物理探査
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66 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集:液状化と物理探査
論文
  • 神宮司 元治, 永尾 浩一, 前田 幸男, 中島 善人
    2013 年 66 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     人工液状化試験は,人工的に液状化現象を原位置地盤で起こすことが可能であり,液状化対策工法の効果や液状化による構造物への影響を調べる上で有効な地盤試験法だと考えられる。繰り返し電気探査による比抵抗計測は,液状化に伴う地盤状態の変化を比抵抗の変化で把握することが可能であると考えられることから,繰り返し電気探査を用いた人工液状化試験の前後における比抵抗変化の計測を行なった。その結果,自然地盤と液状化対策工法を取り入れた地盤では,比抵抗変化のパターンにおいて明確な差異が生じた。これらの差異は,液状化によって生じた余剰間隙水の排水状況に起因すると考えられ,本計測技術を用いた液状化対策工法の効果確認などへの応用にもつながると考えられる。また,今回の液状化試験では,0.35mに達する地表面沈下が認められたが,その沈下パターンと比抵抗変化は,自然地盤では整合的であった。また,近年の技術開発の進展により,マルチチャンネルの電気探査装置や同時送信型の比抵抗探査装置の開発も進み,人工液状化試験における連続的な比抵抗モニタリングも可能になってきた。今後は,人工液状化試験における連続的な比抵抗モニタリングにより,2次元・3次元の地盤状態の変化も計測が可能になると考えられ,本計測技術は,液状化現象のさらなる理解および効果的な対策工法の開発に貢献できると期待できる。
  • 横井 俊明, Karleen Marie Black, 中川 博人, 鈴木 晴彦, 斎藤 秀樹
    2013 年 66 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)に際して液状化による被害を受けた, 小貝川西岸に位置する茨城県常総市吉野総合公園(36.0746N, 140.0000E)において, 空間自己相関法(SPAC)と高精度表面波探査(MASW)による地盤調査を実施した。推定されたVs構造は, 地表より深さ約7mまでは, ほぼ100m/s以下, そこから工学的基盤上面まで200m/s以下, 地表より約27mで工学的基盤に達すると推定された。周囲のボーリング資料のN値から換算したVs 構造と比べて, 工学的基盤の深さ及び地表より7m以深のVs値は, 大略的には調和的であった。ただし, 地表より深さ7m以浅では, 周囲のボーリング資料のN値から換算したVs構造と比べて小さな値が推定された。液状化前の調査がなく, また調査地そのものにはボーリング資料がないので, 液状化が原因で地盤が緩んだかどうかを推定するのは困難であるが, 調査を実施した時点でかなり軟弱な地盤であり, 同様の強震動に襲われたならば, 再び液状化する可能性が考えられる。また, 固有周波数2Hz の地震計を使った中心なし円形アレイ法(CCA)を比較の為に実施し, 5.0Hz~9.7HzでMASWの探査結果とほぼ一致する分散曲線が推定され, このような比較的安価な地震計を使った同法の浅部探査能力が実証された。
  • 石塚 師也, 辻 健, 松岡 俊文
    2013 年 66 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     液状化は構造物の傾斜,基礎の抜け上がりや道路の凹凸など,我々の生活に甚大な被害をもたらす。地震直後に液状化地域を把握することは,液状化被害後の復興対策立案や今後の液状化発生地域予測のために重要であるが,あまりにも甚大な被害が発生した場合は,広域的かつ複数の地域を同時に被害状況の把握を行うことは非常に困難になる。しかし,近年,衛星搭載の合成開口レーダー (SAR) で取得されたデータを用いて,液状化や建物の倒壊などの災害地域を網羅的に把握する解析手法が提案されている。特に,地震前後に取得されたデータの相関度の変化を用いた解析は,都市部における建物の倒壊地域の把握等に有効性を示している。この手法は,地震前のデータペアの相関度と地震をはさむ前後のデータペアの相関度の変化から,マイクロ波散乱特性の変化を捉える手法であるが,一般的に都市部以外の地域では恒常的な散乱特性の変化が大きいため,災害によるマイクロ波散乱特性の変化と恒常的な散乱特性の変化を精度よく分離できないという問題を残している。これらの問題を解決するため,我々は地震前に取得された複数のデータペアを用いることで,恒常的な散乱特性の変化と災害による散乱特性の変化を分離する解析手法を提案し,2011年東北地方太平洋沖地震に伴う関東地方の液状化地域の特定に成功した。本論文では,上記の解析結果に加え,2011年クライストチャーチ地震に伴うクライストチャーチ市の液状化地域の把握を行った解析結果を報告する。
ケーススタディ
  • 中井 正一, 関口 徹
    2013 年 66 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震による千葉市美浜区での液状化被害の分布には著しい偏りが見られた。本研究では,被害の不均一性を明らかにするため,表層地盤モデルの構築,地震応答解析,埋立造成履歴調査,常時微動観測,および,地盤調査を行った。その結果,全域が埋立地である美浜区の表層地盤構造は非常に複雑であり,地点ごとに土層中の砂質土層のせん断ひずみが大きく異なることが液状化被害分布の不均一性の主たる要因であることが分かった。また,狭い範囲で地盤構造が大きく変化するのは,埋立造成時のサンドポンプ工法の排砂管とその噴出口の位置が大きく影響している可能性があることを示した。
技術報告
  • 稲崎 富士
    2013 年 66 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,震源域から離れた東京湾に面した埋立て地域においても広範かつ大規模な地盤液状化・流動化被害が認められた。そのような大規模液状化被災地の一つである千葉市幕張海浜公園において,液状化メカニズムの解明を目的とした物理探査および地質学的総合調査を実施した。このサイトは地震直後に広範囲に液状化し,延長100m以上に達する数条の地割れから大量の噴砂が流れ出た。また地表が波打つ「地波」も発生したことから,地割れ部だけでなく全域的に液状化が発生したことが推定された。この公園内に長さ120mの探査測線を2本設定し,高分解能S波反射法地震探査および高精度表面波探査を適用した。さらにこの測線上の7地点においてコーン貫入試験およびサイスミックコーン貫入試験を実施した。このうち4地点ではオールコアボーリングも実施している。物理探査の結果,深さ20m程度までの浅部地質構造を明瞭にイメージングすることができた,また深さ3~5m付近の埋土層部に低S波速度ゾーンが連続していることが認められた。この深度では細粒シルト層の内部構造が乱れていることが確認され,流動化によって変形・破壊を受けたことが示唆された。一方堆積学的解析によって液状化した砂層を特定することができたが,その層準ではコーン貫入試験による過剰間隙水圧が負圧を示し,注水試験(HPT)でも相対的に注入圧が小さい区間として特徴づけられることがわかった。従来の液状化調査・判定はボーリング調査で求められたスポット的なN値と細粒分含有率を示標としており,液状化現象の全体像を把握することが困難であった。これに対し詳細な物理探査を適用することによって液状化層の空間的広がりとその物性を把握することが可能であることがわかった。
通常論文
英文誌要約
  • 物理探査学会会誌編集委員会
    2013 年 66 巻 1 号 p. 57-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     今年から新たに発刊された英文誌「Exploration Geophysics」の内容を広く会員に紹介するために,掲載論文の要旨の翻訳を本誌に掲載する。今回は,英文誌のVol. 43 No. 4の要旨を紹介する。著者による原著という注釈があるもの以外,要旨の翻訳は会誌編集委員会にて実施した。興味をもたれた論文に関しては,是非とも電子出版されたオリジナル版をチェックいただきたい。なお,英文誌に掲載された論文は,本学会のホームページ経由で閲覧可能である。具体的には,本学会トップページ右側のバナー一覧のうち「Exploration Geophysics download site」を選択し,会員認証後PDFダウンロード可能となる。
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