従来, SPAC法による微動データ解析は, 基本モードが卓越すると仮定して行われてきた。しかしながら, 実際のデータでは高次モードが卓越する場合も多くみられる。本稿では, 微動データに対して, SPAC法における高次モードを考慮した解析方法について検討した。高次モードの扱い方としては, 位相速度の異なる複数の波に対するSPAC係数から計算される見掛け位相速度を利用した手法が既に提案されている。しかし, この手法は一つの受振器間隔で取得された微動データに対するものであり, 複数の受振器間隔を利用した解析に対応したものではない。そこで, 複数の受振器間隔の影響を考慮した二つの手法を本論文で検討する。一つは, 理論SPAC係数とベッセル関数の二乗誤差を計算し, さらに受振器間隔で和をとった値が最小となる位相速度を理論位相速度とする手法である。もう一つは, 位相速度を推定することなくSPAC係数でデータと理論解を比較する手法である。シミュレーションデータを用いた検討の結果, 本論文で提案した二つの手法は十分実用性があることがわかった。さらにフィールドデータに対して適用したところ, 同様の結果が得られた。以上の考察から, 今回提案した解析方法により, 複数の受振器間隔で取得されたデータに対しても, SPAC法を用いて高次モードを考慮したインバージョンが可能であると考えられる。
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