物理探査
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59 巻, 4 号
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小特集:やや長周期地震と深部地盤構造
論説
  • 笹谷 努, 前田 宜浩, 高井 伸雄
    2006 年59 巻4 号 p. 315-326
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     本論説においては,北海道における長周期地震動(周期 3 秒から20秒の地震動)と深部地盤構造についての研究をレビューする。長周期地震動に関する研究は,気象庁 1 倍強震計(機械式変位計:固有周期=6 秒(水平動),5 秒(上下動))の記録の解析から始められた。この強震計は,十勝平野や勇払平野のような大きな堆積盆地において,大地震の際に S 波に続く盆地表面波(盆地生成表面波と盆地転換表面波:前者は盆地への S 波の入射によって,後者は盆地への表面波の入射によって 2 次的に励起された表面波である)をきれいに観測している。デジタル観測計器及び広帯域強震計の開発に伴い,盆地内でのアレー観測から,これら表面波の波動の性質及び伝播特性が明らかにされるようになった。一方,深部地盤構造の研究は,石油・天然ガスの探査を目的に始められた。しかし,最近では,国の施策として,地震災害の軽減を目指した高精度な強震動予測のために全国各地で深部地盤構造モデルが作成されている。そして,北海道においては,このモデルを用いて石狩低地東縁断層帯を想定した強震動が評価されている。最後に,このような状況下で発生した2003年十勝沖地震(気象庁マグニチュード 8)による大量の強震動データに基づく長周期地震動と深部地盤構造との関係についての研究をレビューする。
論文
  • 宮腰 研, 堀家 正則
    2006 年59 巻4 号 p. 327-336
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     大阪平野内で励起されるやや長周期地震動の平均的な卓越周期を求めるため,関西地震観測研究協議会(関震協)の強震観測点で観測されている MJ5 以上の地震で,大阪平野を取り囲むような震央位置にある 7 つの地震を選び,大阪平野内の強震観測点におけるやや長周期地震動の平均卓越周期を求めた。その結果,水平動成分は周期 2~6 秒,上下動成分は 1~3 秒の卓越周期が得られた。
    次に,大阪堆積盆地モデルから計算される表面波(Rayleigh 波および Love 波)の分散曲線に基づいて約 1 km×1 km メッシュの卓越周期マップを作成し,関震協観測点で観測されているやや長周期地震動の卓越周期と表面波の卓越周期の比較を行った。その結果,両者は調和的であることから,大阪平野内で励起されるやや長周期地震動は主に表面波であることが示唆された。また,Love 波および Rayleigh 波の卓越周期(s)は基盤岩(Vs=3.2 km/s)深度(km)と比例関係にあり,基盤岩深度を約 5 倍すれば Love 波の卓越周期,約 2 倍すれば Rayleigh 波の卓越周期になることを示した。なお,卓越周期マップを作成する際,基盤岩深度が深く,かつ,基盤面の不整形性の強い地域では,表面波の卓越波長を半径とする円内の卓越周期に対して空間的スムージング操作を行っている。
    本研究で示した大阪平野におけるやや長周期地震動の卓越周期マップは,M7~8 クラスの被害地震によって励起されるやや長周期地震動に対する高層ビルや石油タンクのレスポンスを考える上で,第一次近似的には有効であると考える。
  • 古村 孝志, 中村 操
    2006 年59 巻4 号 p. 337-351
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     1944年東南海地震(Mw8.1)において,関東平野で強く生成した長周期地震動の特性を詳しく調査するために,東金,大手町,そして横浜地点に設置されていた今村式 2 倍強震計と中央気象台式 1 倍強震計の波形記録の解析を行った。煤書き記録を読み取り,地震計の計器特性を補正することにより,3 地点の強震波形を得た。確認のために,2004年紀伊半島南東沖の地震(Mw7.4)で観測された 3 地点の強震記録から経験的グリーン関数法を用いて合成した東南海地震のフーリエスペクトルとの比較を行い,周期 2 秒以上の長周期地震動の振幅レベルがよく一致することを確認した。
     復元された東南海地震の強震波形から,関東平野では周期 7~12秒の長周期地震動が,最大 10 cm の大きさで10分間以上にわたって長く続いたことが明らかになった。速度応答スペクトル(減衰 5%)を求めると,東金と横浜では固有周期12秒においてそれぞれ最大 60 cm/s と 30 cm/s の応答が,そして大手町では固有周期 9 秒において 25 cm/s の強い応答が得られた。この応答レベルは2004年紀伊半島南東沖(Mw7.4)の 2-2.5倍の大きさになることがわかった。
解説
  • 座間 信作
    2006 年59 巻4 号 p. 353-362
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     2003年十勝沖地震では,長周期地震動により励起された石油タンクのスロッシングにより,苫小牧において,タンク火災 2 件,浮屋根沈没 7 基などの甚大な被害が生じた。速度ポテンシャル理論に基づく推定最大波高と被害との関係からは,甚大な被害は,1 例を除いて全てスロッシング固有周期 7 秒以上のシングルデッキ浮屋根式タンクであること,周期12秒付近のタンクを除き,最大波高は 2 m 以上であること,周期12秒付近のタンクについては,2 次モード(周期5.6秒)が卓越したことが沈没の原因となったと考えられること等を指摘した。
     甚大な被害のあったタンクサイト最寄の速度応答スペクトルが,周期約 4-8 秒の間で,当時の規制値である約 100 cm/s の 2 倍以上の強さであったことから,スロッシング対策の一つとして,長周期帯域の設計用地震動の見直しを行った。
    石油コンビナートは全国84箇所に散在しており,将来起こりうる大地震の震源からこれらのタンクサイトまでの広域深部地下構造はまだ殆ど明らかとなっていないことから,地震記録に基づいた経験的手法により,各コンビナートでの速度応答スペクトルを予測した。用いたデータは1950年以降の気象庁 1 倍強震計記録,K-NET, KiK-net,港湾の記録である。
    震源地が同じ場合,波形が酷似していることが多いことから,地震地体構造区分毎にデータを整理し,震源のスケーリング則を考慮した距離減衰式と観測スペクトルの比を地域特性として抽出した。これに基づいて,地震地体構造区分毎に与えられている最大規模地震に対する各コンビナートでのスペクトルを予測した.更に限られた地域ではあるが,理論(数値)的,半経験的手法による予測値をも取り入れ,最終的に揺れやすいコンビナート地域を指定するともに,それぞれの地域に対する設計用スペクトルを提案した。なお,これに基づく技術基準の改正が行われ,2005年 4 月施行となった。
論文
  • 高倉 伸一, 中田 孝二
    2006 年59 巻4 号 p. 363-370
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     坑道(トンネル)を利用して IP 法調査を実施することができれば,地下の比抵抗分布や充電率分布をより高精度に求めることが可能になると考えられる。しかしながら,これまで坑道での IP 法調査の適用例は少なく,その方法についてはほとんど確立していないのが現状である。この原因の 1 つとして,IP 法の電位測定に使用する非分極性電極は金属製電極と比較すると機械的な強度が弱く,固い岩盤が露出している坑道の壁面へ設置することが難しいということがあげられる。この問題を解決するため,我々は非分極性電極に含まれる塩を混合した石膏を用いて,非分極性電極を岩盤へ密着させる方法を考案した。そして,高品位のセリサイト粘土を産出している鉱山において,その方法によって非分極性電極を坑壁の岩盤面に設置し,IP 法の試験測定を行った。その結果,高精度の IP 法測定が安定的に実施できることが確認された。また,この設置方法を使えば接地抵抗を十分に下げることができるので,非分極性電極を電流電極として使用できることも明らかとなった。そこで,坑壁の奥にセリサイト粘土の存在が予想された坑道に非分極性電極を配置して IP 法 2 次元調査を行い,坑壁に沿った比抵抗断面と充電率断面を求めた。比抵抗と充電率の異常が現れた場所を掘削し,観察された地質やセリサイト粘土の分布と比較したところ,充電率を比抵抗で割った正規化充電率が,セリサイト粘土の分布域の把握や安山岩分布域と凝灰岩分布域の判別に有効であることが示された。
  • 佐々木 裕, 中里 裕臣
    2006 年59 巻4 号 p. 371-379
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     周波数領域型空中電磁探査法は広大な調査域の比抵抗マッピングを効率的に行うことができ,また多周波数データを用いることにより三次元構造の解釈が可能である。しかし,従来の解析法は見掛比抵抗分布や一次元インバージョンに基づいているため,空中電磁探査データの本来もつ情報量を十分活かしきれていないのが現状である。本論文では,フォワード計算に差分法を使った二次元および三次元インバージョン法を提案し,数値実験により従来の解析法よりも優れていること,また三次元構造の可視化を実現できることを示した。このインバージョン法では,空中電磁探査法の送信・受信コイルは二重ダイポールと見なすことができる点に着目して感度計算を行っているので,感度計算のための余分なフォワード計算を必要としない。そのため,三次元インバージョンの計算時間は 1 km の測線が 3 本配置された場合で約20時間であり,実用的なレベルに近づきつつあるといえる。
  • 斎藤 正徳
    2006 年59 巻4 号 p. 381-388
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/08/25
    ジャーナル フリー
     表面波の位相速度を用いたインバージョンで,逐次線型化最小二乗法を用いるときには,位相度の S 波速度,P 波速度などに関する偏微分係数,すなわち位相速度のヤコビアンが必要になる。これらは固有関数から導かれる積分核を用いて計算することができるが,規準モデルの位相速度と構造パラメーターをほんの少し変化させたモデルの位相速度との差から,差分近似を用いて計算することが多い。この方法はプログラミングは容易であるが,計算量が多く誤差も避けられない。本論文ではハスケル法を拡張して,ヤコビアンを正確にしかも高速で計算する方法を開発した。新しい方法の計算速度は差分近似に比べて層の数に比例して速くなる。また,この研究の副産物として,ヤコビアンの深さ方向の積分値間に成り立つ恒等式が導かれた。これは構造のパラメーター間に相関が存在することを意味している。現実的なモデルに対する相関マトリックスの例を示した。
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