システム・ダイナミクス
Online ISSN : 2434-2025
17 巻
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • シェークスピアのテンペストのSDモデル
    末武 透
    2019 年 17 巻 p. 1-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
    SDを使った社会モデルは、基本的には社会調査で得た実データとシミュレーション結果を比較し、モデルの妥当性を検証する。しかしながら、本稿のコンフリクトを扱ったモデルのように社会調査を実施することが事実上不可能という状況も存在する。そのような場合であっても、コンフリクトを取り扱った記述、例えば文学作品を使うことで取り扱う対象の性格や変化を数量的に検討することができる。ここではその事例として、ODAプロジェクトクトで実施されるMitigation Programへの適用を念頭に、どのように人間は怒りや憎しみといった負の感情を許しという正の感情に転嫁させることができるかを理解するためのモデル化を試みた。 コンフリクトの解消では、人々の持つ負の感情を正に変化させる必要がある。それは単純に、負の感情が閾値を超えた際に正に変換するというモデルの表現では不十分である。むしろ、負の感情だけの世界から自己組織化されるように徐々に正の心情が生まれてくるしくみとして理解すべきであろう。 本稿では、カオスから秩序や安定が生まれる状況を述べているGladwellのTipping Pointのフレームワークを使い、負の感情が正の感情に変化していくしくみを説明する標準モデルを作成した。このモデルをベースに、憎しみが許しに変化することを取扱った文学作品であるシェークスピアのテンペストをシナリオとして使うSDモデルを構築し、その動きを検証することによりモデルのMitigation Programへ適用可能性を考察した。
  • 岡田 伊策, 高橋 裕, 稗方 和夫
    2019 年 17 巻 p. 17-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/04
    ジャーナル オープンアクセス
    日本のIT企業は、超過勤務が多いことで知られている。企業における人的資源に関する施策は、組織の全体パフォーマンスを左右する重要なものである。様々な施策は、それぞれの効果や即効性に差がある。施策選択支援のためには、欧米型のトップダウンマネジメントモデルに沿った「トップダウンアプローチ」モデリングが一般的だが、仮説設定を詳細。精緻に行なわないと結果が大きく揺らぐ。一方、日本の経営者はこの手間と時間の割に結果が揺らぐリスクが下がらないことから、経験と勘で意思決定することを選びやすい。その結果、意思決定に必要な要素や関係性に欠如や脱落があった場合に気づき難く、また他者から見て意思決定の主因が何であったか検証し難い。そこで、本研究では様々な経営施策を、システム・ダイナミックスを用いた「ボトムアップアプローチモデリング」でモデル化して、経営者が最適な施策を選択できるようにした。 本手法は、情報収集。調査から、モデル構築、シミュレーション、感度分析を経て意思決定にいたる。本提案手法は施策のダイナミックな効果や悪影響の定量的連関を、業務現場が実務とモデルの関連付けを理解でき、実務への反映を納得できるレベルの詳細度で可視化して、結果の揺らぎを抑制する。同時に本提案手法を用いることにより、意思決定に必要十分な要素が検討されたこと、および意思決定の主因が何であったかを客観的に検証し易くなる。本論文では提案手法を用いて、IT企業でケーススタディして、その有効性を検証した。
  • システム・ダイナミックスによる意思決定分析
    中里 成実
    2019 年 17 巻 p. 31-45
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/08
    ジャーナル オープンアクセス
    銀行の貸出行動は実態経済と密接な関係があるとされ、一般的には景気上昇局面において貸出は増えると考えられている。しかしながら日本の銀行の預貸率は、アベノミクス(2012年)以降の景気上昇局面においても伸び悩みを見せている。各銀行が貸出可能額に対して様々な要因を検討し、貸出範囲を決定することは、銀行経営における重要な意思決定である考えられる。そこで本研究ではこの統計に表れない銀行経営における意思決定(リスク選好度)に焦点を当て、その原因を探るためにシステム・ダイナミックスの手法を用いて銀行業の貸出モデルを作成し、1997年から2017年までの20年間の貸出行動を観察した。その結果、この20年間の貸出可能額に対する貸出の割合は、70-60%と一定の範囲に止まっているが、特に2006年以降は低位に留まっていることが示唆された。
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