日本化粧品技術者会誌
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48 巻, 4 号
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特集総説 紫外線防御化粧品を支える技術と製剤(6)
  • —評価指標とダメージケア—
    渡辺 智子
    2014 年 48 巻 4 号 p. 271-277
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    近年,肌に対する紫外線防御の意識は高まってきたが,毛髪は肌のようにほてりや赤みといった反応が伴わないため,紫外線に曝されやすいのが現状である。実際には日常生活でも紫外線による軽微なダメージを受けており,それが蓄積すると実感できるレベルの大きなダメージ(枝毛・切れ毛・ぱさつく・まとまらない等)を引き起こす。初期の軽微なダメージを抑制することが,大きなダメージの予防につながると考え,日常紫外線による毛髪ダメージの研究を進めてきた。本稿では紫外線による毛髪ダメージの特長とダメージの検出・定量法の確立およびダメージケアについて紹介する。
報文
  • 飯田 年以, 大庭 美保子, 松野 文雄, 古賀 信義
    2014 年 48 巻 4 号 p. 278-286
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    手の甲は年齢が隠せない部位であり,手荒れや乾燥などが悩みの上位に挙げられている。これまで手の甲の測定データとしては,保湿クリームで角層水分量の上昇や経皮水分蒸散量が低下して手荒れが改善するといったものが主流で,弾力や色などの知見は少なかった。われわれは,日本を含め3カ国の30~50代女性633名を対象にアンケート調査し,顔以外では手の甲に悩みを持つ人が多いことを見出した。そこでその状態を調べるため,日本人と日本在住の欧米白人の30~50代女性73名の手の甲について,角層水分量などのほか,弾力や色を測定した。その結果,弾力は日本人が欧米白人よりも高い傾向にあるが,いずれも加齢に伴い低下していた。それ以外の角層水分量などは,加齢との関連はみられなかった。一方,弾力の低下とともにb*値(黄み)が減少する傾向にあるのが日本人で,ヘモグロビン量が増加する傾向が日本人と欧米白人でみられた。さらに,視感により手の甲のきれいな人ときれいではない人を約10名ずつ選び,測定値を比較した結果,手の甲のきれいな人は弾力と明度が高く,赤みが低いことが明らかになった。これら条件が美しく見える手の甲を保つ秘訣となると考えられた。
  • 上利 佳輝, 松井 康子, 伊賀 由美子, 小柳 綾子, 吉岡 正人
    2014 年 48 巻 4 号 p. 287-295
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    加水分解シルクタンパクとアルキル基,シリコーン鎖といった異なる部位を有した両親媒性高分子であるハイブリッドポリマーをActive Interfacial Modifier(AIM),特に乳化性能に秀でたAIMをAIM-FNと名づけ,界面における性質および機能性を評価した結果,多様な界面の性質を制御することを見出した1)。液体と液体の界面制御機能である乳化,固体と液体の界面制御機能である撥水性・耐水性機能,固体と固体の界面制御特性である製剤の感触を向上する機能について,以前本誌で報告した2)。更なるAIM-FN の界面制御機構を解析すべく,試験を行い,新しい知見が得られたので報告する。以前までの報告では,化粧品の原料である無機粉体について報告していなかった。AIM-FNはW/O剤型での使用が基本となるため,W/O剤型で用いられることの多い,無機粉体に対する界面制御機能を検討する必要があると考え,試験を行った。固体と液体の界面制御機能である粉体分散機能,固体と固体の界面制御機能である粉体の凝集抑制機能を確認した。粉体分散機能では,表面処理が施された様々な粉体に対し,高い分散機能を示した。粉体の凝集抑制機能では,サンスクリーンの白浮きを抑制することを確認した。これは,AIM-FNの特徴的な構造によって粒子に吸着,反発力を付与し,界面を制御したからだと考えられる。今回新たにAIM-FN,ジメチコン2cs,水の混合物であるAIM-FN Dispersion(AIM-FND)についても検討を行った。従来の乳化剤や分散剤と比較し,AIM-FNDは低粘度であり,実使用の面でも価値ある存在であると期待できる。
  • 篠崎 純子, 藤井 孝吉, 久永 真央, 梶浦 貴之, 岩崎 敬治, 津田 孝雄, 不藤 亮介
    2014 年 48 巻 4 号 p. 296-305
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    腋臭は特定の細菌(腋臭菌)によって発生するので,デオドラント剤には各種抗菌剤が配合されている。これらの抗菌剤は多菌種に作用するので,常在菌への影響が大きい上に,腋臭菌が耐性を獲得して効果が減少する可能性もある。また,未知の腋臭菌に対して抗菌剤が効かない可能性もある。以上から,抗菌剤に代わる新規デオドラント素材が求められている。そこでわれわれは,新規腋臭菌の分離と腋臭の主成分である3-hydroxy-3-metyl-hexanoic acid(HMHA)の産生を抑制する素材を探索した。その結果,新規腋臭菌として2 菌株,Anaerococcus sp. 株とCorynebacterium genitalium株を分離し,これら腋臭菌のHMHA産生を抑制する素材としてペンタガロイルグルコース(PGG)を見出した。PGGを用いたヒト試験では,細菌遺伝子解析からPGG塗付によって腋臭菌が減少し,常在菌の菌数変動は少ないことを確認した。一方,新たに開発した腋ガス捕集法により定量したHMHA濃度には今回の試験条件では統計的に有意な減少は認められなかったが,PGG塗布により官能評価で腋臭強度の有意な減少が確認された。以上から,PGGは既存抗菌剤とは異なり,細菌叢に大きな影響を与えずに腋臭菌のみを減少させ,腋臭を低減できることが示された。
ノート
  • 嶋田 格, 齋藤(大塚) 香織, 高石 雅之, 臼倉 淳, 山口 あゆみ, 藤田 郁尚, 清水 真由美
    2014 年 48 巻 4 号 p. 306-311
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
    拭き取りシート化粧料の使用による肌への影響については,これまで報告がない。そこで本研究では,シート化粧料の拭き取り行為による皮脂除去効果と肌への影響について調査した。含浸液による効果を検証するため,ドライシート,含浸液を含む標準シート,保湿剤を添加した保湿シートを用いた。保湿シートの皮脂除去効果は,標準シートと同等であり,ドライシートより有意に高かった。また,標準シートの皮脂除去効果は,洗顔料と比べ前額部で差がなく,頬部で有意に低かった。使用後の皮膚コンダクタンス値は,洗顔料では使用前よりも減少したのに対してシート化粧料では使用前よりも増加した。継続使用による皮膚コンダクタンス値の影響については,拭き取りシート化粧料未使用者で初期より有意に低下したにも関わらず,使用者では変化がみられなかった。これらの結果から,シート化粧料の拭き取り行為は,スキンケア効果を有する可能性が示された。
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