日本化粧品技術者会誌
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52 巻, 4 号
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解説
  • 中村 綾野
    2018 年 52 巻 4 号 p. 251-259
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    高分子の物理構造に注目した新規水溶性増粘剤開発を目指し,ミクロゲルの調製・合成方法について検討を行った。ミクロゲル分散液のような降伏応力を持つ流体は,乳化・分散安定化という機能面に優れる増粘剤になり得ることを示した。また,流動特性を実験粘度式であるHerschel-Bulkley式により解析して得られたH-B指数nより,ミクロゲルは「さっぱり」した使用感触であることを定量的に示した。また,使用感触の異なる水溶性増粘剤を配合したモデル美容液を用いてクリープ測定を行い,Nuttingの式により解析することで得られるパラメータと,官能評価による使用感触の評価スコアとの相関を線形単回帰分析により解析し,Nuttingパラメータのうち変形の時間依存性を示すパラメータであるαと,美容液の基本的な使用感触である「ぬるつき」「べたつき」「さっぱりさ」,および美容液の嗜好を左右する使用感触である「肌へのしみこみ」の各評価スコアについて高い相関が得られ,使用感触を物性値により定量的に評価することに成功した。

原著
  • 渡辺 啓, 西田 美晴, 西村 加奈子, 宗 頼子, 松下 裕史, 中村 綾野, 土屋 好司, 酒井 秀樹, ハインツ ホフマン
    2018 年 52 巻 4 号 p. 260-268
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    透明な水ベースの基剤に油性成分を配合するには,親水性界面活性剤のミセルを使用するのが一般的である。しかし,親水性界面活性剤は親水基由来のべたつきがあり,配合に制約があった。我々はある種の親油性ポリエーテル変性シリコーンをイオン性界面活性剤と組み合わせ,調製法を工夫すると,数10~100nmの小胞体からなるベシクル/ミセル複合体として水に安定に透明分散できることを見出した。ポリエーテル変性シリコーンのベシクル形成については過去に数報の報告例があるが,ポリエーテル変性シリコーンは膜流動性が高いため,実用上の安定性が十分でないという問題があった。分散液は従来は困難であったシリコーン油を可溶化でき,基質への展開性が高いシリコーンの特徴を有していた。加えて,相平衡研究の結果,保湿剤のグリセリンを高配合しても,塗布時の水の揮発に伴いラメラ液晶を形成することで,べたつきがなく,浸透感が高く,なめらかという従来の制約を覆す良好な使用性を有することが示された。この化粧水は皮膚を高レベルで保湿し,次に塗布する乳液・美容液へ備えるという化粧水の目指す高い機能と心地よい使用感を両立したものである。

  • 吉田 信行, 浦川 雅満, 大平 淳史, 後藤 正男
    2018 年 52 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    オーツ麦(Avena stativa L.)は,昔から食用の穀物としてだけでなく,その水分散体がさまざまな乾燥性の皮膚疾患に伴う痒みや刺激性を和らげるものとして使われてきた。本来,オーツ麦には天然のフィトケミカルが豊富に存在し,フェノール性化合物やフラボノイドには抗酸化作用や抗炎症効果が,多糖類成分には保湿効果が期待できる。オーツ麦から製造した微粉砕粉は,コロイダルオートミール(COM)と呼ばれ,化粧品原料として使われている。本研究では,脱殻後,微粉砕前に湿熱処理の1つであるエクストルーダー処理を行い製造したコロイダルオートミール(ExtCOM)と従来のCOMの性質について比較検証した。その結果,ExtCOMは粒度分布プロファイルがCOMとまったく異なり,β-グルカンの溶出量や抗酸化能が従来のCOMに比べて非常に高いことがわかった。さらに,比表面積と抗酸化能の関係性という観点でデータを分析し,エクストルーダー処理による穀物細胞構造の物理化学的変化がフィトケミカルの生物学的利用能の向上に大きく寄与している可能性があると結論づけた。

  • 土井 美沙季, 中村 清香, 平 徳久, 勝山 雄志, 正木 仁, 吉岡 正人
    2018 年 52 巻 4 号 p. 275-281
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2018/12/20
    ジャーナル フリー

    アスコルビン酸(AsA)は,メラニン産生抑制,コラーゲン産生促進など多様な生理活性作用を有する一方で,経時劣化による着色・着臭など安定性に問題を抱えている。この問題を解決するため,われわれはこれまでに化粧品における汎用的な保湿成分であるグリセリンをAsAに結合させたノニオン性AsA誘導体であるビスグリセリルアスコルビン酸(VC-DG)を開発し,VC-DGがAsAと比較して高い原体安定性と製剤安定性を有するとともに,AsAと同様の生理活性を有することを明らかにしている。本研究では,VC-DGのさらなる皮膚生理活性の探索を目的に,皮膚バリア機能ならびに保湿機能に寄与すると考えられるコーニファイドセルエンベロープ(CE)に着目した。その結果,VC-DGは正常ヒト表皮ケラチノサイトにおいてCE関連因子のmRNAおよびタンパク質発現亢進に伴い,CEの形成を促進することが明らかとなった。また,3次元培養表皮モデルにおいても同様に,CE関連因子のタンパク質発現亢進作用を示した。さらに,ヒト皮膚連用試験において,VC-DGの連用により角層水分量の有意な増加が確認された。以上から,VC-DGがCEの形成を促進することで,皮膚の保湿機能を向上させる可能性が示唆された。

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