日本化粧品技術者会誌
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49 巻, 4 号
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特集総説 健やかな毛髪を保つ最新のヘアケア技術④
  • 金田 澄
    2015 年 49 巻 4 号 p. 293-300
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    髪を美しく地肌を健康に保ちながら洗浄するために,インバスヘアケア剤には髪や地肌の汚れを落としながら,毛髪にはコンディショニング成分を残し,地肌には水分を保つ技術が求められる。われわれは,シャンプーのコアセルベーションに着目し,塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド共重合体の活用により,カラーリングにより親水化した毛髪表面にコンディショニングシリコーンを高吸着させる技術を開発した。また,親水化した毛髪表面のアミド基に吸着する物質を探索し,分子中に多数の親水基とカルボキシル基をもつジグルコシル没食子酸(DGA)がコンディショナー中のカチオン/高級アルコールを効率よく毛髪に吸着させ,ダメージ毛の補修に有効であることを見出した。一方,地肌の乾燥を抑制するため保湿剤を高配合したシャンプー・コンディショナーを検討し,4週間の連用評価試験において,頭皮の水分減少率の抑制とかゆみの改善に有効であることを確認した。
報文
  • 竹山 雄一郎, 小方 隆史, 大場 愛, 赤塚 秀貴
    2015 年 49 巻 4 号 p. 301-308
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    化粧品製剤の重要な役割の一つに,有用素材を皮膚内へ運ぶことが挙げられる。皮膚には,外界からの異物の侵入を防いだり体内からの過剰な水分蒸散を防いだりする角層という強固なバリアが備わっているため,これまでの製剤技術開発者は,皮膚上に塗布した有用素材を角層より下の細胞に届けることに注力し,成果を上げてきた。したがって,開発された製剤技術の多くが角層への浸透性向上に対するアプローチであり,その下の表皮生細胞層での拡散浸透性はほとんど検討されてこなかった。われわれは角層とその下の表皮生細胞層で水分量が大きく異なることに着目し,両者に対する製剤の浸透性は異なるのではないかと仮説をたて,各々の層に分けて両親媒性物質会合体の浸透性を評価した。その結果,仮説どおり同一の製剤でも角層とその下の表皮生細胞層とでは浸透性が異なることが明らかとなり,角層と比較してこれまであまり着目されなかった表皮生細胞層に対する浸透性も,角層と同様に表皮全層の浸透性に大きく寄与していることが示唆された。すなわち,有用素材を目的の表皮細胞まで効率的に運ぶには,角層に加えて表皮生細胞層に対する浸透性も考慮することが重要であると考えた。
  • ─「もっちり感」について─
    小松 陽子, 石丸 園子
    2015 年 49 巻 4 号 p. 309-318
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    主観評価による感覚用語間の相関関係を調査した結果,「もっちり感」は,「べたつき感」のない試料において,「粘着感」が大きいほど大きく感じることがわかった。「べたつき感」は「残液感」と「粘着感」が大きいほど,大きく感じる。そのため,「もっちり感」は,「残液感」と「粘着感」が小さい化粧品,つまり「べたつき感」のない化粧品であれば,「粘着感」と同じ感覚として評価されることがわかった。「もっちり感」を機器評価するためには,「もっちり感」を説明する「粘着感」と「べたつき感」を数値化すればよい。「粘着感」は剥離力で数値化が可能となり,「べたつき感」は「残液感」と「粘着感」に関係するため,化粧品残存率と剥離力で「べたつき感」の有無が判断できることを見出した。これにより,「もっちり感」は,化粧品残存率と剥離力が一定以下の範囲内にあり,かつ,その範囲内での剥離力が大きいという傾向を示し,機器評価できることがわかった。
ノート
  • 倉光 慶太朗, 會田 悠城, 野々村 美宗
    2015 年 49 巻 4 号 p. 319-327
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    触対象の官能評価においては,被験者に呈示する触感に関わる言葉によって得られる結果は変わってくる。しかし,使用感を左右する触感に関する感覚語彙を系統的に収集・分類した例はほとんどない。そこで本研究では,日本語のデータベースである分類語彙表から触覚に関する言葉145語を選び出し,3種類の国語辞典を用いて各単語の意味を確認,選出した言葉を硬軟因子(かたい/やわらかい)・凸凹因子(粗い/滑らかな)・温冷因子(温かい/冷たい)・摩擦因子(くっつき/滑り,湿った/乾いた)からなる4つの触覚次元に基づいて分類した。この触覚次元に基づいた感覚語彙の分類法は,化粧品をはじめ多くの分野の商品評価・品質管理に有用であるものと考えられる。
  • ─摩擦と吸着─
    藤井 敏弘, 比嘉 善一, 伊藤 弓子, 川副 智行
    2015 年 49 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    ヒト毛髪タンパク質から調製されているケラチンフィルムは,紫外線,ブリーチ,パーマ,熱などが引き起こすヘアダメージを簡便に評価することができるため,代替毛髪としての活用が進められている。本研究では,ケラチンフィルムが市販されているシャンプーやコンディショナーの処理に耐えられるか,また,摩擦と吸着物の分析に利用できるかを検討した。ケラチンフィルムの質量や微細構造は,シャンプーやコンディショナー処理によりほとんど影響を受けなかった。摩擦感テスター(KES)を用いてケラチンフィルムの平均摩擦係数(MIU)を測定したところ,その値は毛束を使用した場合と比べて7~8倍高い値を示した。乾燥状態に加えて湿潤状態でもKESでの摩擦計測は可能で,20回までの繰り返し測定にもケラチンフィルムは耐えられた。市販シャンプー類でケラチンフィルムを処理したところ,興味深いことに,コンディショナー単独時とシャンプーとコンディショナーの連続処理時において,MIU値の有意な低下が確認された。その低下率は使用した製品により異なっていた。さらに,処理後のフィルムをエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析したところ,シリコーン入り製品で処理したフィルムにおいてはSiが吸着していることが検出され,その分布はほぼ均一であった。これらの結果,ケラチンフィルムが毛髪の触感と吸着物を測定・評価する上でも有効である可能性が示された。
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