日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
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51 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 藍澤 早希子, 鶴巻 実香, 今井 教安, 増永 卓司, 中出 正人, 亀山 浩一
    2017 年 51 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー

    化粧品の安全性評価においては,世界的に動物実験を禁止する方向になりつつある。それに伴いさまざまな動物実験代替法の開発が進められてきたが,多くの分野においては完全なる動物実験代替がなされているとはいいがたい。光毒性評価の代替法については,OECDでテストガイドライン化された3T3 NRU-PT法が広く用いられているものの,難水溶性物質に対しては正確な試験結果を得にくいという課題が指摘されている。そこで本研究では,難水溶性物質を含めたより幅広い物質の光毒性を評価するための評価フローを開発することを目的とした。難水溶性物質を評価可能な試験法はこれまでに複数提案されているが,それぞれ長短所があり,すべての物質をいずれか単一の試験法で評価することは難しいことがわかっている。そこで本研究では,3T3 NRU-PT法を含めた複数の試験法を組み合わせた評価フローを構築した。このうち再構築ヒト表皮モデルを用いた試験法については,今回独自に試験条件および判定基準を設定している。これにより,難水溶性物質をより適切に評価する試験系が整い,幅広い物質の光毒性を体系的に評価することが可能となった。

  • 村上 祐子, 足立 浩章, 田中 浩, 八代 洋一, 中田 悟
    2017 年 51 巻 4 号 p. 300-310
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー

    Transient receptor potential melastatin 8(TRPM8)は,末梢の感覚神経における温度センサーtransient receptor potential(TRP)ファミリーの一種として発見された冷刺激受容体である。近年,TRPM8の温度センサー以外の機能に関する研究が進みつつあるが,ヒト皮膚メラノサイトにおけるTRPM8の役割に関する知見はほとんど見当たらない。そこで,ヒト皮膚メラノサイトにおけるTRPM8の機能とそれに及ぼすヒメフウロ(Geranium robertianum L.)の効果について検討した。その結果,TRPM8の活性化剤によって,メラニン生成関連因子mRNA発現量の減少が認められた。一方,TRPM8の阻害剤は逆の効果を示した。また,UVBを照射したメラノサイトでは,TRPM8活性およびmRNA発現の低下,メラニン生成関連因子mRNA発現量の増加が認められた。一方,ヒメフウロの添加によって,TRPM8活性およびmRNA発現の亢進,メラニン生成関連因子mRNA発現量の減少が認められた。以上から,メラノサイトにおいて,TRPM8はメラニン生成抑制の機能を有し,この機能がUVB照射によって低下することでメラニン生成が亢進することが示唆された。また,ヒメフウロにTRPM8を増加させる効果が認められたことから,ヒメフウロはメラニンの過剰生成を防ぎ,色素沈着を予防・改善することができると考えられた。

  • 兼井 典子, 児玉 達哉, 張谷 友義
    2017 年 51 巻 4 号 p. 311-316
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー

    シャンプーの主成分であるアニオン界面活性剤はカチオン性高分子との相互作用により,シャンプー希釈時のある濃度領域において,コアセルベートと呼ばれる水に不溶の複合体を形成する。コアセルベートは毛髪に付着してコンディショニング効果を付与することが知られており,コアセルベートの性質がシャンプーの使用感に影響を及ぼすことが報告されている。一方,香料はシャンプーに配合されており,香り立ちや残香は重要である。コアセルベートは毛髪に付着することから,香料の香り立ちや残香はコアセルベートの影響を受けるものと考えられる。そこで,本研究では毛髪への香料の付着に及ぼすコアセルベートの影響について検討した。コアセルベート有/無シャンプー水溶液の上澄み液中の香料量を比較した結果,香料はコアセルベート中に取り込まれる傾向にあることが明らかとなった。さらに,コアセルベート有/無のシャンプーを用いて洗髪した毛髪への香料の付着量をガスクロマトグラフィーにより定量した結果,コアセルベート有の方が無よりも香料の付着量は増加することが確認された。これは,コアセルベート形成時に香料が取り込まれて毛髪へ付着するためと考えられる。

資料
  • ─火山灰中のナノ粒子とその安全性─
    黒田 章裕, 杉林 堅次, 藤堂 浩明, 伊藤 公紀, 雨宮 隆, 安部 隆, 宮城 磯治
    2017 年 51 巻 4 号 p. 317-325
    発行日: 2017/12/20
    公開日: 2017/12/27
    ジャーナル フリー

    無機系ナノ粒子の生体に対する影響が危惧されて以来,数多くの論文が発表されてきたが,安全なのか,そうでないのかの結論に対しては,いずれも決め手に欠け,結論が見えない状態が継続している。われわれは,無機系ナノ粒子のヒトに対する長期曝露試験や世代をまたいだ安全性の評価結果が存在していないことがこの問題の原因の1つであると考えている。現在,規制議論の中では無機系ナノ粒子は人工起源のものしか存在が想定されていないが,火山灰中には無機系ナノ粒子が含まれている。われわれはいくつかの火山の火山灰中の無機系ナノ粒子の存在を確認し,火山灰の水分散液から無機系ナノ粒子が容易に観察できること,その形態が化粧品原料の無機系ナノ粒子粉末にしばしばみられるような高次凝集体を形成していないことを見出した。さらに火山灰中の無機系ナノ粒子を火山灰から単離,定量する方法を開発した。特に,大正時代から長期間連続的に噴火と近隣への降灰が継続し,かつ地域住民に対する健康調査が長期にわたり継続的に実施されている桜島に注目して検討を行った。桜島は,無機系ナノ粒子を年50~500t程度環境に放出していると推定されるが,健康調査の結果は,おおむね急性毒性はあるものの,慢性毒性は増加しておらず,腫瘍などもみられないという報告になっている。

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