日本化粧品技術者会誌
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53 巻, 2 号
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総説
  • 米井 嘉一, 八木 雅之, 髙部 稚子, 今 美知
    2019 年 53 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    皮膚の老化の機序を考える上で光老化による酸化ストレスと糖化ストレスは大きな要因となっている。紫外線は活性酸素やフリーラジカルを介して皮膚に酸化ストレス障害を惹起し,色素細胞のメラニン産生刺激と角化細胞の遺伝子損傷はシミ形成に,線維芽細胞刺激はシワ形成に関わる。糖化ストレスは次に大きな皮膚老化の原因である。これは還元糖,脂質や酒由来のアルデヒドによる蛋白修飾が主反応で,カルボニル化蛋白ならびに糖化最終産物(advanced glycation end-products: AGEs)を生成,さらにはRAGE(receptor for AGEs)に結合して炎症性サイトカイン産生を促す。RAGE は免疫応答細胞のみならず皮膚線維芽細胞にも存在する。コラーゲン糖化は皮膚弾力性低下,エラスチンの糖化はたるみを惹起する。近年,AGEs が色素細胞を刺激してメラニン産生を助長することが明らかになった。すなわちシミ形成にも関与する可能性がある。糖化ストレス対策化粧品の開発はきわめて重要であり,今後の発展が期待される。

原著
  • 西野 顕, 池田 直子
    2019 年 53 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    口紅のツヤは,最も重要視される品質特徴の1つであるが,いまだに定量評価技術は確立されていない。本研究は,口紅のツヤの定量評価技術確立を目的とし,質感表現「パール感」「グロス感」がもたらす画像特徴に着目したツヤ評価技術の開発を行った。まず,光沢知覚に関する先行研究で用いられているSkewnessとツヤの相関を評価したところ,グロス感の強い口紅のツヤとSkewnessの相関がある一方で(r=0.65),パール感の強い口紅のツヤはSkewnessとの相関が弱いことが示された(r=0.21)。そこでパール感口紅のツヤとの相関を期待した新指標「RMSコントラスト」を導入した,新たなツヤ評価技術を検討した。本技術の妥当性を検証するため,パール感,グロス感およびマット方向に質感を強調した口紅を用い,SkewnessおよびRMSコントラストとツヤの関係を評価した。評価の結果,SkewnessおよびRMSコントラストはパール感,グロス感口紅のツヤの評価指標として有効であり,これら2つの指標を用いた重回帰式によって相関係数r=0.82の精度でツヤを推定できることが示された。

  • 藤代 美有紀, 矢作 彰一, 矢田 幸博
    2019 年 53 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    天然由来香気成分の鎮静作用やスキンケア効果についてはこれまでにいくつかの報告がある。真の美を追求するには,スキンケアだけでなく心の健康も同時にケアする必要性があり,この考え方はホリスティックビューティーと呼ばれ,近年美容業界に広がりつつある。しかしながら,香気成分の詳細な鎮静作用メカニズムや定量的評価についての報告はあまりなされていない。これは,これまでに用いられてきた鎮静作用の測定方法の感度や精度によるものと考えられる。そこで本研究では,統合生理学的解析を用いた香気成分の体系的かつ定量的な鎮静作用評価方法を確立すること,また,その方法を用いたダマスクローズ由来香気成分の即時的な鎮静作用および長期連用の際の気分と肌に関する作用について評価することを目的とした。

  • 坂口 三佳, 末永 えりか, 川口 幸治
    2019 年 53 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    毛髪は熱,紫外線,摩擦など外的ダメージを日常的に受けており,シャンプーやコンディショナーなどの毎日のヘアケアでダメージを防止することが求められている。シャンプーにカチオン性ポリマーを配合することにより,洗髪時にシャンプー洗浄成分とカチオン性ポリマーの複合体(コアセルベート)が形成され,すすぎ時の髪のきしみ感が低減されることが知られている。特に,近年注目されている“ノンシリコーンシャンプー”ではシリコーンの代わりにコンディショニング効果を担うためカチオン性ポリマーが配合されているが,シリコーン配合シャンプーと比較して洗い流し時にきしみを感じるといった声がいまだ多い。一方,シャンプー後のコンディショナー塗布時には毛髪表面に残存したコアセルベートの電荷が正の方向になるため,電荷反発でコンディショナーが付着しにくいといった問題がある。これらを解決すべく,疎水基を有する新規ポリマーを設計し,毛髪に対する効果を動摩擦係数や接触角などを測定することによりシャンプーすすぎ時のみならず,シャンプー後に使用するコンディショナーの効果も向上させることができる新規カチオン性ポリマーを開発したので報告する。

短報
  • 近藤 兼司, 森本 裕輝, 小倉 孝太, 村山 誠悟, 寺田 堂彦, 岩坪 聡
    2019 年 53 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2019/06/20
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

    シルクは化粧品主原料の1つであり,化粧品中での機能は肌の保湿,毛髪や肌への保護作用が知られている。本研究では,湿式微粒化装置でシルクナノファイバー懸濁液を作製し,特性を評価した。作製されたシルクナノファイバー懸濁液を乾燥させてFE-SEMでの観察,BET法での比表面積の計測を行い,シルクがナノファイバー形態であることを確認した。作製したシルクナノファイバー懸濁液でセルロースナノファイバーやカルボマーとの混合体を作製し,粘弾性特性の変化を測定した。セルロースナノファイバーの添加では,少量でシルクナノファイバー懸濁液の粘性が上昇し,沈殿物は見られなかった。カルボマーとの混合では,シルクナノファイバーゲルが容易に作製できた。さらにシルクナノファイバーを添加した試作化粧品は,シルクナノファイバー未添加品よりも長い時間,肌水分を保持した。

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