日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
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53 巻, 1 号
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総説
  • 柴田 雅史
    2019 年 53 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    油性ゲルは口紅,リップグロス,ペンシル状化粧品などのスティックやペースト状の油性化粧品の基剤として活用されており,ゲルの物性は製品の性能および安定性に深く関与している。本稿では,炭化水素やワックスエステルなどワックス類と糖脂肪酸エステルやヒドロキシステアリン酸などオルガノゲル化剤類の2種類に大別される化粧品用オイルゲル化剤について,そのゲル化機構を体系的に解説し,ゲル硬度やオイル保持性など油性スティックのゲル物性との関連を明らかにする。また結晶制御技術をもとに開発された,石油由来ワックスと同等のスティック化性能をもつ植物ワックスゲル(キャンデリラワックスとベヘン酸ベヘニル混合物)について紹介する。さらに,肌や唇に塗布されたゲル塗膜物性の水晶振動子マイクロバランス装置による解析結果と,ゲル化剤の種類とつや,持続性,感触などの性能との関連を説明する。

原著
  • 今井 健仁, 中村 友紀, 丸橋 佑基, 中野 隆
    2019 年 53 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    ヘアカラーリングで用いられる主要なブリーチ成分における,メラニン顆粒の分解パターンの違いについて透過電子顕微鏡による毛髪横断面観察から調査した。過酸化水素を共通成分とし,アンモニアおよびモノエタノールアミンでは毛髪中心部寄りのメラニン顆粒から分解され,炭酸塩および過硫酸塩では毛髪外周部のメラニン顆粒から分解されるという逆の挙動を示した。これらの違いは,メラニン顆粒は毛髪外周部に多いという分布特性のほかに,ブリーチ成分の毛髪浸透性とメラニン顆粒に対する酸化分解力の違いも関係していることが示唆された。また,アンモニアと炭酸塩を併用すると毛髪全体にわたってメラニン顆粒が均一に分解され,より効率的にブリーチ性能が発揮できる可能性が示唆された。

  • 豊田 直晃, 浅野 浩志, 北原 路郎, 中田 悟, 島田 泰拓, 羽多野 重信, 浅井 厳, 高尾 泰正
    2019 年 53 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    一般に,化粧品の感触評価には官能評価が用いられるが,評価者の技量や環境などの種々因子に依存して評価結果が左右されやすい。そこで,感触評価の精度,再現性向上を図るべく,物理指標を用いたさまざまな客観的評価方法の開発が検討されてきた。粉体化粧品における「滑らかさ」や「しっとり感」といった感触特性は,重要な機能の1つであるが,スキンケア化粧品と比較すると確立された評価方法が非常に少ない。本研究では,従来から医薬・食品分野において,粉体の流動性評価に利用される粉体層直接せん断試験法に着目し,化粧品粉体原料,およびパウダーファンデーションへの適用を検討した。その結果,本試験法により得られた内部摩擦係数μi,およびせん断付着応力τcが,官能評価で得られた「滑らかさ」,および「しっとり感」と,それぞれ良く相関することを見出した。本評価方法は,単一の原料粉体だけでなく,固形ファンデーションのような成型体の評価にも利用でき,その適用範囲は広く非常に有用性が高いと考えられる。また,組成同一で成型方法(乾式成型,湿式成型)のみ異なるパウダーファンデーションに関しても,その微妙な感触の違いを識別できることが示唆された。

短報
  • ─3D顔画像印象解析と視線計測─
    山口 あゆみ, 橋本 公男, 松原 薫, 蒔田 愛
    2019 年 53 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2019/03/20
    公開日: 2019/03/20
    ジャーナル フリー

    顔立ちや表情がその人の印象形成に影響することは当然ながら,われわれは顔の肌質感も印象を決める重要な要素と考えている。今回は,ミドルエイジ男性が年齢は相応でも若々しい印象に見られたい意識があることに着目し,若々しさ印象の要因を探ることを試みた。見た目年齢は「シワ」の評価スコアとの関連が確認できた一方,若々しい印象スコアは,「シミ」,「くすみ」,「血色」の評価スコアと関連することがわかった。さらに視線解析結果より,見た目年齢評価時に比べ若々しい印象評価時に視線滞在時間が最も長かった部位は,肌質が顕著に現れやすいほほの部分であった。モデル乳液を連用すると,肌をよく観察できる条件である近距離でのみ若々しい印象がアップした結果が得られた。若いときと比べて肌の変化が顕著に起こっているミドルエイジ男性にとって,日々のスキンケアは年齢相応でありながら若々しい印象を作り出せる有効な手段であるといえる。

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