弘恭, 川嶋 善仁, 村上 敏之, 大戸 信明, 屋敷 圭子, 鳥家 圭悟, 木曽 昭典
    2012 年 46 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    紫外線の暴露は皮膚に対してさまざまなダメージを与え,シミ,シワおよびたるみといった光老化を引き起こす原因となる。本研究では,UVBダメージ抑制作用を有するテンニンカ果実エキスの有効成分の探索と,新たな作用メカニズムの解明を試みた。テンニンカ果実から単離した成分であるピセアタンノールは,表皮角化細胞において細胞死抑制作用を示した。そのメカニズムの一つとしてDNA損傷抑制作用が認められ,代表的なDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジンダイマー減少作用およびヌクレオチド除去修復遺伝子の発現上昇抑制作用もしくは発現促進作用を示した。さらに抗酸化作用として,表皮角化細胞に対するグルタチオン合成促進作用を示し,抗炎症作用としてプロスタグランジンE2産生抑制作用を示すなど,テンニンカ果実エキスと同様の作用が認められたことから,ピセアタンノールが有効成分の一つと考えられた。また新たにテンニンカ果実エキスにインターロイキン-1β分泌抑制作用を見出した。したがって,テンニンカ果実エキスおよび成分であるピセアタンノールは紫外線によるダメージを抑制し,抗老化作用が期待できる素材であると考えられた。
  • 織田 政紀, 内山 雅晋, 花本 智子, 山下 修, 内藤 智, 竹内 勝彦, 片山 靖, 田邊 久輝, 福田 啓一, 岡田 譲二
    2012 年 46 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    肌上に擬似細胞間脂質膜を形成する高含水α-ゲルという新しい製剤化技術を開発した。擬似セラミド/高級アルコール/モノアルキルグリセリルエーテルの脂質3成分混合系は,室温において,広い組成でα-ゲル相を形成した。さらに,これら脂質類と擬似スフィンゴシン塩を混合することで,透明な外観の高含水α-ゲルを得た。このゲルは,極めて秩序正しく積層したラメラ構造をとり,見かけ単一相のように振舞うことがわかった。高含水α-ゲルは,塗布乾燥後,肌表面に平滑な皮膜を形成した。X線,電子顕微鏡により,この皮膜は,角層細胞間脂質に類似のラメラ構造であることが確認された。本ラメラ皮膜は,高い保水性と閉塞性を有しており,共焦点ラマンスペクトルにより,6時間後も肌の水分量を高め続けることが確認された。さらに,アセトン/エーテル処理により誘導したモデル荒れ肌試験,2週間の実使用試験を行い,従来のα-ゲル製剤と比較し,落屑,経皮水分蒸散量,角層水分量に対する高い改善効果に加えて,擬似セラミドの肌への高い浸透性も確認された。
  • 松尾 真樹, 岩下 静香, 岡本 将典
    2012 年 46 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    リポソームの内包物の漏出を抑制する手法として古くから膜補助成分としてコレステロールが用いられてきた。しかしながら,コレステロールの効果は相転移温度以上において内包物の漏出を抑制することは知られているが,相転移温度以下の領域において,十分に漏出を抑制できないという課題があった。そこで,われわれは,相転移温度以下の温度領域において内包物の漏出抑制効果を有する膜補助成分を見出すために種々の検討を行ったところ,水酸基が1位と2位に配位した炭素数8~10の1,2-アルカンジオールにコレステロールよりも高い内包物の漏出抑制効果があることを見出し,その中でも特に炭素数10の1,2-デカンジオールが最も効果が高いことを見出した。また,1,2-デカンジオールは,リポソーム膜の親水基および疎水基近傍の膜の流動性を抑制し,その効果は45°C以下の温度領域において維持されることがわかった。以上の結果から,相転移温度以下の温度領域において,内包物の漏出を抑制する成分として,1,2-デカンジオールを見出した。さらに,上記成分で構成されるリポソームは皮膚温度 (33°C) において高い漏出抑制効果を有していることが確認された。
ノート
  • 宮本 敬子, 李 金華, 橋本 悟, 正木 仁
    2012 年 46 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    近年,抗菌作用を有する成分に対する市場ニーズは高く,その開発が望まれている。本研究では,4種類の構造の異なるジメチロールアルカン酸アルキルエステルを合成し,その抗菌力について検討を行った。さらに,これら化合物の水溶液中における表面張力測定を行い,界面活性と抗菌作用とを比較した。その結果,ジメチロールプロピオン酸ヘキシルエステルに高い抗菌作用が認められた。また表面張力測定結果から,抗菌作用の高い成分は水溶液において界面への吸着傾向が高く,界面におけるパッキングが密であることが示唆された。抗菌力試験結果から算出した,抗菌パラメーターと界面活性パラメーターとの間に高い正の相関性が認められ,界面活性パラメーターが抗菌成分のスクリーニングパラメーターになり得る可能性が示唆された。
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