日本化粧品技術者会誌
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51 巻, 1 号
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特集総説 スキンケア製品開発における実践技術④
  • 目片 秀明
    2017 年 51 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー
    近年でも微生物汚染が原因により製品回収に至った化粧品の事例がある。消費者が化粧品を使用する際に,使い始めから終わりまで安全に安心して使用できることは化粧品が有すべき重要な品質である。本稿では二次汚染リスクの高い製品に対する製品設計上の留意点や,使用頻度が高い防腐剤,国際的な防腐剤規制状況,防腐力に影響を与える因子などを中心に概要を列挙した。また,消費者の安全性志向の高まりや海外の防腐剤の配合規制に応えるため,われわれはパラベンフリー・防腐剤フリーを目的とした製品開発に向けて,1,2-アルカンジオールの抗菌効果と皮膚の感覚刺激性についてパラベンと比較して調べた。その結果,抗菌効果はほぼ同等であり,感覚刺激性はパラベンに比べて有意に低いことを確認した。化粧品開発において適正な製品品質を確保した防腐処方設計の考え方の一助となれば幸いである。
原著
  • 牧 祐介, 森田 美穂, 浅井 咲子, 森田 哲史
    2017 年 51 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー
    目元のくすみに悩む女性は多い。その理由としては,女性は日頃のアイメークなどに際し目元を注視する機会が多いことに加え,実際にくすみの程度が大きいことが考えられる。特に上眼瞼は,顔の中でもアイメークやその除去など摩擦や圧迫などの物理刺激に晒されている部位である。われわれは,上眼瞼におけるくすみの発生にはこれらの物理刺激が関与しているのではないかと考えた。そこで本研究では,物理刺激によるメラノサイトの活性化に着目し,上眼瞼のくすみの発生メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果,3 次元培養ヒト皮膚モデルに対する荷重負荷はメラニン生成を促し,ここに一酸化窒素が関与していることが明らかになった。さらに,一酸化窒素消去作用のある素材を用い,化粧品に配合して有効性評価を行ったところ,上眼瞼におけるくすみ改善作用がみられた一方,頬に対する作用はみられなかった。これらの結果から,上眼瞼のくすみ発生には,日常的に繰り返される物理刺激とそれに伴って生成される一酸化窒素が関与していることが明らかになった。
  • 関口 範夫, 清水 克也
    2017 年 51 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー
    使用感が良好で耐水性に優れたO/Wエマルジョン製剤の検討を行った。油と水の界面張力を下げるノニオン系界面活性剤を用いた乳化物は,使用感や再乳化され耐水性が悪いことから,物理的な力で(機械的に)乳化させ,乳化剤は少量で行うことができれば使用感も良好であると予測した。この機能を達成するにはジェミニ型の界面活性剤が適していると考え,ラウロイルグルタミン酸Naをリジンで連結させたジラウロイルグルタミン酸リシンNaを合成し,表面張力測定や乳化力,カップシェイク法による耐水性などの検討を行った。その結果,ジラウロイルグルタミン酸リシンNaはモノマーに比べ臨界ミセル濃度が低く,少量(0.03~0.1%)で油の種類や量に関係なく乳化が可能であり,経時による粒径変化が少なかった。また,少量の界面活性剤で乳化された乳化物は,ノニオン系界面活性剤による悪い使用感(べたつき感など)が少なく,再乳化されにくいので耐水性に優れ,皮膚や毛髪に油分を多く残存する結果でもあった。以上の結果から,ジラウロイルグルタミン酸リシンNaを乳化剤として使用すると,使用感が良く耐水性にも優れた乳化物が得られることがわかった。
  • 山口 弘毅, 大隅 和寿, 坂井田 勉, 広瀬 統, 八代 洋一, 中田 悟
    2017 年 51 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー
    毛穴の目立ちの原因となる角栓は,角質や皮脂が毛孔内で凝固して発達したものと考えられていたが,われわれの研究から角栓形成には毛包中の内毛根鞘が関与する可能性が考えられた。また,男性ホルモンの活性化が角栓形成に関与することも明らかにした。これらの結果から,内毛根鞘の形成阻害や男性ホルモンの活性化抑制が角栓形成を防ぎ,結果として毛穴を目立たなくさせると考え,有効成分としてザクロ発酵液を同定した。さらに,ザクロ発酵液を配合したミルクローションを2ヵ月間女性被験者16名(平均年齢30.3歳)に連用させたところ,ポルフィリン量を指標にした角栓の目立ち,およびレプリカにおける毛穴の深さ解析において改善効果を得た。以上の結果から,ザクロ発酵液が角栓形成を抑制し,毛穴の目立ちを改善すると考えられた。
  • 久原 丈司, 笠原 啓二, 嶋田 格, 松井 宏
    2017 年 51 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/03/22
    ジャーナル フリー
    デオドラント剤の防臭効果の持続性向上(ロングラスティング化)を目的として,臭いの原因となる皮膚常在菌の繁殖を抑えるために,デオドラント剤に配合されている殺菌剤4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)と2,4,4′-トリクロロ-2′-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)について,腋窩上での経時残存性を評価した結果,トリクロサンはIPMPよりも有意に経時残存性が高いことが示唆された。次に,殺菌剤の腋窩上での経時的な減少要因の解明として,殺菌剤の揮発性,皮膚内部への浸透性,皮膚表面での拡散性,衣服への移行性を評価した結果,皮膚内部への浸透および衣服への移行が主要因であることが示唆された。また,殺菌剤の腋窩での残存性を高める成分(デオドラントキーパー)の探索を行った結果,デオドラントキーパーの要件としては,皮膚内部への浸透を抑えるため分子量が大きいこと,耐水性が高い必要があるためオクタノール/水分配係数(Log P)が大きいこと,殺菌剤との親和性(結合性)が高いことが必要であり,今回評価したIPMPのデオドラントキーパーとしては,分極部位を有しIPMPと水素結合等の双極子相互作用を起こしやすい構造であることが,残存性向上に有利に働くことが見出された。
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