日本化粧品技術者会誌
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53 巻, 4 号
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総説
  • ─両親媒性ポリエーテルとリン脂質ポリマーの応用─
    関口 孝治
    2019 年 53 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    保湿剤は皮膚角層内の水分を増加・維持し,乾燥による皮膚トラブルを防止する重要な化粧品基剤である。化粧品用保湿剤としては,ポリオールのような低分子からヒアルロン酸のような生体高分子まで多種多様な構造を有するものが知られている。一般的に,低分子保湿剤は吸湿効果が高いものの,保湿効果を高めるために高配合すると使用感が悪化するという課題があった。われわれは,べたつきがなく,肌馴染みの良い水溶性保湿油としてポリオキシブチレン(3)ポリオキシエチレン(8)ポリオキシプロピレン(5)グリセリルエーテルを設計し,高い保湿効果および,有効成分の皮膚浸透制御効果を有することを明らかにした。また,角層の水分保持機能と水分蒸散抑制機能を同時に向上させる素材としてホスホリルコリン基を側鎖に有するリン脂質ポリマーに着目し,汚染物質,菌,紫外線等のさまざまな環境ストレスから皮膚を守る生体防御素材としても応用できることを明らかにした。

原著
  • 天谷 美奈子, 上甲 恭平
    2019 年 53 巻 4 号 p. 260-270
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    ヘアカラーは,酸化染料中間体を酸化剤によって酸化重合させながら毛髪染色を行う方法が一般的である。一方,酸化剤を用いることで毛髪を構成するキューティクルやコルテックスに損傷を与えてしまうことがしられている。さらに酸化染料中間体によるアレルギーも報告されている。本研究では,あらかじめ酸化染料中間体を酸化重合させた酸化染料(二環体インド染料)を合成し,酸化染料を混合したクリーム基剤を用いて毛髪染色を行い,その染毛料の機能性を確認した。機能性は,視覚および触覚による官能評価と,毛髪からのたんぱく質溶出試験,毛髪のつや測定,摩擦測定,圧縮試験などで評価した。その結果,酸化染料を含有する染毛料は毛髪へダメージを与えず染色することを可能にし,毛髪につや感,滑らかさ,柔軟性を与えることが明らかとなった。酸化染料を用いた染毛法は,毛髪に新たな機能性を付与することから,その特徴を活かした染毛料の発展が期待される。

  • 溝口 圭衣子, 岸本 裕子, 山本 弓子, 池田 玲子, 片山 靖, 岡本 昌幸, 山室 穂高
    2019 年 53 巻 4 号 p. 271-277
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    乾燥に負けない潤った肌を実現するため,角層バリア能の向上をねらい,擬似セラミドを角層深部まで高浸透させる擬似セラミド液晶化製剤を開発した。擬似セラミド/アルケニルコハク酸コレステリル/フィトスフィンゴシン/コレステロールの脂質混合系からなるベシクルは,室温下で広い組成領域で液晶を形成した。さらに,従来は塗布5分後に擬似セラミドが結晶化していたのに対し,本製剤は塗布24時間後でもその液晶を維持し続けることがわかった。その結果,従来のαゲル製剤と比較して,擬似セラミドを角層内に約2倍送達させることに成功した。さらに,30,40代女性にて連用試験を行ったところ,本製剤により肌の水分蒸散量および水分量の有意な改善を確認した。

  • 布施 直也, 松井 正
    2019 年 53 巻 4 号 p. 278-286
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    毛髪組織の最外部にあたるキューティクル層のダメージは,指どおりの悪化やスタイリングのしにくさの原因となる。特に,ブリーチ処理を行うと主な基質であるメラニンが分解されるだけでなく,キューティクルのリフトアップにより毛髪表面のすべり性が低下する。そこで本研究では,キューティクルケアを目的として,ブリーチ処理によるキューティクルダメージの作用機序の解明を試みた。その結果,タンパク質の側鎖カルボキシ基イオン化に起因するバイメタル効果が,キューティクルのリフトアップを促進させることを明らかにした。この機序を「キューティクルのバイメタル性」として提唱し,このバイメタル性をコントロールする成分としてグルタミン酸を見出した。さらに,新たに開発したキューティクル剥離の可視化・定量化技術を用いてグルタミン酸の効果を解析すると,コーミングによるキューティクルの剥離量減少が明らかとなり,バイメタル性をコントロールすることによるヘアケア効果が認められた。

  • 安森 春子, 田村 英子, 塚原 和枝, 井上 弥生, 山本 隆斉
    2019 年 53 巻 4 号 p. 287-296
    発行日: 2019/12/20
    公開日: 2019/12/21
    ジャーナル フリー

    唇の主な悩みは「乾燥・皮剥け」であるが,唇の悩みは加齢とともに変化する。すなわち,「乾燥・皮剥け」の悩みは30歳代をピークに減少し,年齢とともに色や形状に関する悩みが増えてくる。しかしながら,口唇形状の加齢変化の報告例は少なく,どのように変化するか明らかとなっていない。われわれは,普段唇とよんでいる赤い部分の赤唇部だけでなく,加齢印象に大きく影響すると考えられる周辺の白唇部にも着目し,正面と側面の写真画像から計測することで検討を行った。その結果,白唇部は加齢とともに長くなり,さらに丸みを帯びてくることが明らかとなった。さらに赤唇部は縦幅が狭く横幅が広くなってくること,側面からみた下唇の膨らみが低下することを定量的に明らかにした。これら多くの形状変化は40歳代以上で起きていることも明らかとなった。また同一被験者において同様の加齢変化がおきていることを確認し,個人差ではなく加齢変化によるものであることも検証した。

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