物理探査
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58 巻, 1 号
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Collaboratively Published by Exploration Geophysics(Australia) and Mulli-Tamsa(Korea)
Geophysics In The Western Pacific Environment: II High Precision Geophysical Methods
論文
  • 田中 篤史, 真田 佳典, 山田 泰広, 松岡 俊文, 芦田 讓
    2005 年 58 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    地球科学の分野において、アナログモデル実験は地球上に存在する物質との間に何らかの類似性を持つ物質を用いて、地球科学現象を実際の時間や長さなどを縮小して実験室内で等価に再現することができる優れた手法である。実験材料として乾燥砂を用いたアナログモデル実験 (砂箱実験) は、上部地殻の脆性的な変形挙動を近似できることから、上部地殻における地質構造形成過程を再現するための優れたツールとして広く用いられている。
    本研究では、このアナログモデル実験の境界条件や材料物性などに更なる自由度を与えるために、数値シミュレーション手法の一つである個別要素法 (Discrete Element Method ; DEM) を用いた地質構造形成過程を再現するためのデジタルシミュレータを開発した。そして実際の地質モデルとして現在地球上で観察される最もダイナミックな地質現象の一つであるインド―ユーラシア衝突を取り上げ、開発したシミュレータを適用し検討を行った。
    個別要素法とは力学的挙動に関する数値シミュレーション手法の一つであり、解析対象を微小な粒子の集合体として近似する手法で、不連続性や大変形を伴う対象の解析に適している。本研究のように地質モデルに適用されるだけでなく、岩盤力学や土質力学など幅広い分野で適用されている。
    しかし、個別要素法における各個別要素に設定するパラメータと解析対象全体の物性との関係において不明なところが多く、これまで多くの場合、解析対象全体の挙動が妥当なものになるように試行錯誤 (trial and error) によって入力パラメータのフィッティングを行い、解析が行われてきた。そのため、得られた解析結果が唯一解であるか否かという検証を行うことが困難である。
    本研究では個別要素法を用いた圧縮試験のシミュレータも同時に開発した。そして、インド―ユーラシア衝突モデルのシミュレーションで用いたパラメータを入力し圧縮試験を行い、供試体の物性を調べることで実際の衝突・侵入の過程に関する考察を行った。
  • Derecke Palmer, Ramin Nikrouz, Andrew Spyrou
    2005 年 58 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    浅層屈折地震探査における屈折層の地震波速度の決定は、不良設定 (ill posed) 問題である。計算された時間パラメーターの小さな変化が、それらを用いて計算される速度に非常に大きな水平変化をもたらすことがある。それらは多くの場合、インバージョン・アルゴリズムに起因する偽像である。そのような偽像は、通常のモデル計算では認識されないし修正もされない。したがって、モデルに基づいた逆解析で詳細な屈折モデルを求めるような場合には、詳細な初期モデルが必要となる。地震波速度の偽像は不規則な屈折面形状に起因することが多い。ほとんどの状況下で、一般化相反屈折法 (GRM) の可変マイグレーションは不規則な地層境界面に対応でき、屈折層の詳細な初期モデルを作成することができる。しかし、極浅層に不規則な構造が存在すると、GRMの効果は減少し、風化層補正が必要となる場合もある。
    浅層不規則面の水平方向の連続性が限られている場合、通常の不規則面補正法は実用的ではない。そのような状況では、GRMのスムース静補正法 (SSM) が簡易で間違いのないアプローチであり、それによって屈折層速度のより正確な評価を簡単に行うことができる。
    GRM SSMでは、種々のXY値で計算された時間―深度対の平均をゼロXY値で計算された時間―深度対から引くことにより、平滑化した静補正値を生成する。より深い対象の時間―深度対は、XY値が変化しても変化が小さいため、平均値と最適値はほぼ等しくなる。しかし、浅層屈折面での不規則な時間―深度対は、XY値の増加に従って水平方向に移動し、それらはこの平均過程でかなり減少する。その結果、一連のXY値について平均された時間―深度対は、浅層に不規則な屈折面が存在する場合にも有効に修正される。さらに、ゼロXY値で計算された時間―深度対は、浅層の効果と対象屈折面までの時間―深度対の両者の合計となる。したがって、逆にそれらの差は走時から差し引くための静補正の近似値となる。
    GRM SSMは風化層を修正する決定論的アプローチというよりも、本質的には平滑化過程ということができる。この手法は水平方向に連続性が悪い、不規則な浅層屈折面に対して最も有効である。本論文では、不規則な屈折面の詳細な地震波速度決定の信頼性はGRM SSMを用いることにより大きく向上することを、モデル計算および事例研究によって示す。
  • Derecke Palmer, Leonie Jones
    2005 年 58 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    地表の風化層が厚くかつ水平方向に急激に変化する硬岩地域で記録された地震探査データに対して、屈折法による静補正値の算出を行った。そのような地域のデータの場合、受振器間隔の12倍ほどの短距離では、静補正値は10ms未満から70ms以上まで変化することがしばしばである。この研究では、自動残余静補正が必ずしも有効に働かない硬岩地帯の風化層では、屈折面の初期モデルの正確さが重要であることを示す。
    一般化相反屈折法 (GRM) および屈折重畳セクション法 (Refraction Convolution Section: RCS) を用い単純な風化層モデルに対して計算された静補正値と、CG法を利用した最小二乗インバージョンを用いて複雑な風化モデルについて計算された静補正値は、ほぼ同等の正確さを有する。両者による静補正値の違いは、8.8km以上の距離にわたって系統的に平均2-4ms程度であった。これら2つの屈折モデルと自動残余静補正を含めた最終の静補正値モデルの間の差は、一般に5ms未満であった。
    GRMモデルによる残余静補正はしばしばCG法モデルによる補正より小さくなる。RCSによる静補正はおよそ10ms遅れるが、それらの相対的な精度はGRM静補正のそれと同等である。残余静補正値は、屈折法による静補正値と一般によい相関を示し、風化層の平均地震波速度を遅く仮定することにより、その補正値を減らすことができる。この結果、静補正値の短波長変化の原因が、走時から平均遅れ時間を決定する逆解析アルゴリズム中の欠点によるものではなく、風化層の平均地震波速度の不正確な推定によるものであることがわかる。
  • 馮 少孔, 杉山 長志, 山中 浩明
    2005 年 58 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    著者らは微動アレイ探査と表面波探査等レイリー波の速度分散特性を利用する探査手法の精度を改善するために、マルチモードインバージョン手法を考案し、感度分析、数値実験及び実データから手法の有効性を検討した。感度解析の結果、位相速度における各層の影響周波数範囲はレイリー波の基本モードより高次モードの方が分離しやすく、インバージョンにおいてよりユニークな解が得られることを示唆している。また、モデルの各層の感度分布は波のモード次数の増加につれて高周波数域に移り、周波数範囲が同じ場合、高次モードを利用することで、より深部構造の調査が可能性であることを示唆した。数値実験と実データを用いる検討結果、本手法による探査精度の改善が確認でき、特に逆転層を有する地盤の調査に有効的であることが分かった。また、本手法を微動アレイ探査に適用する場合、高次モードに適するアレイ観測と解析手法の開発が課題となると考えられる。
  • James Roberts, Michael Asten
    2005 年 58 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    直径96m以下のアレイを使って微動探査法を実施し、未固結の第四紀Yarraデルタ堆積物のS波速度断面を深さ30~50m程度まで非破壊で推定することができた。その結果を解釈し、この地域の地質は2種類のシルト層 (Coode島シルトとFishermans Bendシルト) に大別されることがわかった。微動探査法により、これらのシルト層のS波速度を5%の精度で推定し、軟弱な前者 (Vs=130m/s) と堅硬な後者 (Vs=235m/s) を識別した。この手法により、これらのシルトの下に既知の礫層に相当する堅い層 (Vs=500~650m/s) を検出した。単一ステーションによる水平成分対垂直成分比のスペクトル分析法を測線に沿って適用すると、軟弱なシルト層の厚さの変化を速かに求めることができるが、それは定性的に求められるに過ぎない。地質断面が複雑な場合やS波速度値自体が定量的に必要な場合にはアレイを用いた微動探査が不可欠となる。
  • 亀井 理映, 羽藤 正実, 松岡 俊文
    2005 年 58 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    メタンハイドレートは将来のエネルギー資源として期待されており、その資源量推定および生産にあたっては、正確なハイドレート層モデル化が不可欠である。坑井での検層情報から、ハイドレート層は短周期の不均質性を持っていると考えられ、こうした短波長不均質が地震波の散乱を引き起こすことが知られている。本論文では、ハイドレート層を、検層情報に基づきランダム不均質媒質としてモデル化する手法を開発し、数値シミュレーションにより、不均質性に起因する散乱が地震探査記録に与える影響を考察した。
    ハイドレート層の不均質性は、P波速度検層よりvon Karman型の自己相関関数により特徴づけられる。また、確率密度関数 (ヒストグラム) は数100m/sの隔たりのある2箇所にピークを持ち、異なる平均値を持つ正規分布の重ね合わせと見なすことのできるバイモーダル分布により表現可能である。バイモーダル分布に従うランダム不均質媒質は、パワースペクトルを基に作成される正規分布に従う通常のランダム不均質媒質を変換することで求められる。また、楕円型自己相関関数を用いることで、異方性を持つ媒質も生成可能である。この手法を用いて生成したP波速度ログは、実際のP波速度ログに見られる特徴を再現可能であり、手法の妥当性が示された。続いて、バイモーダル速度分布をハイドレート層に適用し、差分法を用いた弾性波動シミュレーションにより、合成反射法地震探査データおよび合成坑井間地震探査データを作成し、検討を行った。その結果、実際のハイドレート地震探査でしばしば見られるBSRの震源周波数依存性を再現可能であり、また、坑井間地震探査データで見られる強い減衰も再現された。これらの検討の結果、ハイドレート層モデル化にあたっては、バイモーダル分布に従うランダム不均質性の考慮が不可欠と結論づけられる。
  • Hyoung-Seok Kwon, Jung-Ho Kim, Hee-Yoon Ahn, Jin-Sung Yoon, Ki-Seog Ki ...
    2005 年 58 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    川底の地盤には断層帯など脆弱部が存在する可能性が非常に高いが、河川水があるため地表地質調査は難しく、川底下の断層帯を把握することは容易ではない。その意味で、水面上や川底で行う電気探査 (以下、水上電気探査という) は、川底地盤の連続的な比抵抗構造を得ることができるので、断層や脆弱部の位置を把握するために非常に効果的な探査法である。川底にトンネルを建設する場合、断層帯の位置だけではなく断層帯の走向方向が重要な要素となる。断層帯の走向を把握するには格子状に測線を配置し、広域の調査を行うのが効果的である。従来の水上電気探査は電極やケーブルを川底に設置するので広域調査には向かない。本論文では、小型ボートでストリーマーケーブルを曳航して広域を迅速に調査することのできるストリーマー電気探査について、川底下のトンネル建設予定地への適用性を考察した。
    ストリーマー電気探査による断層帯の探査分解能を考察するために、垂直断層が川底下の堆積層に覆われているモデルについて数値実験を行った。電極の設置位置と水深を変化させ、垂直断層の探査分解能を調べた。その結果、水深が電極間隔の2倍以内の場合には、電極を水面上に設置する方式でも川底下の垂直断層を解析できることがわかった。また、4通りの電極配置についてS/N比と垂直断層の分解能を比較し、ストリーマー電気探査に適する電極配置を検討した。数値実験結果を参考とし、韓国ソウル市を流れる漢江の川底トンネル建設予定地において水上電気探査を実施した。トンネル予定路線では高分解能の比抵抗構造が要求されるので、まず、川底に電極を設置する方式で測定を行い、2次元インバージョンによって断層と推定される3つの低比抵抗異常帯を把握した。低比抵抗異常帯の原因を調べるためボーリング調査を行い、数m以上の幅を持つ多数の断層の存在を確認した。断層帯の走向方向を解明するため、確認された低比抵抗異常帯を中心に格子状の測線を設定し、ストリーマー電気探査を実施した。川底にケーブルを設置する方式に比べて非常に迅速で経済的な測定が行え、また、川底に分布する異常帯の分布範囲と発達方向を把握することができた。
  • 尾西 恭亮, 横田 俊之, 前川 聡, 利岡 徹馬, 六川 修一
    2005 年 58 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    地中レーダの適用用途拡大を目指し、効率的なCMP探査手法を提案する。地中レーダのCMP探査はコヒーレントノイズ改善効果が確認されている。また、速度解析から水分率の空間分布図の提供が可能となり、効用は大きい。しかし、1対のアンテナで行うCMP観測の費用対効果は低く、商業利用で行われることは希であった。そこで、本研究では、水平精度1cmのリアルタイムキネマティックGPSを用いて地中レーダアンテナの観測位置を高精度で自動計測し、CMP観測に要する作業量の軽減と重合数の増大を図った。まず、連続走査状態でも地中レーダアンテナの観測位置精度が十分に確保され、通常の固定オフセット探査よりも精度を要し作業が煩雑なCMP観測時のアンテナ位置固定作業が不要となる。さらに、機器の高性能化から、通常、超過サンプリングとなる取得記録の全てをCMP記録として観測可能となるため、既存の地中レーダCMP観測法よりもCMP重合数の増大が見込まれる。本研究では数値計算を行い、提案手法が従来法に比べCMPのデータ密度や重合数が増加することが示された。また、提案手法をフィールド調査に適用し探査の実現性と高速性が検証された。その結果, 1時間当たりの探査作業で, ビンサイズ50cm当たり約500トレースの記録が, 約20m分観測可能であった. 取得された記録トレースは垂直重合とCMP重合に自由に分配可能で, 最適な観測仕様の設定が処理段階で行える. 地中レーダの商業観測においてCMP法の選択が可能となり、地中レーダ観測適用用途の拡大につながるものと考える。
  • Myeong-Jong Yi, Jung-Ho Kim, Sam-Gyu Park, Jeong-Sul Son
    2005 年 58 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    硬岩中に掘削された空洞に液化天然ガス (LNG) を貯蔵するという新しい概念の実現可能性を調査し、かつ地下LNG貯蔵設備を構築するため必要な技術を開発するため、韓国地質資源研究院 (KIGAM) の敷地内に液体窒素 (LN2) を貯蔵する小規模パイロットプラントが作られた。空洞に貯蔵されたLN2は、周囲の岩石を極低温状態にし、そのため氷輪 (ice ring) の生成や、貯蔵空洞のまわりの岩盤性状の変化を引き起こすものと予想される。このパイロットプラントで岩盤性状の変化を調査しモニターするため、物理探査、水文地質学および岩石力学的調査が行なわれた。ボアホールレーダおよび三次元比抵抗調査等の物理探査は、特に氷輪の発達や、貯蔵されたLN2の極低温に起因するその他の状態変化を検出しモニターする目的で使用された。三次元比抵抗探査データはLN2貯蔵前後で取得され、それらの結果の比較が行われた。3回にわたって取得された比抵抗モニタリングデータにより得られた三次元モデルから、LN2の貯蔵と密接に関係のある明確な比抵抗変化領域が確認された。その結果、貯蔵空洞の東側で比抵抗の減少が観察された。空洞の周囲の水文地質学のデータおよび亀裂分布との比較により、この比抵抗変化は地下水の流動パターンの変化に起因すると解釈された。なぜなら、LN2の極低温に起因する貯蔵空洞周囲の結氷は、このパイロットプラント全体の水文地質学的状況および地下水流動パターンに大きな影響を与えると考えられるためである。
  • Don Hunter, Anton Kepic
    2005 年 58 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    電気伝導度の高い地層で取得された地表核磁気共鳴 (SNMR) データを正確に逆解析し解釈するためには、地表下の電気伝導度構造を正確に推定することが要求される。そのような推定をもとに、高導電性地層の存在が地下水検知の妨げとなるか否かを、SNMR探査の前に予測しておくことは有用と考えられる。本論文では、SNMRのフォワード計算から、与えられた電気伝導度構造モデルについて十分なSNMR信号が生じる深度範囲を決定する方法について述べる。一連の半無限媒質モデルについてSNMRの透過深度を推定し、高導電性半無限媒質 (<10Ωm) では、信号の透過深度は50m未満であることを示す。また、このような半無限媒質モデルでは、送受信ループのサイズを増加しても信号透過深度はほとんど増加しない。より複雑な1次元電気伝導度構造についても、半無限媒体に近似し、この手法を適用することによって、SNMR信号を受信できる深度範囲を適切に推定することができる。
  • Kate Wilkinson, Tessa Chamberlain, Mike Grundy
    2005 年 58 巻 1 号 p. 78-85
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    本研究では物理探査法と環境科学的手法を組み合わせてクィーンズランド州南西部の、Goondoola盆地の二次塩化の原因を調査した。
    地表および地下の物質と地下水についての情報に加えて、一連のエアボーン電磁・放射線探査および地表での電磁探査データを取得した。放射線探査と標高のデータとサンプルで測定された物性の間から導かれた関係から、地表の物質分布と塩分涵養の可能性の予測地図が作成された。地下水中への塩分の主な涵養源は堆積盆周辺の風化した基盤岩中にあることが推定された。地下構造と表層風化層中の塩分貯留域の定量的把握には、土壌と孔井の測定とともに、エアボーン・地表・孔井の電磁探査データが使用された。
    一般に、電気伝導度は土壌中の塩分分布をよく反映する。一方、塩分含有量が比較的一定な風化層深部においては、エアボーン電磁探査の信号は孔隙率の変化と岩質の違いに影響されるという特徴を持つ。そのため、エアボーン電磁探査データを用いて、風化域の水平分布図を描くことが可能となる。
    この地域の塩害化は表層風化層の構造に強い影響を受け、局所的あるいは中規模区域のプロセスで生ずることが確認された。地表データと地下データのこうした結合によって、地下水面の上昇に伴う塩害が広がりそうな地形を認知できるようになった。この結果は、今後特に過度な塩分の涵養と移動塩を防ぐための管理計画の整備に利用される。
  • Sam-Gyu Park, 浅野 志穂, 松浦 純生, 岡本 隆, Jung-Ho Kim
    2005 年 58 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    本研究では、電気比抵抗探査による第三紀の大規模の岩盤地すべり地における季節変化による地下水変動を調べた。このため、地すべり地の既存のボーリング調査が行われた主測線に探査測線を設置し、融雪後と積雪前2回に渡って電気比抵抗探査を行い、地盤の2次元比抵抗分布を求めた。また、地盤の比抵抗分布からシラス層の中に存在する地下水面を推定するためにシラスの比抵抗と飽和度との関係を室内試験から明らかにした結果、飽和状態でのシラスの比抵抗は573Ωmであった。この比抵抗値に基づいてシラス層の地下水面以下は飽和状態であると見なし、融雪後と積雪前に行った探査結果より地下水面を推定した。その結果、融雪後に比べて積雪前の地下水位が全体に1.1~4.7m程度低くなっており、地すべり地の末端部より冠頭部の地下水位が大きく変動していることが分かった。このように季節変化による地下水変動は、融雪時期における融雪水の浸透による影響であり、地すべり地の末端部より冠頭部の地下水位が大きく変動する理由は、冠頭部の台地は地下水涵養域であり、その多くの地下水は銅山川方向に流下しているためであることか分かった。
  • Sung-Ho Song, Yoonho Song, Byung-Doo Kwon
    2005 年 58 巻 1 号 p. 92-96
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    韓国南西部にあるSandongアースフィルダムの漏水問題に対する水文地質学や物理探査的手法などの適用性を調査するために、それら手法を用いた包括的な現地調査が実施された。このサイトで実施された調査は、トレーサー試験、貯留水放出に伴う水量減少および漏水のモニタリング、ダイポール・ダイポール配置による電気探査、温度検層および自然電位 (SP) 法である。ダム壁の漏水パターンはまず水文地質学方法によって把握され、物理探査によってさらに明確にされた。その結果、漏水箇所はダム壁の右側のせりもち台にあることが判明した。この研究では、電気探査は漏水可能性が大きいゾーンを検知するのに有効であることが確認された。また、漏水によって大きな流動電位異常が形成されるので、SP法が漏水路そのものを検出するのに有効であることがわかった。
  • Ahmed Salem, 濱田 敏夫, 朝比奈 潔, 牛島 恵輔
    2005 年 58 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    近年では、アレイ式磁気傾度計を用いることにより、不発弾・UXOに汚染された海底の磁気探査も高速に実施できるようになっている。しかし、浅海のUXOは、海流によって移動するため、海底のUXOを探査し、首尾よく除去するためには、膨大な磁気探査データを船上でリアルタイムに処理する技術が必要となる。本論文では、海底のUXOの位置および特性を高速に推定するためのアルゴリズムを提案する。すなわち、まずオイラーデコンボリューションなどにより磁気傾度データの解析を行う。次いで、最小二乗法による反復解析法を用いて磁気ソースを定量的に決定する2段階の手続きが行われる。このプログラムを用いて既知のモデルに対する種々の数値実験を行い、データ解析の精度を明らかにした。さらに、本プログラムを実際に日本の海底磁気探査で取得されたデータの解析に適用して実用性を確かめる。
  • Hai Soo Yoo, Su Jeong Kim, Dong Won Park
    2005 年 58 巻 1 号 p. 104-111
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    Dmitri Donskoi号 (1883年進水のロシア巡洋艦) は日露戦争に参戦中の1905年5月29日に韓国Ulleung島 (日本海) の近くで沈んだことが知られている。この船を見つけるために、その沈没位置に関する情報をロシアと日本の海事記録から得た。その船の沈没位置はおおよそ判明し、1999年から2003年まで5年にわたる物理探査が実施された。海底に関する三次元地形学踏査は、マルチ・ビーム音響測深器、海洋磁力計およびサイドスキャン・ソナーを使用して実行した。初期踏査により認識された異常体は、遠隔操作式無人有索探査船 (ROV) の深海カメラおよびミニ潜水艦『パスファインダー』を使用した詳細な調査によって確認された。得られたデータを解釈し、沈没船は海面下400mの急傾斜面に位置していることがわかった。その位置は、Ulleung島のJeodongから約2kmである。船の船体に残された152mmの艦砲、および他の戦闘資材が確認された。さらに、沈没時に燃上した操舵装置および他の機械類の残りが船体の近くで見つかった。調査エリアに分布する火山岩の強い磁性の影響を受け、磁気探査データから船の位置を正確に求めることはできなかった。船体のまわりの急峻な海底地形は、サイドスキャン・ソナー・データ中の反射波の拡散を増加させ、サイドスキャン・ソナーを用いた異常体 (船体) 検出を困難にした。それに対し、多重ビーム音響測深器を用いた探査では、探査船を最大限低速で運航したり、海底地形によりビーム角の調整行ったり等の工夫を行ったため、得られた海底イメージは船体位置の確認に非常に有効であった。
  • Peter Hatherly, Terry Medhurst, Renate Sliwa, Roland Turner
    2005 年 58 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/11/02
    ジャーナル フリー
    物理検層は炭鉱調査プログラムの一部として一般的に実施されている。現在のところ、物理検層の主な用途は、炭層深さを決定し、石炭の品質、岩質および岩石強度を定性的に評価することにある。しかし、物理検層データの定量的解釈を行うことができれば、さらに詳しい情報を得ることができる。定量的解釈を助けるため、本論文では、オーストラリアのシドニー盆地とボウエン盆地の黒炭地帯で頻出する砕屑性堆積岩中の鉱物の検層レスポンスを例に挙げて議論する。その結果、検層レスポンスと鉱物分布に強い相関性があることを確認した。解釈の任意性は多種の物理検層を併用することによって減少させることができる。本論文では、また、計算走時と観測走時の比較により、内的整合性をチェックする方法も記述する。定量的解釈の重要な目的は岩石の地質工学的分類である。本論文は、物理検層から推定できる岩石の物性を考慮した砕屑岩の分類システムを提案する。
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