物理探査
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61 巻, 3 号
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論文
  • 半田 駿, 板井 秀典, 吉田 雄司
    2008 年 61 巻 3 号 p. 191-199
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     電磁探査では地下空洞は探査困難な対象の一つであるが,鹿児島県では,崩壊の恐れがあるにもかかわらず位置や構造が正確には把握できていない地下壕が多数存在する。我々は,周波数1k~100kHzの高周波CSMT装置を用いて,これらの調査を実施している。その際,水平ループアンテナを用いて,ニアフィールド遷移域で探査を実施したところ,空洞の直上で,MT法で予測される値より大きな見掛比抵抗値が観測された。本研究ではこの現象を確認し,その原因を明らかにするために,差分法を用いた水平ループアンテナ(鉛直双極子磁場)による地下空洞(トンネル)の3次元電磁応答を計算した。得られた結果は次の通りである。
     1.トンネルによるニアフィールド遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,ファーフィールド域に比べて大きくなる。
     2.遷移域での最大見掛比抵抗増加率は,トンネルの深さ(土被深度)によって決定され,土被深度がスキンデプス以下では周波数,大地の比抵抗値にほとんど依存しない。
     3.この増加率は土被深度がスキンデプス程度以上になると減少するが,ファーフィールド域に比べると緩やかである。そのため,ニアフィールド遷移域では広帯域で,トンネルによる高い見掛比抵抗値が観測できる。
     このような現象は,ニアフィールド遷移域で見掛比抵抗の増大がない鉛直ループアンテナ(水平双極子磁場)では生じず,水平ループアンテナ特有のものである。また,水平ループアンテナのこのような性質は,電磁探査では困難とされる地下空洞検出に効果的である。
  • 広島 俊男, 牧野 雅彦
    2008 年 61 巻 3 号 p. 201-230
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     20万分の1重力基本図に多数見られる二次元構造を思わせる重力異常を解析するため,中心対称な二次元構造体(矩形状地溝,台形状地溝,放物形地溝,楕円形地溝,誤差関数形地溝,及び余弦関数形地溝)による重力,及び鉛直勾配の計算式を導き,プロフィル図を作成し,主な特徴について考察した。
技術報告
  • 朴 進午, 鶴 哲郎, 野 徹雄, 瀧渾 薫, 佐藤 壮, 金田 義行
    2008 年 61 巻 3 号 p. 231-241
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画として紀伊半島沖東南海地震(マグニチュード8.1)の震源域掘削が2007年秋頃から始まる。それに先立ち,我々は2006年3月,紀伊半島南東沖南海トラフ付近における地殻構造の高精度イメージングのため,深海調査研究船「かいれい」のマルチチャンネル反射法地震探査システムを用いた高分解能3次元反射法地震探査を行った(KR06-02航海)。「かいれい」3次元探査域は3ヶ所の掘削サイトをカバーしており,本調査には長さ約5kmのストリーマーケーブル(204チャンネル)と,約100 m 離れた2式の震源アレイを用いた。高分解能調査のため用いた各々の震源アレイはGガン2基とGIガン1基の組合せである。特に,ストリーマーケーブル1本のみを曳航する本調査では,左右震源アレイを交互に発震するFlip-flop方式を導入することで,1 sail line につき2 CMP line のデータ取得が可能となり,データ取得作業の効率が倍増した。最終的な3次元データ取得範囲は3.5×52 km となった。データ記録長は10秒,サンプリング間隔は1 msec である。また,震源アレイとストリーマーケーブルの曳航深度は,それぞれ5mと8mに制御した。発震点および受振点の測位のため, SPECTRAとREFLEXを使用した。調査期間中に船上QCなどの結果,良好なデータ取得が確認できた。調査終了後,陸上での3次元ビンニングなどの前処理を終えたCMPデータを用い,3次元重合前深度マイグレーション処理を行った。最終的に,3次元区間速度モデルと高分解能の地殻構造イメージが得られた。速度不確定性を推定するために行った3D PSDM速度テストの結果より,最終速度モデルは,約6kmの深度において最大±5%の速度不確定性を持つことがわかった。得られた3次元地殻構造の解釈の結果,南海トラフ底で沈み込んでいる,3つの音響ユニットから成る四国海盆堆積層の層厚変化が明らかとなった。特に,最上位のユニットCは,トラフ底から陸側への有意義な層厚増加や背斜構造によって特徴付けられ,また,ユニットCの中央には強振幅の反射面Rの存在が認められる。この反射面Rは斜めスリップ断層面として解釈され,このスラスト断層運動によって,ユニットCが重なり,陸側へ厚くなっていることが考えられる。
  • 佐々木 泰, 浜田 憲彦, 藤原 八笛, 鶴旨 純, 中東 秀樹
    2008 年 61 巻 3 号 p. 243-249
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     二次元反射法地震探査は,調査の目的や対象深度を問わず,ボーリング孔間の地質および地質構造を補間する事を目的として実施されてきた。しかし,二次元反射法地震探査によって得られる情報は,測線直下の地質情報に限られ,面的な連続性に関しては推定の域を出ないのが実情である。
     三次元反射法地震探査は,この様な欠点を補うために実施されるもので,石油,天然ガスや石炭等の資源探査の分野では,三次元反射法地震探査が通常の探査方法として実施されている(仙石, 1990; NEDO, 1990;佐伯ほか, 2006)。しかし,三次元反射法地震探査を構造物を対象とした地質構造の解析に適用した例は国内では皆無と考えられる。
     その理由として;
      ① 多チャンネルのデータ収録システムが必要
      ② 費用が割高の感覚がある
      ③ 三次元データ処理ソフトが必要
     などが考えられる。
     今回の調査では,深度100m以浅の詳細な地質構造の解析を目的とするとともに,地質の不連続構造の存在の判定を行うことが容易な100m以深も対象に調査計画を立案した。調査対象深度は調査区域の広さ,地質データおよび経済性等を考慮して,探査深度は約80m~250m程度とした。本調査実施後に実施された調査坑道での地質調査において,三次元反射法地震探査で推定された落差数mの不連続面の延長部において小断層を確認したことから,本調査の有効性が示された。本報告では,主として三次元反射法地震探査のデータ取得と解析・解釈について示す。
解説
  • 大澤 理, ティム バンティング, デニス スウィーニー
    2008 年 61 巻 3 号 p. 251-272
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     石油・天然ガスの探査における成功率を恒常的に上げていくためには,高度な地震探査技術が不可欠である。業界では今や探鉱のみならず,貯留層管理のためにも地震探査技術を応用している。そのため,地震探査及び地質の専門家や油層技術者は桁外れのデータの解像度を要求し,貯留層の微妙な,そして複雑な詳細を解明しようとしている。
     今世紀になって実用化された高品質海上地震探査のデータ取得・処理技術は,これらの石油業界の要求する貯留層の詳細なそして再現性のある記述を提供できる唯一のソリューションである。ポイント受振器,独特なノイズ消去技術,較正された海上震源,較正されたポジショニング,そしてストリーマー操縦の5つがこの探査技術を構成する重要な要素である。この技術により,帯域幅で35%,再現性で300%の向上が実現した。
     この技術は現在, WesternGeco社によりQマリーンとして実現しているが,この技術はその妥協のない技術革新をもって,業界に対し技術的そして商業的に大きく貢献しており,また今後も貢献することが期待される。そしてその比類のない解像度及び再現性をもって,石油・ガス開発のすべてのフェーズにおいて付加価値をもたらし,また今後の地球科学技術の進歩にも寄与することと期待される。
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