日本化粧品技術者会誌
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50 巻 , 4 号
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特集総説 スキンケア製品開発における実践技術③
  • 田嶋 和夫, 今井 洋子
    2017 年 50 巻 4 号 p. 283-293
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    三相乳化法は水にも油相にも不溶性の有機物で,粒子径8~400nmサイズの柔らかい親水性分散液によって油脂を乳化する方法である。この方法はナノサイズの粒子が不可逆的なファンデルワールスポテンシャルエネルギーで油滴表面に凝集・付着するために,油脂種を問わずに乳化させることができることを特徴としている。界面熱力学的観点から,三相乳化系は独立相が三相から成り立つのに対し,界面活性剤乳化系は二相となるため,乳化物性において多くの点で異なる。その一例として,三相乳化で調製される乳化物は乳化状態をTEMで直接観察することが可能であることを示した。三相乳化は油滴表面に付着している「柔らかい親水性のナノ粒子」が醸しだす物性が通常の界面活性剤乳化物と多くの点で異なり,そのいくつかについて記述した。例えば,三相乳化物は,内相油が固液相転移しても乳化状態が保持される現象や添加塩系のほうが乳化・安定性が促進されること,さらに希釈や濃縮も可能であることなどを示した。特に,親水性ナノ粒子は結合水を保持して油滴表面に凝集・付着しているので,乳化物全体を「保水ベクター(Moisture vector)」として捉えることを提示した。その結果,三相乳化法で調製した化粧品類は高い保湿性が保たれ,塗布性が滑らかで使用感がサッパリするなどの特徴を賦与することが可能になることを示した。
原著
  • 柿沢 英美, 増渕 祐二, 奥山 雅樹, 林 昭伸
    2017 年 50 巻 4 号 p. 294-305
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    仕事や家庭生活において多様なコミュニティとの接点が増加している現代女性にとって,マスカラによるアイメイクは目元を美しく際立たせ,役割や状況に応じた対人印象を高める有効な手段である。しかし,対人印象において重要視される性格や人柄に関する印象向上に寄与する睫形状について,これまで詳細な検討はなされていなかった。また,睫形状の制御に大きく関与するマスカラの従来樹脂は,形状を固定するための硬さを追求すると塗膜強度が損なわれ,睫形状を精密に制御することが困難であった。そこで本研究では,自然界の美曲線を模倣した睫形状モデルを設定し,睫形状と対人印象の関係性を明らかにした。次に,硬さに優れるアクリル樹脂と強度に優れるポリウレタン樹脂を複合化したコアシェル型粒子を用いて塗膜の微細構造を制御し,睫の形状を精密に固定および保持できる新規皮膜形成剤を開発した。われわれが開発したマスカラは美しい睫形状を実現し,対人印象向上に大きく寄与するものであった。
  • 鳥家 圭悟, 川嶋 善仁, 大戸 信明, 野嶋 潤, 池岡 佐和子, 田邊 瑞穂, 木曽 昭典
    2017 年 50 巻 4 号 p. 306-313
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    近年,植物由来のセラミド(グルコシルセラミド)が肌の保湿性を高める素材として注目されており,化粧品素材としてだけでなく,食品素材としても認知度を高めている。われわれはパイナップルの果実にグルコシルセラミドが含まれていることを見出し,グルコシルセラミド含有パイナップル果実エキス(pineapple fruit extract containing glucosylceramides:PFEG)を開発し,肌に対する有用性を評価した。PFEGは皮膚において保湿に関わる遺伝子群の発現を増加し,さらにセラミド合成酵素の発現を増加させることでセラミド産生を促し,肌のバリア機能を高める作用を有することが明らかとなった。また,PFEGはメラニン産生を抑制することで皮膚の色素沈着を抑制する,美白作用を有するセラミド素材であることが見出された。この色素沈着抑制作用についてはPFEGを摂取しつつ,同時にPFEGを塗布することで効果が高まることが確認された。PFEGは,肌に対して内/外用途のそれぞれで優れた効果を発揮することで,幅広い美容商品の効果を高める「内外美容素材」として期待できる。
  • 大樂 左知子, 堀江 亘, 坂﨑 ゆかり
    2017 年 50 巻 4 号 p. 314-320
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    ナチュラル・オーガニック化粧品市場には,高UV防御能を有するサンスクリーンは少ない。その理由の一つとして,紫外線吸収剤は高極性であるため,乳化が困難であることが挙げられる。われわれは,高極性油の乳化に有効である液晶乳化法を用い,安定かつ高UV防御能を有する石油系界面活性剤フリーのサンスクリーンを開発することを目指した。HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance)が6.0~12.0のポリグリセリン脂肪酸エステルは,水との二成分系で液晶を形成することが,小角X線散乱測定により確認された。その中で,ステアリン酸ポリグリセリル-10の液晶は,最も高濃度の紫外線吸収剤を内包できることがわかった。紫外線吸収剤内包ゲルを水で希釈してエマルションを調製したところ,乳化粒子径は3.20 μmであった。一方,多価アルコールは界面活性剤のHLBを変えることが知られている。上記の系に1, 3-ブタンジオールを配合したとき,液晶の消失が認められたが,グリセリンを配合したとき,乳化粒子径は0.59 μmとなり,エマルションの安定性が向上した。紫外線吸収剤を10%含むプロトタイプサンスクリーンのUV防御能は,SPF50(ISO法)であり,高UV防御能を有するナチュラル系サンスクリーンの開発が可能となった。
  • 樋口 美雪, 北原 清志, 清水 佳代子, 平井 克彦, 松本 俊, 高橋 元次
    2017 年 50 巻 4 号 p. 321-328
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    顔面の毛穴に関してはこれまでに多くの研究例があり,その形状に関するものや,大きさ(主に開口部の面積)と年齢,生理周期,皮脂量,紫外線量との関連性などが報告されている。しかし,毛穴形状を楕円近似したときの顔面各部位における長軸の方向(毛穴の方向性)やそれと皮膚力学的特性との関連を調べた研究は少ない。そこで,われわれは市販の毛穴形状解析ソフトを用い,ビデオマイクロスコープで撮像した画像について方向性を検討した。その結果,顔面6部位(額,顎,左右頬(鼻横および鼻唇溝横))における毛穴の方向はランガー割線(Langer's lines)に沿い,顔の正中線に対し左右対称であることが明らかになった。また,CutiScanを用いて顔面各部位の力学特性を調べたところ,皮膚が変形しにくい方向(力学的異方性)と毛穴の方向およびランガー割線とは対応することがわかった。さらに,4週間のスキンケアによる毛穴形状の変化を調べた結果,皮膚生理パラメータ(角層水分量,経表皮水分蒸散量(TEWL))の改善とともに毛穴面積は小さくなる傾向を示し,方向性には変化が認められなかった。
資料
  • 甲田 英理子, 山口 公史, 高橋 元次
    2017 年 50 巻 4 号 p. 329-333
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    ビデオマイクロスコープを用いて皮膚表面拡大画像を取得し,顔面の毛穴一つひとつの形状を解析するソフトウエアを開発した。毛穴の面積,個数に加え,毛穴を楕円近似したときの長径,短径,毛穴のたるみ率{(長径の長さ-短径の長さ)/長径の長さ},毛穴の方向(長径の方向)を求めるものである。ビデオマイクロスコープで取得した画像の質は解析結果に大きく影響するため,焦点のずれや画像のブレ,傾き等が少ない質の高い画像を取り込む必要がある。ビデオマイクロスコープは簡便な操作で何度でも容易に撮り直しが可能で,解析に最適な画像を得ることが容易である。また,被験者への負担も少ない。しかし,ビデオマイクロスコープ自体がもつ光源のムラや画像に映り込む体毛等のノイズが解析の妨げとなる。これらをできるだけ排除し,解析に適した画像を取得できるよう工夫をした。解析結果から得られた毛穴たるみ率,面積,方向を一つの図にプロットし,毛穴の特徴を一目で把握できる散布図も作成できる。
短報
  • 屋敷 圭子, 大戸 信明, 川嶋 善仁, 中原 達雄
    2017 年 50 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/03/21
    ジャーナル フリー
    近年,紫外線や大気汚染などの環境因子,食生活の変化やストレス等によって敏感肌を訴える人は増加している。われわれは,すでに敏感肌向け化粧品に多く配合されているグリチルリチン酸ジカリウム(DPG)の有効性について検討した。DPGは,神経ペプチドであるサブスタンスPによる神経成長因子の遺伝子発現上昇を抑制したことにより,敏感肌の特徴的状態である知覚過敏反応を抑制できる可能性が示された。また,敏感肌を対象にした臨床試験では,0.2%DPG配合製剤は乳酸によって誘導されるかゆみに対する違和感に対して改善傾向が認められた。これらの結果から,DPGは,種々の敏感肌の人に対して改善作用を有する可能性が示唆された。
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